フィリピンにやってきて最初にびっくりするのが、街中いたるところにショット・ガンを構えて立っているセキュリティ・ガードの存在だ。このことが、”フィリピンは危険”というイメージを助長していると思う。銀行やポーンショップ(質屋)そしてホテルやコンドミニアムにセキュリティ・ガードは必須だ。それにオフィス・ビルやデパート、レストランやコンビニなど、お金や人の集まるところには必ずいる。
果たして、彼らが活躍するほどフィリピンでは犯罪が多発するのだろうか。私にはとてもそうは思えない。彼らが、銃を使う機会は一生に一度もないだろう。も ともと犯罪がないのか、あるいは彼らの存在のおかげで犯罪がないのか、どちらか分からないが、フィリピンの風物ないし慣習といってよいかもしれない。
慣れると、彼らの存在ははなはだ重宝で、常にそこにいて出入りする人間を見張っていてくれるというのは店の人、住人、客にとってはとても心強い。しかも、 彼らのテリトリーの中では警察権を持ち、逮捕、場合によっては犯人を射殺することもできる私設の警察なのだ。昔、ちょっと事情があって私専用にボディガー ドを雇ったことがあったが、つかず離れず24時間守られているというのは、なんともはや心地良く、安心できるものだった。
(いつも退職者を案内するBank of Commerceのガード、こちらが上客であることを知っていて、駐車や時間外の入店など、色々と便宜を図ってくれる)
セキュリティ・ガード、運転手、シー・マン(船員)は巷の男の仕事の3羽ガラスといってもよい。一方、女の仕事はメイド、ウエイトレス、セールスガール (売り子)、マッサージガール、それにGRO(ホステス)などと働く機会は男よりも多い。オフィスや工場などでも男女の数は似たようなものだ。だから、巷 で所在無げにたむろしているのはほとんどが男だ。
このセキュリティ・ガード達は専門の会社に所属し、訓練を受けて、それぞれの依 頼先に派遣される。これらの会社を経営しているのは国家警察幹部のOBが多く、元PRA長官のゼネラル・アグリパイも大きなセキュリティ・エージェントを 経営し、マカティ・グロリエッタのセキュリティガードの派遣を一手に引き受けていたそうだ。 (PRAのセキュリティ・ガードは、客の案内やら一人3役をこなしている)
さて、自分の住んでいるコンドミニアムや定宿のホテル、行きつけのレストランやカラオケさらに銀行や両替屋に必ずいるセキュリティガードだが、顔見知りに なるとやけに愛想がよい。彼らはこちらの行動をいつも見守っており、熟知しているので大いなる味方とするべきだ。そこの場所では個人的なボディガードの役 割さえも担ってくれるし、なにかトラブルに巻き込まれたとき、顔見知りの彼らが味方をしてくれるのだ。
そのため には普段から彼らを手なずけておくことが肝心だ。ホテルやコンドミニアムのガードなら、パンと飲み物やレストランの残り物をやるとか(彼らはいつも腹をす かしているのだ)、行きつけのレストランやカラオケでは駐車案内の礼に50ペソ程度のチップをやるとかだ。そうすれば、こちらのことをとりわけ覚えてい て、第一優先で面倒を見てくれる。
(昨年の統一選挙の時の投票所の護衛は本家本元の警察と軍隊がお出ましていた。 カメラを向けると皆愛想良く笑う)
若いとき数年フィリピンでいらしたという退職者と最近食事をした折、このセキュリティ・ガードについてためになる話を聞かせてくれた。
フィリピンではRape(暴行)は死刑という恐ろしい犯罪だ。しかし、合意の上で致した筈なのに、相手が何かに腹を立てて、犯された(Raped)と訴え られたら、ことが密室で行われる秘め事であるために、合意の上の行為と立証する術がない。密室で行われた行為をお互いがああだこうだと言っても、水掛け論 だ。そこでセキュリティ・ガードの登場だ。コンドミニアムやホテルに女を連れ込むとき、こそこそとしないで、彼女が自らの意思で一緒に部屋に入ったという ことの証人になってもらうのだ。ガードの前でキス位してもいいかもしれない。普段から手なずけておけば、いざとなったらこちらに有利になるよう、あること ないことまで証言してくれるだろう。
ただ、その方のアドバイスでは「アンダー・ エイジ(18歳未満)の女の子だけは手を出さないように」ということで、これだけは合意の上でも逃げようがない。しかし、この場合も、ホテルなどはアン ダー・エイジは保護者と一緒でないと宿泊禁止で連れ込むことができないので、セキュリティ・ガードが身分証明書をチェックしてくれて、当方がトラブルに巻 き込まれることをしっかりと防いでくれるのだ。