トライシクルとは100cc程 度のオートバイの横に手製の乗客用サイドカーを付けたもので、主に営業用に使われている。日本でサイドカー付のモーターバイクといえばハーレーダビッド ソン位のものだが、ここではジープニーに勝るとも劣らない庶民の足なのだ。基本的には二人乗りで、お尻の大きい女性といっしょでは二人納まるのに ちょっと苦労する。それが定員に制限はなく、座席の前に一人、バイクの後ろに2~3人、サイドカーの後ろに2人、さらにまたサイドカーの横に2人と、10数人が一台のトライシクルに乗り込むことができる。こんな光景はマニラ首都圏では見かけないが、地方都市で、学校の帰りなど高校生でトライシクルが鈴なりになっている光景をよく見かける。
鈴なりに乗り込んだ乗客
颯爽とマニラの町を疾走するトライシクル
生まれて初めてトライシクルに乗ってご満悦の兄貴たち
トライシクルにも営業できる地域が決まっていて、さらに乗り合いのトライシクルは路線が決まっている。しかし40ペソほど出すと急遽、専用になっていてどこにでも行ってくれる。距離的にはジープニーよりも短距離輸送を主体としているが、もっとも、長距離ではお尻が痛くなって我慢できない。料金は乗り合いで10ペソ程度、専用で40ペソ程度。外国人だと100ペソと吹っかけられが、可愛いものだ。タクシーと同じくらいの料金を取られるわけだが、比較的簡単に捕まるので重宝する。
客待ち中のトライシクル
同じく客待ちのトライシクルの列
マ カティ市のジュピター通り、パソンタモ通り、パサイ通り、そしてエドサ通りで囲まれるエリアにトライシクルで入ることは許されていない。国際都市にトライシ クルは似つかわしくないということだろうか。地方都市ではジープニーと並ぶ公共交通手段の主役として我が物顔に街中を走り回っている。私がパラワン島 のプエルトプリンセサ市やボホール島のタグビララン市を訪問したとき、ラッシュアワーになると街中が白く煙るくらいの空気汚染の主役を演じていた。
マカティを除くマニラのいたるところでトライシクルが長い列を作って乗客を待っている
このトライシクルの運転手はたいがい車両をレンタルして営業している。たとえば毎日125ペソのバウンダリーと呼ばれるお金をオーナーに支払い、それ以上の売り上げを自分のものとするのだ。もちろんガソリンやメインテナンスは自分もち。支払い期間は5年、トータルで23万ペソ程度の支払いになる。一方、サイドカー付のバイクは8万ペソ程度で買えるから、5年ローンで3倍近くのお金を払うわけだ。それでもトライシクルの売り上げは400~500ペソ程度になるそうで、ガソリン代とバウンダリーを支払ったあと、1日、200ペソ前後の収入になり食べていくことができる。5年の年季開けには、晴れて自分のものになり、収入が全部自分のものになる。もっともそのころはバイクもだいぶ疲れ果てて、そろそろ買い換えなければならないと思うが。しかし、優に10年は使っているだろうというバイクをよく見かける。車もそうだが5年落ちというのは、まだまだ新車というのがフィリピンだ。
トライシクルで息子を我が家に案内する
トライシクルの運転手なんて最低の商売かと思われるかもしれないが、もっと下があるのだ。トライシクルに乗るのが憧れという人たち、それはパジャックのドライバーだ。パジャックとはサイドカーをつけた自転車のこと。これもレンタルで、一日25ペソのバウンダリーを一年間払うと、自転車が自分のものになるといった勘定。たった5千ペソのお金を払ってサイドカー付の自転車を買うことができない人たちがたくさんいるのだ。一回、数ペソ支払って歩けるほどの距離を移動するのに使う。なにしろ、フィリピンではその暑さのせいか、女性は100メートルでさえも決して歩こうとしない。1日の売り上げは100~150ペソとなるそうで100ペソ前後の実収入にはなるようだ。これで一家族が暮らしていかねばならないのだろう。
客待ちするパジャック
パジャックから覗いているのは息子
しゃれた黒塗りのパジャック
パジャックドライバーにはスクオーター(政府の土地を不法に占拠して暮らしている貧しい住民)地区の人が主に従事しているそうだ。まるで小学生ではないかと思うような子供や、60は 優に越えていると思われる人までもが汗をかきかき、この炎天下でペダルをこいでいる。この人たちは子供のころからペダルをこぎ続けてきたのだろうか、 そしてまた、これから死ぬまでペダルをこぎ続けるのだろうか。フィリピーノに聞いたら、この人たちの子供の世代もペダルをこぎ続けるのよ、と即座に答え てくれた。
パジャックも選挙に一役
デビソリアで客待ちするパジャック
ロビンソンの近くで客待ちするトライシクル、少々くたびれている
馬車のカレッサもパジャックの一種か?