ある退職者の方が、「友人に、コンドミニアムの所有権が50年のところがあるから気をつけろ、とアドバイスされた」そうで、その真偽を私に問い合わせてきた。「デベロッパーが自社所有地に建設した場合は問題ないが、そうでない場合は、コンドミニアムの所有権の期限は50年だ」というのだ。
ご承知の通り、外国人が土地を持つことは、憲法で禁止されており、土地付戸建の住宅は外国人は保有することはできない。しかし、コンドミニアムの場合は、それぞれのユニットが個別に登記され(CCT、Condominium Certificate of Title、あるいは単にタイトル)、外国人でも、総ユニット数の40%まで保有できる(コンドミニアム法)。その場合、各々のユニットは土地を区分保有していることになり、このCCTが発行されている限り、50年という保有期限はない。
空港のターミナル3に向かう スカイウエイからのマカティの眺望
一方、バギオのキャンプジョンヘイあるいはスーービックなどの経済特別区で販売されているコンドミニアムは、開発から50年の期限付き所有権(Lease Hold Right)となる。これは、これらの経済特区では土地はすべて政府からの借地となっているために、コンドミニアムといえども、永久に保有できるわけではなくて、基本的に期限がきたら国へ返還しなければならない。
同様に、もしデベロッパーが50年の借地を行って、コンドミニアムを開発して販売した場合、その所有権は借地契約の終了とともに土地のオーナーに帰属することになる。その場合、その住宅をコンドミニアムとして登記することはできず、個別のユニットのタイトル、すなわちCCTは発行されない。従って、コンドミニアムを購入する場合、ユニット毎のCCTの存在がキーになるが、そのタイトルはコンドミニアム全体のタイトル(マザータイトル)では意味がないので要注意だ。ちなみに、土地のリース契約(借地権)は法的に50年が限度で、通常25年契約で、25年の延長を可とする。
同じくボニファイシオ・グローバル・シティの眺望
ちなみにフィリピンでは建物のタイトルというものはなくて、 建物は土地に帰属すると解釈される。従って、出来上がった住宅のタイトルといっても、それは、建物が建っている土地のタイトルであって、土地のを売買にともない、そこに建っている建物も同時に売買されてしまう。従って、住宅を建設する場合、その土地を購入するか、長期リース(借地権の設定)していない限り、住宅の所有権を主張できない。この土地のタイトルのことをTCT(Transfer Certificate of Title)といい、コンドミニアムのタイトル、CCTとは、その概念に大きな相違があるので気をつけなければならない。
注意すべきことは、建物の形状からコンドミニアムと呼ばれる場合と登記上のコンドミニアムとは概念が異なることだ。建物の形状で分類すると、戸建、タウンハウス、アパート、そしてコンドミニアムとなるが、登記上は宅地とコンドミニアムしかない。たとえ建物の形状がどうあれ、コンドミニアムとして登記されれば、その40%のユニットまで外国人が保有することができる。ちなみに私の住んでいるタウンハウスはコンドミニアムとして登記されているので、外国人が購入することができる。パラニャケのイリジウムもしかりだ。ちなみにたとえ、戸建であってもコンドミニアムとして登録することは可能なのだ。
一方、例え、建物はコンドミニアムの形状をしていても、コンドミニアムとして登記されていない場合は、ユニット毎の売買はできず、ユニットを短期あるいは長期リースするということになる。もし売買するとなると建物全体と土地を一括して売買しなければならない。しかし、その場合、土地付なので、外国人は購入できない。
このような事情から退職庁(PRA)は、ビザ取得のための預託金を使ってコンドミニアムの購入、あるいは住宅の長期リース(25年以上)をする場合、タイトルの存在を厳格に管理している。その条件の主たるものは、
①貸し手ないし、売り手の名義でその土地(TCT)ないしコンドミニアム(CCT)のタイトルが存在すること
②長期リースについてはPRAの定める借り手の保護に関する文言をあらかじめタイトルに裏書すること
③コンドミニアムの購入については180日以内にタイトルを買い手名義に変更するとともに、PRAの許可なしに勝手に売買できないという趣旨の裏書をすること
この条件は退職者の権利を守るために必須条件であることは理解できるが、実際問題、これらのクリアーすることは容易な事ではない。物件を選んだら、まず PRAに相談して、指示に従って、販売者に必要書類を要求し、PRAの事前審査を受けるべきだ。そうでないと、土壇場で預託金が使えなくなり途方にくれてしまう恐れがある。