東 洋一のスラムといわれるトンドはチャイナタウンの北、マニラ港にそって広がっている。犯罪の巣窟とも言われているが、そこに住む人たちは意外と明るく 生活をエンジョイしているように見受けられる。そこではなぜかやたらと子供が多く、元気に走り回っている。花街の女性たちに聞くとトンドに住んでいる と答える人が多数いる。あの元気で無邪気な子供たちの将来は花街なのだろうかと心配になる。
川べりのスラム
スラムではやたらと外でくつろぐ人が多い
路地裏はまさに子供であふれている
一風吹けば崩れ落ちそうな家々
最 近はある程度財をなした人が立派な家を建てているところもあるが、ほとんどはバラックで、しかも2階から4階建てにもなっていて、ちょっとした地震が あったらひとたまりもないといった様子だ。また火事などおきたら一帯は全焼するしかないだろう。でもトンドで火事があり人が死んだという話はあまり 耳にしない。
収入の10%を寄付しなければならないイグレシアニクリスト宗派はトンドにもこんな立派な教会を建てている
この子達の底抜けの明るさはどこから来るのだろう
ト ンドのエリア沿いの道を車で走っただけでも、なんやら悪臭が漂ってくる。普通の人がトンドに足を踏み入れるということはめったに無いだろうが、私の知 り合いで、マニラに出て来た時はトンドを常宿にしているという人がいる。彼は、フィリピン人の友人がそこに住んでいるから宿にしているだけなのだが、 住み慣れると人々は気さくで優しくてとても住みやすいという。しかしやたらと虫が多くて、これだけは往生するそうだ。
スラムはまさしく生活のにおいがする
この子達の将来の行き先はどこ?
本当に子供・子供・子供
か つてスモーキーマウンティンがフィリピンの顔のように色々な形で報道されていた。ここは、マニラのごみの処分場だったのだが、ごみは何の処分も無し にただ廃棄されるだけだったので、積もり積もったごみの山が醗酵して煙を吐いていた。だから人はここを煙の山、Smokey Mountainと呼んでいたのだ。そのごみの山に小屋を作って、毎日ごみの中からお金になるものを探して生活の糧にする人々が多数いて、数々の取材の 対象となっていたのだ。
かつてのスモーキーマウンティン、今でも煙が出続けている
1990年 代にごみの投棄は廃止されたが、現在でもその山はそのまま残っている。今は草が生えて一見ごみの山とは思えない。その脇にはマンションが建っているが、土壌の汚染などどのような対策をとっているのか、そんなところに良くすむものがいるなと心配になってしまう。
体を洗いながらポーズをとってくれた
今にも川にくずれ落ちそうな家々
ス ラム街はマカティなど一部を除くメトロマニラの全域に大小の差こそあれ存在している。先日、観光のメッカ、イントラムロスを訪問した際、そこにもスラム があるのにはびっくりした。政府は数千億円の予算を投じてこれらスラムを一掃すると宣言しているが、たとえ近隣県に住宅を建てて住まわせたとして も、生活の糧を与えなければ、そこが再びスラム化するだけだ。トンドにはマルコス プロジェクトあるいはエストラーダ(アロヨ大統領の前の大統領、汚職騒ぎで失脚して現在刑務所に入っている)プロジェクトと呼ばれるスラム対策の住宅が並んでいるが、そこがすでにスラム化しているのは明らかだ。果たしてフィリピンからスラムが一掃される日が来るのだろうか。少なくとも私の目が黒いうちは来ないような気がする。
歴代大統領のプロジェクトもスラムが立体化しただけ