フィリピーノの子供の傍若無人ぶりは他でも触れた。そしてそれをほっておく親の顔をあきれて眺めることがしばしばあることも。しかし、フィリピーノの子供への愛情は日本人には想像のつかないものがある。しかも、子供は自分あるいは家族のものという感覚が強く他人が介入すべきものではないのだ。 3歳のいとこに化粧をしてあげて遊ぶフィリピーナ(8歳) 仮に他人の子供がコンドミニアムなどの廊下で遊んでいて、あまりにうるさいので注意する、あるいは他の子供をいじめているので注意する、時には聞き分けがないのでたたいたりしてしまったりすることがあるかと思う。そんなことをフィリピンでやったら大変なことになる。なにしろ子供は何をしても許される社会だから、他人がわが子を叱ったり、たたいたりしたら、それはもう戦争だ。たとえその子供にどんな非があろうとも、あなたにどんな事情があろうとも、決して許されることではないのだ。あなたは悪魔の化身として忌み嫌われ、その家族からは一生口を聞いてもらえなくなることは間違いないだろう。 そうなると一体どうやって他人の子供に注意したらいいのだろうか。親しいフィリピン人に頼んで、それとなく親に伝えて注意してもらうのだ。遠まわしにいかに当方が迷惑を被っているか、それとなく伝えて子供を指導してもらうのだ。それでもだめだったら我慢するしかない。 ある日、コールセンターに夜勤しているフィリピーノが、昼間は寝ているので子供たちがコンドミニアムの廊下で大騒ぎをして遊んでいるのは甚だ迷惑であることを親に伝え、外で遊ぶか静かに遊ばせるよう要求した。ところがその子供の親は、昼間に子供が遊んで何が悪い、しかも、子供が静かに遊ぶことなどできはしないと、聞き入れてもらえなかった。そこで話はバランガイ・キャップテンまで行ってしまったが、キャップテンの判定は、件の子供は白。昼間に寝なければならないのは個人的な理由であって、それを他人の子供に押し付けることはできない、ということだった。その後も子供たちはコンドミニアムの廊下で何事もなかったように大いにはしゃぎまわっていたのはいうまでもない。 トライシクルも子供にとっては遊び道具だ これをフィリピン人はなんと社会的常識にかけるのだと責めてみても始まらない。フィリピンに住んでいる限り、社会的常識に欠けているのは我々外国人なのだ。