キアンがMOAでTimexを手に入れた直後、ママ・ジェーンがパパ・カーネルの執務場所を見に行かないかと言い出した。それも良しと帰り際、ブエンジア通りからハリソン通りをを右に折れて、さらにリベルタッドの先のパサイ市役所に向った。因みにパサイ市警察は市役所と同じ敷地内にある。
この辺は私にとって大変なじみのある場所で、かつて足繁く通っていた場所でもある。ハリソン通りとリベルタッド通りの角の近くには外務省があってパスポートの発行や各種書類の認証を行っていた。そして夜は一変して、かつてのサリリン・アティンやミス・ユニバースなどの有名ナイトクラブがあったところなのだ。
キアンやクッキーに悟られないようにハリソン通りから窓の外を眺めていると、リベルタッド通りのすぐ近くに、最近、かつての名声を取り戻したという噂の(ミス)ユニバースの看板がまばゆいばかりに輝いていた。
カーネルの執務室は、専用のビルで受付を経由して会議室の奥にある。さらにその奥には寝室があって、週7日、24時間の過酷な勤務状況を連想させるものだった。
しばらく、すると、ジェーンは家族一同で泊まるから、帰ってよいという。これはチャンスとユニバースに寄ろうかとよからぬことを考えていると、ヤヤは一緒に帰るとのこと。がっかりして帰る途中で、ヤヤは呼び戻されて、また警察に行って一緒に泊まることになった。当方の企みは、ママ・ジェーンにばればれだったのかも知れない。
穏やかでないのは運転役のアランで、この渋滞の最中、警察と家とを2往復することになったとぼやいていた。この日、ランサーのガソリンの減りが激しいので、原因は私だとか、ジェーンだとか言い争っていたが、これでジェーンが原因であることは自明の理だ。
翌日はキアンのピアノレッスンだが、彼らは、午後3時過ぎにようやく戻ってきたが、再びMOAを訪問したと聞いてあきれた。妊娠7ヶ月過ぎだというのに、ここのところのMOA通いは尋常でないものを感じる。確かに歩くことは妊婦にとっては良いことではあると思うのだが、度が過ぎているのではないか。