キアンのパソコン・ゲーム券の効用 2017年11月7日


公文をやめて一ヶ月経過して、キアン(というか私)の算数との取り組みに難儀している。とにもかくにもキアンが勉強嫌いで、机に向かわないのだ。アイスクリームの褒美やらでなだめすかしたり、問題集の回答にどれだけ時間がかかったか測定して競わすなどの工夫をしたり、なんとか興味を持てるようにしている。まずは、教科書に添って足し算と引き算の一桁と二桁の計算の復習、一桁の掛け算(九九)と二桁の掛け算へと駒を進めるのだが、弱点は繰り下がりのある引き算と九九の暗記だ(例えば23-5は十の位から一を借りて(10-5)+3=5+3=8として、(20-10)+8=18となるが、この10を借りてくるというメカニズムがなかなか身についておらず、ちょっと油断すると、逆に5から3を引いて、答えが22になったしまう)。そして相変わらず、一桁の足し算と引き算では左手の指がもごもごと動く。それが癖なのかどうかわからないが、文句を言うと私に手を握って指を動かないようにしてくれと頼んでくる。

学校の教科書に取り組むキアンだが、その根気は5分と持たない

掛け算は指では計算できないので記憶していないとお手上げで、繰り返しでなんとか6の掛け算まで記憶した。そうなると、7、8、9だが、これは7x7以上だけをおぼえさせて7x6以下は覚えなくて良いと、かなり負担を減らしてやった。7x6以下は数字を反対にして6x7とすればよいのであって、私自身7x6=?聞かれてもとっさに答えられず、頭の中で6x7に返還して答えを探しているのだ。そうこうしているうちに今度はキアンは4の掛け算を忘れてしまっている。日本式の九九を歌うように繰り返しておぼえるのがよいと思うのだが、いまさら数字を日本語で教えるのはあまりにもめんどうだ。一方、学校ではすでに割り算の勉強を開始しているのに、公文に通って2年半、ほっておいても数字に強い子になるものと信じていたのが大失敗だった。このままでは、極普通の数字に弱いフィリピン人となってしまうと危機感がつのる。

パソコンが使えないとやることがないとぐずるので、マカティスクエアの中古本屋で本を買って与えたら、喜んで読んでいた

ママ・ジェーンのペナルティとしてパソコンを終日禁止されて「子供向け何でも質問百科」を買ってやった。私にはちょっと読みこなせない内容だが、すらすらと読んでいる。テレビでアメリカ製の漫画を見ていても100%理解できるそうで、英語のヒアリングと読解力ではすでに私を凌駕している。英語にはこれほどの能力を示すのに、何故数字には弱いのか、謎は深まるばかりだ

教科書では、一桁の足し算や引き算(指を使わないでの暗算)、さらに九九もママならないうちに二桁、三桁の計算に進んで行っている。日本のように九九を生徒全員で合唱するような教育はしていないのだろうか。2年ほど前、キアンが公文に通い始めた頃、公文の宿題を農場に持っていって従兄弟たちと競わせたら、いとこ達の指が一斉に動き始めたことにびくりしたことがある。彼らはすでに小学校の高学年だったのだが、かれらの四則演算の計算原理は未だに指折りなのだ。アフリカの原住民は、両手両足の指の数の合計の20までしか数えられないと、昔、聞いたことがあるが、まさにそれに近い世界だ。この指折りを克服しなければ、九九以降の算数は闇の世界に違いない。

10月末、街はハロウインでにぎわったが、どういうわけか、私が住んでいるコンドミニアムではパーティは見送られた

ちなみにフィリピン人に九九をやらせても、間違いなくすらすらと言える人は少数派であろう。プラス・マイナスは指で出来ても掛け算となると指の数が足りない。九九で壁にぶつかったフィリピン人は一生、数字にはそっぽを向く人生とならざるをえないが、最近は計算機があるので、なんとか生き延びることができているのだろう。息子の話によると田舎のマーケットに買い物に行って、一キロ35ペソの米を10kg買ってそれがいくらになるか同行したフィリピーノが計算できなかったので愕然としたことがあるそうだ。なんと35x10=350の計算ができなかったのだが、これはフィリピンでは必ずしも特別なことではない。

アラバンのオハナ・コンドミニアムにキアンを同行させたが、ソレイア以来のプール遊びを満喫していた

DMCIが開発するコンドミニアムは中央にゆったりしたプールを配置したリゾート風で人気が高い

プールサイドの集会場ではハロウインパーティの真っ最中だった

キアンの集中力は5分ともたず、1ページの計算をこなすと休憩と言ってテレビを5分見る。そんなことの繰り返しだが、30分もたつとブレーキがかかってしまう。勉強に飽きて全くやる気を失ってしまうのだ。そこで考え出したのが、パソコン・ゲーム券だ。一時間勉強するとパソコン・ゲーム券が与えられて、パソコンで2時間、遊ぶ権利が与えられる。これでママ・ジェーンのその時の気分でパソコンを禁止されるのではなく、自分自身の努力でパソコンで遊ぶ権利を獲得することができるという仕組みだ。

歯が少し生え始めたクッキーは食欲旺盛でバーベキューにもかじりつく

このパソコンゲーム券に対する期待は大きくて、学校から帰るなりゲーム券は準備できているか、早く、算数の勉強をしようと催促してくるくらいだった。今までは、ママ・ジェーンの鶴の一声で決定していたものが、自分の力で獲得できるとなると、自主性の高揚に大いに役立ちそうだ。私としても、今までのやる気のない生徒を相手にするよりもはるかにやりがいがあるというものだ。ママ・ジェーンとしてもパソコンを許可する明確な判断基準ができて、しかも子供の学力が向上に寄与するとなると、まさに一石二鳥、三鳥の優れものだ。

クッキーはどういうわけか従姉妹のアティ・バネサが嫌いで、近づくと顔をたたいたり髪を引っ張っていじめる

初日の成果に気をよくしたママ・ジェーンは、キアンの偏食を矯正するために、ダランダン(フィリピン産柑橘系の果物)の生ジュースを飲んだら10分のゲーム券というように、拡大ゲーム券を発行できないものかと提案してきた。キアンの算数人生にとってこのパソコン・ゲーム券が起死回生の一手になることを期待してやまない。 ちなみに、息子に、この話をしたら、彼の子ども時代、親父(私)がテレビ券というものを考案して家で勉強をするとテレビ券が発行され、テレビを見る権利が発生するという仕組みを実行したそうだ。私は、全く記憶していないのだが、相変わらず同じことを試みているようだ。  

息子を興味深げ見つめるクッキー、宿敵リオ(息子の子供)の前では決しておばあちゃんを離さない。リオにおばあちゃんをとられてしまうのではないかと警戒しているのだ  

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