コンドミニアム開発の現況 2013年10月23日


フィリピンの、あるいはマニラのコンドミニアムブームはとどまるところを知らぬ勢いで、次々と大型プロジェクトが完工し、入居ないし入居間近となっている。3年近く前に報告したときには、まだ姿を見せていなかったコンドミニアムも、あらかた完成して形を見せ始めている。

 今回は、従来のマカティの市街地を囲む、ブエンデ通りの北側、マルガイ通り、あるいはジュピター通りに沿って完工ないし建設中のプロジェクトに着目した。

CIMG4954早朝、ジェットスターの機内からマカティを望む。こんな機会は10年に一度あるかないかだ。手前は超高級住宅街のダスマリニャスビリッジだが、一戸の家の敷地の広さが(10002000m2程度)想像できるだろう(写真をクリックして拡大して見てください)

    マカティの市街地は北はブエンジア通り、南がパサイロード、東がエドサ通り、西がパソンタモ通りに囲まれた扇型のエリアで、アラヤ・トライアングルを中心にグロリエッタ・グリーンベルトがあるコマーシャル・エリア、サルセドとレガスピのコンドミニアム/オフィスビル街、それにウルダネッタ・ビレッジ(超高級住宅街)の4つのエリアに別れる。この4つのエリアを区分しているのが、アヤラ・アベニュー、マカティ・アベニュー、そしてパセオ・デ・ロハスの3本の道路で、これら7本の道を押さえておけば、マカティの地理は把握できる。 CIMG0536ブエンジア、パソンタモ、パサイ通りはいずれも旧称で、現在はそれぞれヒルプヤット、チノロセス、アラナイツが正式な名称

 そして、さらにその周辺は、北にベル・エアー、東にダスマリニャスやフォルベスパーク、そして南はサン・ロレンソーなどのビレッジ(超高級住宅街)が取り囲んでいる。唯一、マニラの街並みに接しているのが、パソンタモ通りの西と、ブエンジア通りの北西だけだが、特に、ブエンジア通りの北を走るマルガイ通り沿い、サン・アントニオ・ビレッジには工場などが多く、まとまった敷地がある。この地上げの必要ない大きな敷地が大型コンドミニアム開発の舞台となっており、まさに従来の扇型のマカティが北へ膨張しつつあるのだ。

CIMG4958マカティの東に開発されたボニファシオ・グローバル・シティ(ボニファシオ国軍基地の跡地)。これだけの街が、ここ10年で出来上がってしまったいうことは信じがたいところだ。写真上方に見えるのがマカティ市だ

 メトロ・マニラの主だった市街地はマカティ以外には、ボニファシオ・グローバル・シティとオルティガスがある。それぞれ超高層ビルが立ち並ぶ国際都市で、マニラの旧市街地と比べると別世界の趣がある。さらに、今後はアラバンのフィルインベスト・コーポレート・シティ、パサイ市からパラニャケにかけてモールオブエイシア周辺のショッピング・リゾート地帯などが発展していくものと期待される。

CIMG4964ちょっと北に進むと第2位の都市、オルテガスがあるが、この街の高層ビルの密度はマカティを上回る。右上方に見えるのはワクワクゴルフコースで36ホールあるが、高層ビルとゴルフ場の対比がおもしろい。

  マルーガイ通りをサウス・スーパー・ハイウエイを基点に西から東に歩くと、まず目に付くのが、大手デベロッパーの老舗、Fill Investが手がけるLINEAR(リニアー)で、信じがたいスピードで立ち上がった。ちなみにFill Investといえば、アラバンにFill Invest Corporate Cityと自分の会社の名前を冠した街を作り出した会社だ。CIMG0461s-4その隣にあるのがAVIDA Towerで、アヤラ系のデベロッパーが開発しているが、このAVIDA Towerという名を冠する大規模コンドミニアムは、マニラ一帯に数多く建設されており、いわば、アヤラ・ランドが手がける高級コンドミニアムに対する廉価版だ。ここでは、既設のコンドミニアムの前後にさらに大規模なコンドの増築を開始しており、現状の3倍程度の規模になりそうだ。

CIMG0470s-4パソンタモ通りを越えると、そこにそびえているのはBELTON PLACEで、一棟だけだが、増築のための用地は確保してあるようだ。このBELTONという名前は、あまりに耳にしない。

CIMG0474s-4さらにアヤラアベニューを越えると目に入るのが、開業間近なAlphlandが手がけるMAKATI PLACEだ。ここは、アヤラ・ランドのThe Columnsのまん前、そしてRCBCプラザからも目と鼻の先、マカティの中心市街地に至近距離ということもあって、ショッピングセンターを併設している。そのバックに巨大なコンドミニアムが立ち上がり始めているが、この付近(サルセドビレッジ)はショッピングエリアから遠く、かなりの集客が見込めるだろう。ちなみにAlphlandは、エドサとパソンタモの角にあり、長い間、建設が中断され放置されていたビルを再開発して、Alphland SOUTHGATEを開発したデベロッパーだ。

CIMG0484s-4MAKATI PLACEの隣にアヤラ系のデベロッパーのAlveoが開発中のLERATOが2棟を立ち上げってきている。さらに隣にあったマカティ市立病院を取り壊して、3棟目を建設する構えだが、アビダタワーに比べてこちらはちょっとレベルが高い高級仕様のようだ。アヤラ・ランドが、何故、AvidaあるいはAlveoなど、別のブランドを使うのか良くわからないが、あまりにも高級ということで名の売れたアヤラが狭くて安いコンドを売るのはブランドに傷がつくということなのだろう。

CIMG0487s-4そして、マルガイ通りが終わって、その先、ジュピター(メトロポリタン)通りとガルシア(レポソ)通りの角に建設されているのが、SMDCが手がけるJAZZだ。SMDCといえば、デパートの雄、SM 輩下のデベロッパーでマニラに多数の巨大プロジェクトを手がけている。間取りは25m2程度のスツジオ(ワンルーム)を基本とする単純なもので、お世辞にも住みやすいという代物ではない。それが、現状では350万ペソ程度という高価格で売るという強気の商売をしていて、それがまたまた、バンバン売れているのだというから信じがたい。

CIMG0496s-4 SMDCは既存のSMモールから至近距離にあるエリアにプロジェクトを展開しており、SMモールあるところにSMDCありだ。ここは既存のSMモールから遠いから1~4階あたりまでモール、スーパーマーケット、駐車場などを配置して、巨大なショッピングと住居の集合体を作り上げようとしている。この至便さがために狭い高いのコンドミニアムでも売れるのだろう。

 以上のプロジェクトはマカティの北西の一本の道沿いにあるプロジェクトだけで、上記のほかにも建設界の雄、DMCIは、マニラ各地に巨大なコンドミニアム群を立ち上げている。アヤラの向こうを張る大手デベロッパーのメガ・ワールドNAIAターミナル3の目の前にエアポートシティと称するコンドミニアム街そのものを作り上げようとしている。マカティの中だけでも、旧インターナショナルスクールの跡地のマカティアベニュー、旧発電所跡地のロックウエルなど巨大コンドミニアムプロジェクトが進行中だ。

  さらにボニファシオ・グローバル・シティやオルティガスまで数えると、限りない数のプロジェクトが進行中だ。海外の投資家が中心になって買っているのだろうが、売れている限り作るのだろうが、そのあと、これらが完成した暁には、過剰に建設・売却されたコンドミニアムに住む人もまばらなゴーストタウンがそこいら中に出現するのではないかと危惧される。住居のないフィリピン人がいくらたくさんいたとしても、彼らには、こんな高価でしかも狭いコンドミニアムに住もうとする人はいないし、外国人が住むといっても、あらたにどれだけの外国人がこの数年の短期間にやってくるというのか。

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