とあるフィリピン通の方が、「フィリピンで恋をするならタガログ語を覚えなくちゃ」と語っていた(実はこの方は、タガログ語ばかりか、英語、スペイン語を自在に操り、フィリピンでの恋は数知れぬというる恋と言葉の達人なのだ)。
花街には日本語をしゃべる子がたくさんいるから、日本語で何とかなってしまうだろう。しかし、彼らにしてみれば商売道具の日本語を駆使して客のハート(財布)を捕まえようとしているのだから、「フィリピンで恋をする」、という感じには程遠い。まあ、それはそれでいいのだが、それなら英語では何故だめなのか。
ご承知の通り、フィリピンの公用語は英語だ。公文書はすべて英語で、英語がわからないと会社勤めもできない。しかし、それだけに四角張った言葉であって、恋を語るにはいかがといったところだ。英語は英語なりに甘い言葉もあるのだろうが我々の実力では英語で相手の心を溶かすなんて芸当はできないだろう。仮に、こちらができたとしても相手が緊張して逆にこころを閉ざしてしまうだろう。
この写真はアンヘレスのジェンネシスというクラブのきれいどころ(中でつながっている左隣のクラブかもしれないが)
その点、タガログ語でせまれば、相手は、もともと自分の話し言葉だから、初めから心を開いている。たとえ片言でもタガログで話をしたときのフィリピン人の打ち解けようは英語や日本語とは比較にならない。しかもタガログ語は英語に比べて実にソフトで、フィリピン人を相手に話していて、タガログ語で返されると心がとろける。その点英語は実にぶっきらぼうだ。
たとえば、「ありがとう」は英語には「Thank you」以外の表現がなくて、そこに感情が入り込む余地がない。しかし、フィリピン人は「サラマッポ(Salamat po)」あるいは「サンキューポ、Thank you po」と返してくる。この「ポ」(Po)という言葉は相手を尊敬している場合、あるいは慕っている場合などにつける接尾語で、これがいかにも心地よい。
相手に質問するとき「What do you want?」 「Why you are angry?」などと質問したら、状況にもよるが、これはすでに相手を責めていることになる。特にメールなどではニュアンスが伝わらないので喧嘩しているようにも聞こえる。しかし、これをタガログ語で「アノン グスト モ?(Anong gusto mo?)」「バケット カ ガリット?(Bakit ka galit?)」といっても決して責められているようには聞こえない。フィリピーナをからかって、相手が嫌がっていても、彼らは「フワッグ ポ(Huwag po)」などと、いかにも優しく拒否してくる。
恋人や夫と会話するときは、初めに「マハール コ(Mahal ko、あるいはLove koとも表現する」と呼びかけるが、これを直訳すれば「私の愛しい人」となり、なんとも甘いやり取りだ。そして会話やメールの最後は必ず「I love you」で閉める。この「I love you」は、タガログ語会話でも重要な愛の表現の一つとなっている。ちなみに「マハール モ バ アコ?(Mahal mo ba ako?俺のこと好きか)」などという言葉は口説き最中のカップルには頻発する。これを100回くらい繰り返すと、相手も降参して「マハール キタ(Mahal kita,愛してる)」と言って白旗をあげてくる。これを「Do you love me?」と英語で繰り返していてはいつまでたっても埒があかないだろう。
「美」は「ガンダ(Ganda)」で、「マガンダ カ(Maganda ka)きれいだね」といえば相手はうれしそうに顔を赤らめるだろう。そして「アン ガンダ モ(Ang ganda mo)」といったら最上級のほめ言葉で、「その美しさに恋に落ちてしまった」という意味合いをかねている。
逆に相手を非難する言葉として「バストス カ(Bastos ka、スケベ、下品、野卑)」という言葉があるが、言い方によっては日本語の「イヤーン バカ」なんて感じにもなる。しかし「プタン イナ モ(Putan ina mo)、相手を非難する最強の言葉、元々”お前の母さんバイタ”という意味」などといわれたら、その恋は終わりだ。
この子達はジェーンの姪っ子たちでちゃきちゃきのハイスクールの少女達だ
いつも不思議に思うのだが、日本語に「I love you」に相当する言葉がない。「私はあなたを愛しています」なんてのは日本語ではない。強いて言えば「好きだよ」あるいは「好きよ」といったところだろうが実に間接的な表現だ。タガログ語では「マハール キタ(Mahal Kita)」「イニイビ キタ(Iniibi Kita)」「イニイロ キタ(Iniilo kita」「グスト キタ(Gusto kita )」などぴったりの言葉がたくさんある。そのほか、「カイランガン キタ(Kailangan kita,あなたが欲しい」「ダヒール サヨ(Dahil sayo、あなたのせいで)」など恋を語る言葉が豊富にあって、恋の歌の歌詞作りには事欠かないようだ。
さらに英語では男と女の営みに「セックス」とか「Make love」などと実にそっけない表現するが、日本語は「H」、「やる、する」などと間接的表現を用い、他には「性交」など学術的表現しかない。一方タガログ語では、やはり間接的表現をするものの「ソクソク(Soku soku,これは日本語だとフィリピーナは言うが真相は不明」「パクワン(Pakuwang,元々スイカのこと)」「ボムボム(Bom bom)」など面白い表現がたくさんある。直接的には「カンクータン(Kankutan)」と言うがかなり下品な表現らしい。
いずれにせよ、フィリピ-ナとの会話はタガログ語に限る。そうすれば思わぬ恋のチャンスがめぐってくるかもしれない。