1989年、初めてフィリピンを訪れたとき、フィリピンには喫茶店がなくて、街でちょっと人と会うときに往生したものだ。仕方がないので、ホテルのコーヒーショップやジョルビーなどでコーヒーを飲みながら話すしかなかった。すなわち、フィリピンには喫茶店という概念がなかったのだ。もっとも、フィリピン人は一日に5回食事を取るというから、人とちょっと会って話をするときもしっかり食事を取るので、それでよかったのだろう。しかし、1997年にスターバックスの一号店が開店してから、マカティのいたるところにスターバックスが開店してフィリピンにも喫茶店文化が根付いた。しかし、喫茶店といえる代物はスターバックスなどのチェーン店だけで、他には見たことはなかった。
ところが、最近、KIANの英語の家庭教師のレッスンに立ち会うようになったのだが、そこは紛れもない喫茶店なのだ。私の住んでいるコンドから歩いて数分のところにあり、住宅街の一角、St. Paul St.とEstrella St.の角を私のコンドと反対に向かった50mくらいの左側にある。その通りは100回以上通過したと思うがついぞ気がつかなかった。下記、HP参照。Coffee 8065, San Antonio, Makati City – Zomato Philippines
つくりは普通の民家の一階といった雰囲気で、これといったしゃれっ気もなくて、名前もCOFFEE 8065と地味だ。店の内部は古びていて、スターバックスなどのこぎれいな内装とは異なり、いかにも庶民的で、フィリピンの喫茶店文化の原形を見る思いがする。
喫茶店COFFEE 8065の外観はただの民家
店の中も質素で飾り気がない
オーナーはキチナ・ダイという有名な歌手(店内に貼られたポスター)
メニューは店の名前からしてもコーヒーと各種飲み物が中心だが、メニューは豊富だ。軽食も取れて、モーニング、サンドイッチ、パスタなど110~120ペソで提供され、ミリエンダ(間食)好きのフィリピーノには好都合だろう。私にとっては炭水化物中心で今一だが、それなりにおいしい。したがって若者、特に女学生のたまり場となっていて、時には席がないほど繁盛している。Wifiもあって、パソコンを持ち込んで長時間粘っている人もいる。アテ・キムにこの喫茶店の話をしたら、オーナーはキチナ・ダイという有名な歌手だそうで、だから客は若者/学生(特に女学生)が多いそうだ。
ドリンクのメニューは豊富だ
軽食メニューもそこそこ、100程度と安いのが魅力だ
長いこと知らなかったのだが、この喫茶店ではKIANが英語の家庭教師のレッスンを毎週、月、水、金の午後4時から5時まで、メイ先生から習っていだのだ。普段はアテ・キムやいとこのアリアなどが付き添うのだが、最近、この役割が私に回ってきた。ドンボスコの出迎え、公文、そしてピアノのレッスンに同行しているので、KIANはこの英語レッスンにも私が傍にいて欲しいと切望したのだ。行くときはいつも「Can you stay」とレッスンが始まるまで繰り返す。
外の壁に描かれた壁画、環境にこだわりがあるようだ
KIANに英語の家庭教師を付けたのが2014年の9月末、4歳だから、2年近く習っていることになる。初めはABCの読み方を来る日も来る日も事務所で勉強していたのを覚えているが、久しぶりにKIANの勉強振りをながめてびっくりした。教科書はドンボスコのものを使っているが、そこに書いてある問題や、文章をたどたどしいとはいえ、しっかりこなしているのだ。KIANはABCに苦戦 2014年11月30日
メイ先生と和気あいあいとレッスンを進めるKIAN。質問をするとKIANの機知に富んだだ回答にいつも先生は笑わされている
前にも紹介したが、これが小学一年生の教科書かと目を疑うような高度なものだ。KIANが時々引っかかるのはOnce(ワンス)などの読み方だ、また、レターの11行目のEnvironment(環境)という単語は、私が高校3年のときに友人から、なんでこんな単語を知っているのかと驚かれた単語だ。あとで、文章を読んで、それを理解しているのかとKIANに聞いたら、あっさり「Yes」と答えた。読み書きがまだまだ苦手なKIANにとっては読めさえすれば、それを理解するのはいとも簡単なことのだ。KIANの英語の聞く、話す能力は、読み書きに比べれば、はるかに高い。しかし、その読み書き能力も小学校一年にして日本の高校並みの教科書をこなしているのだ。
小学校一年生の読み物とは信じがたいレベルだ
私が中学のときは英語が苦手で、その反発で高校では猛勉強して、英語が得意課目だと自負していた。しかし、たったの6歳の小学生一年生、ABCを習い始めて2年のKIANに負かされているという、信じがたい状況を目の当たりにしたのだ。子供のころ、私は私なりに英語は努力したつもりだった。しかし、それがフィリピンの小学生(しかも2ヶ月前に入学したばかり)に凌駕されているなんて、一体日本の英語教育というものはなんだったんだろう。しかし、今のKIANに負けないものが一つある。それは、英文法だ。英語という言語を構成するルールというものについてはKIANとは比較できない知識があると思うが、現在の生活において(英語で生活し、英語でビジネスをしていく上で)全く不要の長物なのだ(皮肉だが)。
UP(フィリピン大学)卒、幼児教育の修士号を持つメイ先生はKIANが大好きだ