賢い赤ちゃんの育て方 パート2 2011年8月24日


           1歳と4ヶ月にもなるとKIANの好奇心と行動力はとどまるところを知らず、ちょっと目を離すとどこかへ飛んで行ってしまう。そこでママ・ジェーンが買 い求めたのがジェケットに紐がついていて、赤ちゃんの行動をコントロールできる代物だ。ヤヤ(子守)にとってこんな都合の良いものはない。紐でKIANの 行動を縛り付けておけば、自分は座ってヤヤ友達とおしゃべりにふけっていられる。 

CIMG5495s-2 これを見て大いに疑問を呈したのが私だ。犬猫でもあるまいし、紐でつないでおくなんて、たとえ赤ちゃんであろうとも人間としての尊厳を汚すものだと激しく抗議した。そしてさらに、こんなものは面倒を見るヤヤの手抜きであって、KIANの大いなる成長を妨げるだけのものだと。人間は自ら判断して行動をすることが重要で、失敗や成功を通して喜びや落胆があり、成長していく。大人の目から見れば、赤ちゃんが単に走り回って遊んでいるだけかも知れないが、当の赤ちゃんにとってしてみれば、いつもチャレンジの連続なのだ。だからこのような行動規制は本当に赤ちゃんの身に危険が迫った時に限定されるべきで、例えば下の写真の下り階段に設けられた開き戸のような場合とかだ。 

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最近のKIANはおもちゃよりも大人が使っているものを何でもほしがり、何でも大人と同じようにやって見ようとする。まさにチャレンジの連続だ。それを、汚すから、壊すから、危ないからと何かと行動を規制しようと、ママ・ジェーンは顔をしかめるが、それはせっかく赤ちゃんが成長しようとしているのを妨げているにすぎない。 

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だから、何でも自由にさせてもらえる私と一緒に食事を取ったり遊んだりするのがKIANは大好きだ。その代わりKIANの食事のあとはテーブルや椅子、そして床とそこいらじゅう食べかすだらけでびしょびしょだ。それを、「フィリピーノは、例え赤ちゃんでも食物を遊びに使うのは神を冒涜するものとしてきらう」、とママ・ジェーンは口やかましい。それでもガラスのコップはすぐ壊すので、プラスティックのコップを買ってきたりして、しぶしぶ 協力してくれてはいるが。

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 KIANが部屋を走り回って遊んでいると大人たちは頭を角にぶつけるのではないかとか、転んでしまわないかとか、先回りして保護したり、大きな 声でKIANを脅して制止する。私といえばただ黙って見ているだけだが、大人はどうしても色々な事が気になって、赤ちゃんの行動を一定の枠にはめようとする。それでは赤ちゃんを檻に入れているようなものではないか。

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檻の中にいては赤ちゃんは何も覚えない。頭をぶつけて痛ければ次回は気をつけようとするだろうし、熱いものを触れば、危険を察知するようになる。何事もやらせて体験して覚えさせることだ。それを、何でも先回りして過保護に育てると、自分で危険を察知して回避する術を学べない。そして大きくなってから、何かひどい目に会うと、自分を事前に保護してくれなかった両親、あるいは他人に責任があると、いわゆる他責の人になるのだ。秋葉原の無差別殺人やむしゃくしゃして患者のつめをはいだりするなんて行為は、きっとこういう過保護人間がしでかすのだろう。

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紐につながれて歩いたり、行く先々で大人が規制をかけて、言われなき罵声(行動を制止する大声)を与えられ続けたら、もはや自分の判 断で動くことができなくなるだろう。その結果自分の判断で物事を進められず、常に誰かのアドバイスがないと前に進めない、なんとも頼りにならない人間に 育ってしまう。しかし、「ただほっておいては、ものごとの善悪の判断もできなくなる。だから間違ったことをしたら叱るべきだ」とママ・ジェーンは反論す る。例えば、「KIANがものを投げたり、人をたたいたりするから、叱って是正するのだ」と。ではなぜKIANがものを投げたり人をたたいたりするのか。 それはママ・ジェーンがものを放り投げてKIANに与えたり、何か悪さをするとKIANをたたくまねをして、叱るからなのだ。KIANはもっぱら周囲のま ねをしているだけなのだから、赤ちゃんに対して周囲は脅したり叱ったりするのではなくて、手本を示してやらなければならないのだ。

CIMG5130s-2CIMG5069s-2  フィリピンでは、子供の独立心を養おうと食事を一人でさせたり、自由に外を走りまわせていると、周囲の人間は「その赤ちゃんが親やヤ ヤにちゃんと面倒を見てもらえなくて可愛そう」と感じるそうだ。だから他人の前ではいかにも子供を可愛がっていますと、ママ・ジェーンは過保護振りを周囲 にアピールする。でも、最近は転んでも助け起こさないなど、若干欧米的な扱いにはなっている。一方のKIANは転んだ位ではめったに泣かない。

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ママ・ジェーンは毎月、KIANを病院に連れて行って検診をしている。KIANを取り上げた女医さんはKIANの奔放な行動に目を細める。先生にKIAN語でべらべらと話しかけたり、聴診器を持って先生の胸に当ててみたり、注射もじっと針をにらむだけで、泣き声一つあげない。先生はKIANの成 長振りを誇りに思うとさえ言ってくれているそうだ。私としては、KIANは短気で思うとおりにならないとすぐに泣き声をあげるのがちょっと気になるところだが。

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 以前は手押し3輪車で満足していたものが、もはやそれでは飽き足らず、リモート・コントローラーあるいは自分でも運転できる電気自動車に目が移っていた。6000~8000ペソと決して安い買い物ではないが、KIANの笑顔と泣き顔には抵抗する術をもたないダダ(私の呼び名)が大枚を はたくことになってしまった。

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