お祭りも結婚式もレチョンがなければ始まらないとまで言われるフィリピンフードの王様、レチョンとは子豚の丸焼きだ。炭火の炎熱でゆっくり焼き上げて作るレチョンは皮がぱりぱりして、これをレバーで作ったソースをつけて食べると、フィリピーノはお祝いの気分に浸ることができるのだ。一般の庶民にとって年に数回しか味わうことのできないレチョンは、フィエスタ(お祭り)には欠かせません。そのためフィエスタが近づくと、それぞれの家は手塩にかけて育てた生後3~4ヶ月の子豚をきれいに洗い内臓を取って、レチョン専門の業者に依頼して、レチョンを作る。これにパンシット・カントン(フィリピン風焼きそば)とビールあるいはタンドール(ローカル・ブランディー)があればフィエスタの準備は終わりだ。そして不特定多数の来客に備えるのだ。
あわれな子豚と思うなかれ
ところで丸焼きにされる子豚はたまらないが、これも定め、どうあがいたところで、食べられるために生まれてきたのだから、仕方がない。私もビコールの田舎で豚を飼っており、とても可愛らしいのだが、必要以上に親しくならないように心がけている。なぜかというと、数ヵ月後には、胃袋に収める運命にあるのだから、情が移ってはいけないと思うのだ。
つぶらな瞳で可愛い子豚なのだが
フィエスタならいざ知らず、農場を訪ねてきた友人や家族を歓待するために、一匹の豚をレチョンにするわけに行かない。子豚といえども20kg~30kgは優にある。一人200g食べても、100人分以上になってしう。先日、息子が訪問した折、豚の頭だけをレチョンにするというのだ。はじめはクリスピー・パタ(豚足のから揚げ)を期待していたのだが、豚の頭のレチョンはレチョンの中のレチョンだというので、しぶしぶ承知した。なにか残り物を食べさせられるような気がしたのだが。さて、はじめに手をつけるのがほほの肉、真っ白で脂肪の固まりかと思いきや、なにかあっさりしたゼリー状で、そのおいしさにびっくり。後で知ったことだが、焼肉牛門ではこれを豚のトロとしてメニューに載せていた。日本ではとてもお目にかかれないが、きっと養豚業者がその家族だけで内緒で食べてしまい、市場には出回っていないのだろう。
なんとも言えない表情の息子
豚の頭のレチョンは飛び切りのご馳走
マニラ、パラニャケのロハスボリバード沿い、バクラランの近くに有名なレチョン専門店がある。カマヤンなどでも生まれたての子豚を丸焼きにするところを見せて、客寄せにしているが、是非試してみてほしい。ただし、おいしいからと言って食べ過ぎないようにすること。かなり高カロリーだと思う。
バクラランのレチョン専門店
レチョンの店頭販売