原油価格が1バレル50ドルを割り込んで、ガソリン価格も毎日のように下がり続けている。一時リッター60ペソを超えたものが、40ペソ前後まで下がっている。円換算すると150円(1ペソ=2.5円)が80円(1ペソ=2.0円)と円高の影響もあって半分近くになっている。自家用車組みには大変うれしい事態だが、もっと喜んでいるのはタクシードライバーだ。前回、ガソリン代とバウンダリー(車の使用料)を払うと1銭の手取りも残らないと書いたが、その後政府は30ペソの初乗りに対して、一律10ペソの上乗せを決め、タクシードライバーの収入を確保する策をとった。現在、ガソリン代が40ペソに下がった上に、この10ペソの上乗せも健在で、タクシー運転手は笑いが止まらないという状況なのだ。
そこで、タクシーの懐具合を計算してみよう。まず運転手からヒアリングしたデータだ。
・一日の走行距離の平均:250km
・平均乗客数:35人
・バウンダリー(車の使用料):1050ペソ(16時間)
・初乗り料金(500m):30ペソ、500m以降 2.5ペソ/300m
・上乗せ料金:10ペソ/乗車
・燃費:7.5km/L
次にガソリン代が60ペソ、40ペソの場合の収支比較だ。
項目 ガソリン代60ペソ 40ペソ
ガソリン代(33L) 2000ペソ 1330ペソ
バウンダリー 1050 1050
経費の合計 3050 2380
初乗り料金(30×35) 1050 1050
追加料金(6.5km/客) 1750 1750
上乗せ料金(10×35) 350 350
収入の合計 3150 3150
運転手の手取り 100ペソ 770ペソ
(-250) (420)
( )内は上乗せ料金がない場合の稼ぎ
これは単なる平均的な試算に過ぎないが、当たらずも遠からずだろう。もし上乗せ料金がなかったら、ガソリン代60ペソでは赤字である。40ペソでは420 ペソの手取りがあるのでまあまあだ。12月からは上乗せ料金は廃止になるそうだが、現状ではガソリン代の値下がりを大いにエンジョイしているのだ。ヒアリングした運転手に料金57.5ペソ、上乗せ料金10ペソで、合計67.5ペソに対して、100ペソ札を渡したら、ちゃんと32ペソのお釣りをよこした。前だったら、何も言う前にサンキューと言ってお釣りをよこさなかったものだが、「衣食足りて礼節を知る」とはこのことだろう。つり銭を返さない、これだけが運転手として生活費を稼ぐ手立てだったのだ。もちろん、メーターを倒さないで倍や3倍の料金を吹っかけてくるたちの悪い輩はいつでも変わらない。
一方、地方ではもっぱら頼りにせざるをえないジープニーの料金はどうだろうか。今回アンヘレスで乗ったところ、いち早く8.5ペソが8.0ペソへ値下げされていた。従来、7.5ペソだったから、ピークでは1ペソの値上げだった。上記のタクシー料金の試算では乗客一人当たりの平均乗車料金は80ペソ、それに対して上乗せ料金が10ペソだから、ほぼつじつまは合っている。乗るほうにとっては50センタボス(1ペソ=100センタボス)程度の違いはどういうことはないのだが、細かいつり銭の授受がなくなっただけありがたい。ちなみに50センタボスは25センタボス コイン2枚となる(フィリピンに50センタボス コインは存在しない)。つり銭を数える運転手の負担を少しでも軽くしてその分安全運転に心がけて欲しい。