先の選挙で下院議員に当選したフィリピンの英雄マニー・パクヤオ(33歳)が伏兵メキシコのファン・マルケス(39歳)にノックアウトで敗れた。強すぎて戦う相手がいないとまでいわれるパクヤオに果敢にも挑んだ39歳のロートルは一発で大金星をつかんだ。
パクヤオの試合を見ようと、特大スクリーンを設置した無料会場には多くの庶民が集まった。フィリピンではテレビの中継は、試合後、しばらくたってから行われるので、生中継を見るためには有料の会場に行って見なければならないのだ。
ここのところ数戦、微妙な判定で勝利してきたパクヤオは、何が何でもノックアウトを狙って、初めから飛ばした。また、相手はすでに2勝している格下で負けるなどということはありえないと信じていたようだ。しかし、その慢心と油断が、第6ラウンド、カウンター気味に入った右のストレートでマットに沈み、そのまま失神してしまった。この痛恨の一撃でパクヤオの神話は終わりを告げた。
パクヤオの勝利を信じていた観客は、まさかの敗北に、ぼう然としてたちすくんだ。そして、葬式の列のように肩を落として会場を立ち去り、フィリピン国民、皆が喪に服した。
パクヤオのママ・ジョニシアはテレビで「パクヤオに政治に専念して欲しい」と、悲壮な決意を語った。現在奥さんや弟も政治家の道を歩んでいるとのこと。
パクヤオの勝利はフィリピンの国民に希望を与えるものと、ラスベガスからの凱旋の度にマラカニヤンを訪問して大統領に賛美されたものだが、今回はビニャイ副大統領が彼を励ます異例のコメントを発表した。
さらに、先のアメリカ大統領選で敗北したロムニーもテレビに現れ、パクヤオの偉業を賞賛した。まさに世紀の英雄の最期だった。