いよいよ8ヶ月目に入ったキアンだが、フィリピーノ流の子育てがどうにも気に障って仕方がない。ヤヤ(子守)にかしずかれて、両親や兄姉の愛情を一身に受けているのは多いに結構なのだが、キアンにとっては多いに不満があるようだ。 赤ちゃんの成長は目を見張るようで、ちょっと前まではミルクを飲んで、寝ているだけだったのに、最近では、何にでも興味を示し、すぐにつかんで口に入れようとする。人が食べているのを見るとよだれを流して食べたがる。それを汚いからと身の回りから遠ざけ、人が食べているところを見せまいとする。 私は、そんな親馬鹿に多いに疑問を呈したい。子供がミルクを飲むことと寝ること以外に興味を持ち始めたということは、人間としての成長を開始した大事な証だ。だから色々なおもちゃを与え、多いに好奇心を満足させ、なめ回させることが大事なのだ。最初はつかんではなめて放り投げることしかしないが、赤ちゃんの脳はフル回転だ。ただベッドの上で静かにしているのではなくて、多いに這い回って、手当たり次第にアタックして、そんな遊びから子供は学び、成長する。机の前で座ってやるのが勉強ではなくて、遊びが子供を成長させる最高の勉強でありトレーニングなのだ。 下の写真はベッドの中で何も与えれずにまるで檻に入れられているKIAN。せめてヨーグルトの容器をなめて好奇心を満たしている。 私の小言により、おもちゃを与えれらたKIANは嬌声を上げて喜んでいた。遊びでも、勉強でも、スポーツでも何でも楽しんでやることが大事で、楽しんでいるうちに自然と能力がついてくる。この時期、何もさせないで、静かにさせておくと、何にも興味を示さず、自ら成長することをしない木偶の棒になってしまう。下の写真のうれしそうな顔が証拠で、この時、KIANは人間として生まれてきた喜びを満喫しているはずだ。 人間として目覚めた赤ちゃんは、この時、何にでもなれる万能細胞で、人間でも、サルでも狼でも、環境に適合して何にでもなれる。だからこの時期、将来、人から尊敬され、人間社会で望まれる人格と能力を兼ね備えた人間になっていくための成長の礎を築いているとも言える。人には生まれつき持っている性格、能力、資質があるというが、私は、どうもこの時期にそれらの資質が形成されるのではないかという気がする。 一方、6ヶ月も過ぎると赤ちゃんは離乳食が必要で、これがミルクだけの食生活から卒業し、必要な栄養を食物から取り、同時にまた胃や腸、体の仕組みを成長させていく原動力になる。だから、赤ちゃんが食べたがるのは本能であって、それに答えて離乳食を与えることが、体の成長に欠かせないのだ。しかし、フィリピンでは2~3歳までほとんどミルクだけで成長し、幼稚園に行っても哺乳瓶を咥えているという。「子供がミルクを欲しがるから与える」というが、これはあきらかに母親の怠慢で、この時期、赤ちゃんが欲するものを無視して、そんな悪しき習慣を子供に押し付けているのだ。キアンが我々の食べるスープを与えられて、いかにそれを喜んでいるか、そして、もっとくれと要求するまなざしを見ていると、「ミルクを欲しがるから与え続けている」という、母親の証言は、母親の都合の良い作り話でしかないと実感する。