サウス・スーパー・ハイウエイとブエンディ通りの交差点近辺、あるいはマカティ・アベニューを夜半に車で通りかかると、サンパギータ売りの少女が車から中を覗いて、手にしたサンパギータの首飾りを買って欲しいとねだる。ご承知の通り、サンパギータは国の花で、車の中に飾るといいジャスミンの香りが車中に広がる。こんな夜中にいまだ花を売り歩かなければならない境遇を哀れんで、つい財布の紐が緩む。昨夜、小銭がないのでタクシーの運ちゃんに20ペソを貸して欲しいと言ったら、拒否されてしまった。「花を買ってはいけない」というのだ。「かわいそうだから」というと、「そうではない」という。何か納得できない気持ちで帰ったが、何故いけないか、ジェーンの教えを請うた。 道端で客待ちをする少女達、カメラを構えるとなぜか顔を隠す。ジェーンは彼らが犯罪に寄与していることを自覚しているからだという。 ジェーンいわく、「サンパギータを売っている少女達はシンジケートに組み込まれていて、売り上げは皆バックの黒幕のものになる。彼らは子供達を利用してあくどい商売をしているのだ。また、夜中に車の窓を開けると間髪をいれずに大人が手を車中に突っ込んで、引ったくりやホールドアップをするから、きわめて危険だ。さらに外国人がお金をばら撒くと、この商売を助長することになり、ますます多くの子供たちが利用され、犠牲になる。だから花を買ってはいけない。」と、納得の行く説明をしてくれた。 バクララン教会前では大量のサンパギータを売っている。このおばさんはシンジケートとは関係はないのだろう。また、キアポやデビソリアでよく見かける買い物袋を売る子供達。これはきっと、親の商売のお手伝いjをしているに違いない。 マカティでもカラオケを出ると少女がバラに花を売っている。1本10ペソくらいで仕入れたものを100ペソで売っているのだろう。中で指名するGROにプレゼントをしてやれというところだが、彼らもシンジケートに組み込まれているという。確かに同伴したGROは黙っているだけで買ってやるように勧めない。しかし、バラの花売りの少女は比較的美形が多いのは何故だろう。 パソンタモのカラオケの前でバラの花を売る少女、そいてプエルトガレラのホワイトビーチで手編みのブレスレッドを売る少女。皆可愛い顔立ちをしている。 エルミタやマカティアベニューの繁華街には日中、乳飲み子を抱いてお金をねだるイタ(原住民の一種)のおばさんがいる。哀れそうなやせた顔と眠りこける赤ん坊で同情を引く作戦だが、彼らもシンジケートの一員だという。どこからか調達されてきた赤ん坊は猛暑の中でも眠りこけているが、薬物で眠らされているらしい。彼らにお金を与えることも単にシンジケートを潤わすだけで、犠牲となる赤ん坊を増やすだけだから、やってはいけないという。 島耕作の漫画で、インドではこのような子供達が観光客の同情を引くようにシンジケートに腕を切り落とされようとする場面で島耕作がその子を買い取るという話があった。それに近い状況がフィリピンにもあるようだ。