Daily Archives: October 25, 2008


 9月末、引越し準備で事務所が閉鎖されている間を利用して、ビコール・タバコの農場を訪問した。未だ本格的に農場を運営しているというほどではないが、なんとか農場といえる程度に米の栽培や家畜の世話をしている。  先日、2頭の子豚を友人の子供の洗礼式にプレゼントしたため、豚小屋が寂しくなっていたが、今回は10頭の子豚が生まれにぎわっていた。 私にとって子豚が生まれるのは初めてというわけではないが、豚の赤ちゃんはいつ見てもとても可愛い。この母豚は初産であり、10頭の子豚は皆元気で走り回っていた。   ところで放牧養豚というものが取りざたされているが、こんな小さな豚舎に閉じ込めておかないで広い野原で自由に動き回れたら、彼らも幸せだろうと思う。6ヶ月程度の短い一生なのだからせめてその間、生を最大限エンジョイさせたい。生産効率は多少落ちるそうだが放牧されて育った豚の肉は格別においしいという。それに土壌にまかれた糞尿は有機肥料となり土壌も肥える。そこに植えた作物も立派に育ち、糞尿の処理も不要、さらに豚肉もおいしいという、まさに一石3鳥だ。しかし広い土地が必要であり、現在の養豚業は過密飼育が一般的だから無理なことかもしれない。しかし、わが農場は土地が有り余っているので、近い将来是非チャレンジしたいと思っている。 お乳をせがむ生まれたての子豚   農場には豚のほかに、あひる、鶏、テラピア(食用淡水魚)などを飼育しているが、彼らは実に性にあっけらかんとしており、自然の営みが脈々と行なわれていることが観察できる。水田や養魚池には昔懐かしいタニシが棲息している。タニシはアヒルのえさとして、貴重なタンパク源となっており、タニシの多い季節はアヒルも卵をたくさん産んでくれる。そのタニシの卵はピンク色で池の壁や水田の土手に卵を産み付けているが、当然のことながら卵を産む前には交尾を行なう。その現場を養魚池の淵でとらえることができた。 タニシの交尾現場  アヒルの受精卵をゆでて食べるのが有名なフィリピン名物のバロットだ。この農場の卵はすべて有精卵だが、その現場が次の写真だ。アヒルのオスはメスに馬乗りになり、しばらく両足でメスの体を押さえつける。そうこうしているうちに合体ということになるが、いったん合体したらいたってことは早い。この写真ではまるでベテランのオスが若いオスを指導しているようだ。  鶏のメスがひよこを引き連れて歩き回る様は、実に愛らしいものだが、農場では我が家の飼い犬がひよこを襲ってしまうので、小屋に入れている。ひよこを育てているメスは実に凶暴だ。近づくとすかさず攻撃される。卵を温めている間の母鳥の忍耐と努力は賞賛に値するが、その自己の保全を省みない母性も驚きに値する。本能とは言え、自然の営みに感激する。一方、昨今の日本の親殺し、子殺しなど、家庭内での悲劇を耳にするに付け、人の世では、この自然の本能をどこかへ忘れ去ってしまっているのではないかと危惧される。  農場では現在5頭の犬を番犬として飼っている。彼らは家の周囲を自由に徘徊し24時間警護している。食い物さえ与えていれば、昼夜休みもなく働いてくれるのだから、本当にありがたい存在だ。一頭は生まれて間もないが、後の4頭はボスのアイス(オス、5才、ラブラドールの雑種)、その妻のチャコ(メス、5才、シェパードの雑種)、チャコの子供の熊太郎(オス、4才、シェパードの雑種)と熊子(メス、4才、シェパードの雑種)だ。ちなみにアイスは熊太郎と熊子の父親ではない(父親の太郎はアイスとのボス争いで死闘を繰り返すため他へ移した)。子犬の父親はアイスだが、この4頭と子犬でバランスを保っていたのだが、今回異変がおきた。  かつては母親のチャコが娘の熊子を常々威嚇して、母親の威厳を保っていた。ボスのアイスの子を産むのはチャコだけだ。どんなにアイスが熊子に挑んでも熊子は操を守ってきた。きっと母親の男を取るなんてことは許されないということだろう。しかし、今回、娘の熊子が母親のチャコを威嚇して、チャコはキャインキャインと情けない声を娘に対して発していたのだ。まるで主客転倒である。原因は何かわからないが、母と娘の世代交代が実現してしまったのだ。それだけでは終わらない。ボスのアイスが熊子に挑んで熊子はそれを受け入れたのだ。彼らは血がつながってはいないが、たとえつながっていてもこういうことになるのか興味のあるところだ。  合体後の2匹、アイスはまるで何事もなかったように平然とそ知らぬ顔をしている。一方遅すぎた春(?)を迎えた熊子は自分の足をかんだり、なんやかんやと事後処理に忙しい。その後、しばらくの間、アイスが熊子に挑むと、よほど不快な思いをしたのか、熊子はアイスを威嚇して拒否する行動に出ていた。アイスやチャコにはまるで従順だった熊子がボスの女(あるいは妻)になった途端に強くなるものだと感心させられることしきりだった。  メスは後始末にいそがしい  人の手を加えないで複数の犬を飼っていると、犬の社会のしきたりを色々知ることができて興味がつきない。彼らは、赤ん坊の時から育てているので、犬の社会の学習はない。これらすべてのしきたりが本能から来ているのだろうか、一体どうやってこれらのことが世代を越えて伝えられていくのか、もし人間の子供が人間社会から一切隔絶されて育ったとしたら、果たしてどのような社会生活をするのだろうか、などなど思いがめぐる。ついでに少々古い写真だが、我が家の猫の交尾シーンを紹介しよう。わが人生において初めて目撃した動物が正常位で交尾しているという感激的瞬間である。

農場には自然の営みが溢れていた2008年10月25日