マニラの封鎖が決行され、行政、小売り、サービス業、公共交通、入国、等々、すべての庶民生活が停止したのが、2020年の3月15日、それから丸々2年が経過した2022年3月16日、当方の案内による待望の退職ビザ(SRRV)発行が実現した。実にこの二年間、当方の主たる業務のSRRVの発行手続き代行が皆無だったわけで、実にビジネスの続行が危ぶまれる崖っぷちの状況が続いていた。
そして、この2月10日からビザ無しの入国が解禁され、さらに3月1日からは警戒レベルが1に緩和されて、役所も100%稼働が可能となり、いよいよ眠ったいた社会が動き始めた。2月10日以来の外国人の入国者数もすでに10万人を突破し、ボラカイを訪問する観光客も、すでにパンデミック前のレベルだそうだ。
一方、外に目をやると、日本では毎日の感染者数が5万人、東京だけでも一万人前後と、フィリピンの数百人とは、二けた違い、韓国では数十万人と三桁違いのありさまだ。ロシアのウクライナ侵攻に世間の耳目は奪われており、従来ほどの話題にはなっていないようだが、昨年のレベルとは大違いで、こんな状況で外国人の入国を許すなんて、きちがい沙汰と言われても致し方ないような気さえする。しかし、このまま、封鎖状態を続けていたのでは、社会そのものがつぶれてしまう恐れもあり、ウクライナに目を奪われている間に決行に至ったのだろう。当方としては、恐る恐るながらも外の様子を覗きみながら行動しているといった按配だ。
SRRV申請者を受け入れるにあたって、ビザ無しで入国できることはわかったものの、具体的な続きについては、大いに戸惑うものがあった。基本的な要件は、下記の五つであるが、色々と疑問が沸き起こった。
1.ワクチン接種を完了しており、フィリピン政府に認められた接種証明書を提示できること
2.出国48時間前にRT-PCR検査を実施して陰性証明書を提示できること
3.35000ドルのコロナ罹患の治療をカバーする旅行保険に加入すること
4.出国から30日以内に帰国ないし他国へのチケットを保有していること
5.OHP(One‐time Health Pass)にワクチンとRT-PCRの証明書等を登録してQRコードをスマホに保管していること
ワクチン、RT-PCR検査、旅行保険は、関連業者に対応してもらえるので、さほど迷うことはないだろう。しかし、出国から30日以内のチケットに関しては、もしも30日以上の滞在が必要になったとすると、果たして30日有効とされる入国ビザの延長は可能なのか、特にSRRVの取得には、従来通りとしても4~6週間必要で、途中で帰国する羽目になるとしたら致命的な問題だ。PRAにと言わせても他の役所のことだからか、回答は得られなかったので、入管に直接問い合わせて、従来通り可能との回答をもらって安堵した。同じ質問が殺到したのか、その後、在日フィリピン大使館のホームページにも延長可能であることが明記された。
「お知らせ:ワクチン接種を完了した査証免除国(行政令408号 / 1960)からの渡航者の観光およびビジネス目的での無査証(ビザ無し)入国について」
次のOHPについては、コロナ感染予防に関するすべての情報をQRコードに記録するもので、RT-PCR検査が48時間以内となっているので、検査結果の入手に一日かかるとすると、結果の入手から出発まで時間がない。しかも、すべて英文なので入力が難しいなどの問題があって苦労するので、十分な余裕をもって入力を開始して、RT-PCRだけを入力すればよいようにしておくべきだ。一方、空港の案内所などで入力代行サービスをしてもらえる所があるとありがたいところなのだが。なお、フィリピン入国案内のサイトによってはTraze(追跡アプリ)などにも登録が必要となっているが、実際問題、それ無しで入国できているようだ。
めでたく入国して、申請を終えたのは良しとして、はたしていつビザが発行されて、パスポートが戻ってきて、日本に帰ることが出来るのかが、次の問題だ。パンデミック前は最長で、4~6週間と予測された。かつては2~3週間だったのだが、時がたつにつれて遅くなっていったという頭の痛い問題だ。そしてパンデミックの最中はどうなのか、特に入管がまっとうに機能していないといううわさもあって、見当がつかない。いくらPRAに聞いても決して答えてくれない。PRAにとっても入管の動きはつかめないので、コミットすることは決してないので、私としても実績ができるまで、コメントのしようがない。
因みに2月に入国/申請したのが、シンガポール在住のニュージーランド人、日本人二人、3月がイギリス人夫婦と日本人、それにアメリカ人の科学者、それにプエルトガレラ在住のオーストラリア人、合計7名と多種多様だ。
そして、ついにSRRVの発行にこぎつけたのだが、2月に入国した3人で、結果的に、入国から5~6週間で発行され、パンデミック前と大差のないスケジュールだった。ちなみに入国ビザはORDERと呼ばれるSRRV発行の決定書の署名日と重なっていればいいので、実際にパスポートが返却される一週間位前までに入国ビザが有効であればよいことになる。したがって、今回ビザ無しで入国した申請者は5週目にビザが発行され、ぎりぎりで入国ビザ延長は無しで済んだ。
さて、SRRVが取得出来たのは結構なのだが、SRRVをもっている場合の出国と再入国の手続きが次の課題となる。日本への入国は、別のサイトにお任せして、フィリピン出国に限ってみると、Travel Passの取得が追加で必要となる。これは、PRAに申し込めが簡単に手にはいるのだが(https://ssrvm.pra.gov.ph/にアクセスしてオンラインで取得、あるいは entryexit@pra.gov.ph にE-メールで申し込む) 一週間前に申し込むことになっているので、今回のようにSRRVが発行されて即、帰国ということになると、間に合わない恐れがある。そこで一計を案じて、SRRV発行の際に同時に発行してくれるようにPRAに申し込んで、事なきを得ることができた。出国間近で間に合わないときは、PRAに出向いて、直接受け取るのが最後の手段だが、この時だけはPRAもアポがどうとか言わずに受け付けてくれているようだ。なお、Travel Passは入管から取得することというガイドラインが入管から2021年に発行されているが、SRRVの場合は、ビザ発行機関であるPRAが発行するもので、入管から取得する必要はない。なお、SRRVに限らず、SIRV、PEZAなどのビザについても同様にTravel Passが必要なので要注意。なお、フィリピンに再入国した際には3日以内にパスポートの顔写真のページ、SRRV、入国スタンプのコピーを添えて、Eメール(entryexit@pra.gov.ph)でPRAに届けなければならない。
一方、SRRVを保持している場合におけるフィリピン入国においては、不明確な面があったが、最新の在日フィリピン大使館のホームページ「お知らせ:令和4年4月1日より入国免除文書(EED)なしの資格ある外国人の入国許可について」によりクリアーに示されている。ただし、ここに述べられている5つの条件の内、「30日以内の出国チケットの保有と35000ドルの旅行保険」については、日本大使館の「感染症情報(2022.03.29)」さらにPRAからも「PRA Advisory 2022.04.01」が発行されて、この二つの条件はSRRVにおいては適用外であることが明らかにされている。
結論として、下記が入国の必須条件となる。なお、言わずもがなではあるが、PRA ID カードは更新されて有効である必要があるので注意してほしい。
1.ワクチン接種を完了しており、フィリピン政府に認められた接種証明書を提示できること
2.出国48時間前にRT-PCR検査を実施して陰性証明書を提示できること
3.OHP(One‐time Health Pass)に上記の証明書を登録してQRコードをスマホに保管していること
今回は、ビザ預託金の送金にDBP(Development Bank of the Philippines) を使ったのだが、これが予測できない伏兵として障害となった。DBPの場合は、PRA口座に振り込むので申請者名でPRA認定銀行に個人口座を開設する必要がない。パンデミックの状況で個人口座開設のために動き回ることはできなかったので、DBPに振り込んでもらった。しかし、従来は最長で2週間見ておけば、預金証明書がPRAに送られてきたのだが、それが3~4週間かかってしまって、申請者の来比に間に合わない事態になって、その分、申請が遅れたのだ。お金そのものは、3~4日もすれば、到着するのだが、証明書の発行にDBP内部でそれだけ時間がかかるということはまったく想定外のことだ。いくらパンデミックで、稼働率の制限があったとはいえ、さすがに政府系の銀行だけのことはあると、感心せざるをえない。
2年ぶりで、色々手順が異なって、ここ数週間は、やきもきの連続だった。これで実績を積んで、状況が読めるようになったので、今後は、よりスムーズに安心して進められると確信している。因みに、現在、退職ビザ(SRRV)の発行は、50歳以上に限定されており、従来の35歳以上‐50歳未満の受け付けはされていない。また、スマイルプログラムについても停止中で、今後の行方が注目される。