メタボ社会は国を滅ぼす 2012年9月10日


  カロリー制限が健康で長生きの秘訣だということが通説となっているが、動物実験でも、好きなだけ食べさせたマウスとカロリーを半分程度に制限したマウスと比べて、明らかに後者が長生きをするそうだ。

 ある生理学者は、カロリー制限により、細胞が活性化され、老化物質が減少し、健康で長寿が可能となると分析する。そのためには毎日、ある程度の空腹感を味わい、食後も食べ足らない程度にコントロールするのが良いという。そうすれば、いわゆるメタボとか成人病とも無縁だ。

 そうなると、お腹がすいたらいつでもどこでもミリエンダ(間食)を口にして、一日に5回も6回も食事をとるフィリピン人は平均寿命が50歳代といっても無理はなかろう。しかも、甘いもの、脂っこいものが大好きときている。そういえば、街を歩くフィリピン女性の三人に二人はどう見ても必要以上に脂肪を体に溜め込んでいるようだ。

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これらの写真はデバイン(マムジェーンの姪で元私のメイドでお世話になった)とKIAN、彼らはメタボの代表選手だ。

 そもそも人類あるいは動物は飢餓との戦いの歴史だった。だから動物や人類の体は食料不足に対する対策は色々取ることができる。食料の豊富なときに体内に脂肪を蓄えたり、熊やリスなどの冬眠もそれだ。

 ところが一方、食べ物が豊富で食べ過ぎに対処する策を全く身につけておらず、飽食はメタボと総称される種々の機能不全をよびおこしてしまう。食べ物が豊富にある限り、食いためるというのが動物の本能だからどうしようもないことだろうが。

飽食は体を蝕み、やがて肉体のいたる部分で機能不全を引き起こし死に至るわけだが、最近、このことは個々の人間ばかりではなく、人間社会にも当てはまるのではないかと思えてきた。

 戦後日本は高度成長を遂げ、誰もが容易に住宅や車を手に入れて、多くの電化製品に囲まれ、贅沢とされてきた焼き肉やすき焼き、そして寿司や蒲焼も当たり前に食べるようになった。

 このことは、核家族と称して、夫婦と子供1~2人程度で暮らすことを理想とし、人間社会が原点としてきた家族という仕組みの崩壊を促した。さらに人間関係が面倒くさいと、一人暮らしも増加した。要は、家族で助け合わなくて食っていけるので、人々は孤立化ないし無縁化していった。

その結果もたらされたものは、虐待やいじめ、老々介護やホームレス、家庭内暴力や閉じこもり、そして無差別殺人など弱者を排除して強いものだけが生き残る社会だ。 家族の一員として小さいころから助けあい、頼りあうという人間性を学ばないで育った人たちが大きくなって弱いものいじめをするという、なんとも情けない世の中になってしまったのだ。

 さらに、生涯、結婚しない、すなわち家族を持たない人々は2030年には40%に達するという。65歳以上の老人も全人口の3分の一になると予測されている。さらに結婚しても子供を作らない夫婦も多い。そうなると子作り、子育てに励む、けなげな人々は少数派になってしまうから、少子化に歯止めがかからない。

 たとえ、子作りに参加しなかったとしても、年を取れば、社会あるいは国家の負担となる。現在、生活保護を受ける人々が200万人を越え、一人当たり月々 10万円が支給されるとすると年間2兆円を超える国費が消費されている(フィリピンの国家予算をはるかに凌駕する金額だ)。しかし、少子高齢化で、社会を支える、要は税金を払う現役組/若者が減少していったら、どうやって社会/国家が成り立っていくのだろうか。

フィリピンは日本に比べたらはるかに貧しい。しかし、貧しいがゆえに強力な家族の絆に支えられて、人々は朗らかで幸せだ。虐待もいじめもない。おまけに介護施設も不要で老人問題なんてものは存在しない。日本では毎年3万人が自殺して、やはり3万人が無縁死するそうだが、フィリピンで自殺すると新聞記事になるくらいだ。

 フィリピンでは国や社会に面倒を見てもらおうなどというけちな発想はない。家族が家族員のすべての福祉に責任を持つ。国や社会がどうなろうが、家族単位で生き抜いていく。だから年寄りや子供が切り捨てられるようなことはありえない。

日本経済の破綻や大震災が再びがやってきて、国家や社会が機能しなくなった時、家族という仕組みを捨て去った日本人は果たして生き抜いていけるのだろうか。飽食がもたらした社会の機能不全=家族の崩壊(メタボ社会)はメタボが肉体をほろぼすのと同様、国家そのもを死に至らしめる不治の病といえるだろう。

最近は50歳未満の人々の退職ビザ取得が増加しており、日本の若者が日本を脱出する動きが加速している。いずれ若者のいなくなった日本は、フィリピンなどの外国に人的支援を要請し、日本に日本人がいなくなる日が近いうちに来るのではないか。

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