ラモス大統領の時代、バブルたけなわのころ、インドネシア資本でマカティとアラバンを結ぶサウススーパーハイウエイの上に全長約20km、片側3車線の高速道路、スカイウエイが着工された。フィリピンにも高速道路時代が到来し、マニラの南に広がるパラニャケ、アラバン、そしてラグナの住宅地から通勤するマニラッ子を通勤地獄から開放するものと大いに期待された。
既存の高速道路を2階建てにしたスカイウエイ
現状のハイウエイはマニラの南からの唯一のアクセスとも言える道路で、これを止めることはできない。何故、唯一かというと、この辺の住宅地はビレッジと呼ばれ、しっかりした都市計画もないまま、開発されたので、それぞれのビレッジが塀で地域を囲ってしまい、一般車両が中に入れない、まるでぶどうの房のように一本の道に全ての車両が集まる構造なっているからだ。その幹がハイウエイトいうわけで、マニラに向う全ての車両はこの道路を通過しなければならない。
EDSAとの交差点は4層構造になっている
スカイウエイの柱脚は真中に一本、直径3メートル程度のコンクリート製だ。その柱脚を立てた後、道路の進行方向にやはりコンクリート製の桁を作る。そして、交通量の少ない夜中にぐるっと90度回転させて、道路進行方向と直角の桁ができるという寸法だ。そしてその桁と桁の間にプレキャスト製の梁をのせコンクリートスラブを打つという、前代未聞の工法なのだ。同業の私としても興味深く下から工事を眺めていた。
道路沿って桁を作ってから、夜中にぐるっと道路と直角に回転させる
ビクータンの終点の仮設出口、渋滞生むネックになっている
ところがバブルがはじけ、急遽マカティから10kmほどのビクータンで建設をストップすることになってしまった。もともと計画にないことから、下を走る高速道路の車線、半分をつぶして入り口と出口を作った。それでもラモス大統領は、その完成を大いに喜んだ。なんとしてでも大統領の任期終了前に開通式をやりたかったそうだ。
スカイウエイは確かに気持ちよく走れるが、こんなにがらがらで投資を回収できるはずもない
さてスカイウエイの開通によってどういう効果があったのか。私の観測は下記の通りです。
1. 100ペソをこえる交通料を払って、たった10kmの区間を利用する人はごくわずか。
2. 莫大な建設費を回収するために、既存の高速道路の通行料が10倍に跳ね上がってしまった。
3. スカイウエイのビクータン出入り口を設置したため、既存の高速道路に、そこを基点に上下線とも昼夜慢性的な渋滞をもたらした。(そのためにスカイウエイを利用する人が少なからず増えたが)
普段はがらがらの既存高速道路(左上がスカイウエイ)
結果として何も前向きな効果を見ることが出来ない建設だったが、マカティの周囲を走る通勤電車MRTのような郊外電車を何故建設しなかったのか、悔やまれてならない。ラモス大統領が、自分の住むアラバンまでの交通渋滞に耐えかねてスカイウエイを計画したといううわさもあるが、あの名高き名宰相でさえもこんな失敗をするものかと、何故か慰められるような思いがした。
スカイウエイからながめたマカティ市は絶景でも?
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