2011年11月19日、アロヨ元大統領が選挙法違反の罪で病院内で逮捕された。 アロヨは、その数日前から脊髄の病気を理由に海外への脱出を試みていたが、最高裁の出国監視の差止め命令に逆らって入管が出国を阻止し、この日の逮捕にいたった。罪状は2007年に行われた上院議員での選挙妨害ということだが、アロヨは在職時代から2006年の大統領選挙そのものの不正、エストラーダ前大統領の恩赦、幾多の賄賂等で在職時代から何度か政権崩壊の危機を迎え、なんとか乗り越えてきた。 アキノ現大統領はアロヨの不正を暴くことを公約に大統領選を戦ったが、アロヨによる妨害で、1年半を経てようやくこの日の逮捕にこぎつけた。特に最高裁の長官および15人の裁判官のうち12人までが、アロヨ政権による任命で、アロヨ側に加担していることが、ことの進展を妨害してきた。 1998年からアロヨは副大統領の座にあったが、2001年、エストラーダ前大統領を不正蓄財の罪で追い落とし(エドサ革命2)自らが政権の座についた。そして2006年の選挙では人気男優のフェルナンド・ポーに僅差で勝利し、9年の長きに及ぶ政権の座を維持した。この選挙についても不正が行われたとの告発がなされ、追訴される可能性も大きい。 エストラーダ前大統領、そしてアロヨ元大統領かつ現役の下院議員の2代続いた大統領の逮捕とあって新聞やテレビは連日、その報道に終始した。しかし、巷の反応は冷静で、来るべくして来た、といった感じで、他の国のようにアロヨを指示する一派と、アキノを支持する一派の戦いなどという構図はフィリピンでは成立しない。選挙で新しい大統領が選ばれて、彼が元大統領を法に則って告訴するというきわめて民主的かつ平和的にことが進められている。 ところで、先ごろ世界経済フォーラムが発表した135カ国の「男女格差報告書」によると、フィリピンは堂々8位にランクされ、東南アジアにおいては断トツだった。ちなみに日本は98位、トップは北欧諸国が占めている。先のアキノ前大統領、アロヨ大統領をはじめ、上院議員でもサンチャゴやレガルダなどの男勝りの議員が活躍している。巷でも銀行の支店長などはほとんど女性だ。フィリピンでは男女格差というのは女性が上位であることに対して使うこともあるくらいだ。 だから、たとえ女性の大統領といえども、不正選挙や汚職など、男性の政権トップと同等あるいはそれ以上にやってのけるらしい。