農場にはジェーンの甥と姪、それに自分の子供、総勢14人全員が勢ぞろいしているので、家の中は子供たちでいっぱいだ。フィリピンで、庶民の住宅地を覗いてみると、巷に子供があふれかえっている。まさにそんな状況がファームハウスでおきている。 お姉さんたちは、クリスマスのギフトの梱包に余念がない。バリクバヤンボックス程度の大きな段ボール2個分の衣類や靴、雑貨などを包むのは、なんと新聞紙、マニラ新聞だ。昨年より、経費節減のため、クリスマス用の包装紙の使用は中止した。ギフトは一人10個以上、これで1年分の衣類などが賄われるらしい。 ジェーンは、9月ごろから、休みごとに中華街のデビソリアに行って、クリスマスの買い物していた。そして、それを皆に配るクリスマスパーティがいよいよ間近に迫っているのだ。ちなみに、ファームでは12月31日に年末年始のパーティを兼ねてクリスマスパーティを開くのが恒例だ。 ケーブル・テレビではディズニーの漫画が24時間流れているので、子供達は、いつも夢中で見ている。もちろん字幕はないが、子供達は、生のアメリカ英語を理解しているようだ。KIANは多少理解している程度だろうが、5~6歳になるころには完全に理解できるようになってしまうのだろう。日本でもアメリカ映画の字幕の使用を法律で禁止したら、かなり英会話学習の意欲の向上と実践に役に立つのではないかと思う。 ヤヤがいないので、KIANの子守はもっぱら姉のキムの役割だ。食事中、何か歯に挟まってしまったようで、大きな口をあけて、姉に取ってほしいとせがむKIAN。 忠犬アイスがテーブルの下で、鼻をKIANに押しつけて、ソーセージをくれるようおねだりをしている。それが嫌で、大声をあげて泣き叫ぶKIAN。 男の子と小さな子供はギフト包みには関係ない。マスター・ベッド・ルームのベランダを占領して、遊びまわる。手すりに座って皆でポーズ。 KIANが糸トンボを見つけて、飛んできて、私に見せてくれた。農場には、ホタルなど忘れかけていた自然が生きている。 誰かがUNOというカード・ゲームを見つけ出して、私に使い方を聞いてきた。昔、私が日本から持ってきたやつだと思うが、使い方がわからないで、ほっておいたらしい。それがもともと息子の持ち物だと分かり、早速、息子に教わりながら、ゲームが始まった。トランプの大富豪のような遊びらしいが、それぞれの子供達のスマートさがわかるという。 小学校1年生、7歳のタムタムとヤナはゲームのやり方を理解できず、除外、泣きながら、仲間外れとなる。なにしろ、一回のゲームに1ペソかかっているので、皆必死だ。2年生のアレクサとアレアの双子は、なんとか合格、4年生のバレリーとアーランがなかなかの腕前らしい。左から、アレア、アレクサ、バレリー、アーラン、タムタム、ヤナの小学生6人組。右端のヤナはかなりの美形に写っている。ジェーンの次兄のアランの子供は概して色白の美形だ。 はとこのプロ歌手のチェムチェムとの初対面、手をおでこにあてて、正式な挨拶をするKIAN。 ジェーンの次兄の4人目の子供、上の3兄弟とは腹違いのヤナは、幼稚園から飛び級で小学校2年生に入学した才女だ。ただ、お母さんを癌で亡くし、お父さんは他の女と同棲したりして、子供の面倒をろくすっぽ見ないので、ここ数年、農場に預けられている。私の前ではいつも静かで、物悲しさを漂わせているが、息子の報告で、普段は活発で、やんちゃでマコリット(しつっこい)な、当たり前の子供であることが暴露された。 おでかけから帰ってきたKIANのやったことは、他の子供が使っていた絵本を取り上げて、その上に乗っかってダンスをすることだった。なんとも行儀が悪いが、KIANのやることはなんでも許される。ビアンカがキッチンで働いているとき、誰かが、後ろからぶったので、ビアンカは血相を変えて、タムタムっとどなった。振り返って見ると、それがKIANだったので、思わず笑顔に変わった。KIANがやることはなんでも可愛いと、許されるのだ。 再び、UNOゲームを楽しむ子供達。お金をかけるのは教育上、よろしくないと、マム・ジェーンのコメントが入ったので、今度は1ペソ足らずのスナック菓子を景品とした。一回のゲームに勝つとスナック菓子をもらえる。そうすると、皆、もらう度に食べてしまうそうだ。日本の子供だったら、ため込んで、後でゆっくり賞味すると思うのだが、フィリピンの子供は、そんなケチなことはしないで、さっさと消費してしまう。宵越しの金はもたないという、気風の良さを、子供の内から発揮する。やはり、冬がない熱帯に生まれると、冬に備えて食料を貯め込むという、生活の知恵、あるいは習慣とは無縁なのだろう。 普段は、キッチンが皆の食事どころだ。ダイニングのテーブルで食事を取ることは、われわれとマム・ジェーンがいる時かパーティの時ぐらいなものだ。 […]