6月に入ってマニラは連日雨模様だ。ほとんど1日中曇り空で、小雨、時には強い雨が降る。傘を持たずに出ると必ず雨宿りのはめに陥る。この季節はタクシーが人気で、空のタクシーをつかまえることは至難のわざだ。
雨季の後半の10月~11月は台風シーズンでもあり、強い雨が降るとマニラの道路はいたるところで冠水する。こんなときに威力を発揮するのがジープニーと SUV(Sport Utility Vehicle)だ。普段はでくの坊のSUVも一般乗用車が立ち往生する中を得意げに水しぶきを上げて通り去る。
フィリピンでは形だけSUVとした東南アジア仕様の車が存在する。4WDの本格的SUVを買えない庶民はこのアジア版SUV(A-SUV)を買う。トヨタのタマラオFX、いすゞのクロスウインド、三菱のアドベンチャーなどは三菱の伝説的人気車種であるパジェロを模して作られたA-SUVだ。かつて選挙の時、候補者達はパジェロに乗って田舎道を走り回り、有権者に投票を訴えた。そのため、パジェロの名はフィリピン全土に知れ渡り、憧れの車となったのだ。
車高が高イスズ(クロスウインド)はほとんどの冠水道路を平気で走れる
現在ではトヨタ、日産、ホンダ、マツダ、いすゞ、それにアメリカやヨーロッパのSUVがマニラの街を走り回り、パジェロが特別目立つ存在ではなくなったが、かつては贋物が出るほどの人気だった。その名は「パレホ」、タガログ語で「同じ」という意味だ。PAJEROのJとRを入れ替えて、PAREJO(パレジョではなくフィリピンではパレホと読む)となる。パジェロとは似ても似つかない代物だったそうだが、そのネーミングのセンスのよさに脱帽だ。