ヘビを嫌ってはいけないとしたら 2016年11月12日


 ZAI ONLINE 橘昶の日々刻々2016年11月7日 http://diamond.jp/articles/-/107080)に「ヘビ嫌いと、ヘビ愛好家が唱える”ヘビ差別」解消、どちらを優先すべき?”」という興味深いブログが掲載されていた。「人間がヘビを嫌うという性癖は遺伝子レベルの本能というべきもので、どんなに教育されても変えることはできない。一方、ヘビ愛好家が動物差別撤廃を主張したため、ヘビを嫌ってはならないという風潮が世の中に蔓延したとしたら、人はその矛盾に自己を不道徳者として断罪するか、他人の差別意識を探し出して批判し、自己の正義を主張することになることになるだろう」という内容だ。そして「この寓話は何を指しているのか、自分で考えてみてください」と、問いかけている。
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 わたし自身、ゴキブリを見つけるたびに、必死に踏み潰そうとするが、虫をこうも軽々と殺戮していいのだろうか、命はすべからく尊いものではなかったのかという思いがいつもわいてくる。これも、多分遺伝子レベルの性癖なのだろうが、益虫と害虫などという区別は人間がかってにしたもので、虫にとって見れば迷惑千万な話だ。しかし、人間が、まだねずみのような動物だったころ、ヘビは捕食者であり、ゴキブリは食料を取り合う敵だったに違いない。ヘビを恐れゴキブリを憎む性癖は、まさに人間が人間になる前からDNAに刷り込まれている記憶によるものに違いない。
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 このブログの問いかけに色々なことが頭をめぐり、世の中で起こっているほとんどのことが当てはまるのではないかという気がしてきた。自己が欲するもの(ヘビがきらい)と世の中の公序良俗(ヘビ差別の撤廃)とされるものとが食い違って、自己矛盾に陥り、自己を断罪するか、他人の落ち度を責めるか、その狭間で苦しむ、それが現在社会そのものなのではないか。
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① 電通の過労自殺が話題になっている。東大卒の美人、そして電通勤務、傍から見ればうらやましい限りの経歴だ。このニュースを見ているとき、たまたまアティ・キムが部屋に来たので説明した。彼女のコメントは「自殺するなんて馬鹿馬鹿しい、辞めれば、それでおしまいでしょ」とあっさりしたものだった。まさに、この東大卒の美人はヘビが嫌いと言えずに、自分自身を抹殺する道を選ばざるを得なかったに違いないが、フィリピーノにとっては、そんな迷いはない。
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② 息子の友人で教師をしている人が飲酒運転をとがめられ、停職30日の処分を受けた。盗撮や買春で新聞に実名まで載せられる公務員が後を絶たない。かつては、当たり前に行われていたことが、社会から抹殺され、一生涯を棒に振るという事態になってしまう。これは、ヘビが嫌いと正直に言ってしまった報いなのだろうか、あるいは矛盾に苦しむ人たちのいけにえになったのだろうか。
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③ イスラム教徒を忌み嫌う風潮が世の中に蔓延している。これはイスラム過激派ISなどのなせる業だろうが、善良なイスラム教徒はこれを差別として訴えている。さらに紛争が続いているイスラム教国からの難民がヨーロッパ諸国になだれ込んでいる。多くの国の指導者はキリストの教えに従って難民の受け入れを表明しているが、難民を装って過激派が入り込んでテロ活動を行うに到っては、庶民は黙っていない。果たして、イスラム教徒はヘビであり、過激派は毒蛇なのだろうか。庶民は、毒蛇を防ぐためにはへびそのものを排除しなければならないと訴える。
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④ カロリーメートをはじめとする食品への異物混入により、数万、数十万個、さらには数百万個を越える製品が自主回収されている。たかが金属片など開けてみればわかるもので、健康に影響するものではない。従来ならば、新品に交換くらいで済んだもので、なにもすべてのの製品を回収して廃棄することもなかろうに、とんだ資源の無駄遣いだ。異物が入っていたらせいぜいお詫びに菓子折りか金一封を渡すくらいで消費者は喜ぶに違いない。これはきっと、矛盾に悩む人たちの攻撃の矛先をかわすためのものなのだろう。
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 ⑤ KIANにとって公文の宿題は、本人のみならず周囲の悩みの種だ。ママ・ジェーンの声がかかると、KIANは私の影に隠れる。たった10ページ、100問の簡単な計算(13-9=?など)なのだが、KIANの抵抗は果てしなく続いた。育休中で家にいたパパ・カーネルが見かねてKIANを事務所の机の脇に立たせて反省を促した。立ったまま泣きわめいて私の助けを求めるKIANだが、私としても見て見ぬ振りを貫いた。KIANも6歳、小学校に通って、そろそろ、こんなしつけも必要だろうとの思いだが、一体、勉強は子供にとってヘビなのだろうか。KIANが喜んで宿題をこなすようになるうまい手はないものだろうか。
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⑥ ドテルテ大統領が公共の場での喫煙を禁止する法令に署名をした。フィリピンでも、外では一切タバコを吸うことが出来なくなった。もちろん家の中では、ママジェーンのきついお達しで禁煙だ。間接喫煙の害が取りざたされて久しいが、喫煙者はますます肩身が狭くなった。そんなに悪いものならば、いっそ麻薬のように販売を禁止してしまえばいいと思うが、かつては専売公社というくらい、国家財政に寄与していたのでそうもいかないらしい。要は国家が販売を促進する一方、規制するというなんともわけのわからない仕組みになっているのだ。しかし、お酒と同じく、これだけ世界に普及しているのだから、それなりのメリットがあると思うのだが、喫煙者はこっそりとヘビが嫌いとつぶやくだけだ。
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⑦ 毒舌、暴言家のドテルテがフィリピン大統領になって、麻薬犯罪の一掃を掲げて、麻薬密売人などの超法規的(?)殺人が後を絶たず、国連やオバマ大統領などの人権派から非難が集中している。犯罪者の人権も尊重せよという指摘に対して、ドテルテ大統領は、麻薬の被害者の人権はどうでもいいのかと反論している。なんだかヘビ差別の是非を議論しているようにも聞こえる。
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⑧ イスラム教徒の入国を拒否し、メキシコ国境に壁を作るなどと、言いたい放題のもう一人の毒舌・暴言家のトランプ候補が、大方の予想を裏切ってアメリカ大統領になってしまった。また、イギリスのEU離脱が国民投票によって可決されたが、意外な結果にキャメロン首相が辞任した。ドテルテといいトランプといい、世の中の秩序に公然と反旗をひるがえす人間が国家の指導者になり、イギリス国民も首相の主張に反旗をひるがえすということは、庶民の公序良俗に対する抵抗なのだろうか。
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 現在の世の中は、公序良俗あるいは、それを主張する世論ないしメディアに支配され、人々は肩身の狭い思いをして小さくなっている。しかし、選挙という制度により、公序良俗に堂々とものを申す人たちが世の中を指導する立場について、世論ないしメディアを引っ張り始めた。そうなると、これからの世の中は一体どこへ進むのだろうか。
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 子供がヘビが嫌いと訴えても、大人たちは社会の秩序に反するとして耳を貸さない

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