Monthly Archives: November 2012


  世界で一番長くクリスマスを祝う国として名高い(?)フィリピンだが、10月から始まった飾りつけも、クリスマスまで1ヵ月を切った11月末、街には嗜好をこらしたクリスマスツリーがあふれ、マカティを横断するアヤラ通りも新しいデザインの電飾が美しい。 毎日のように史上最高値を更新している平均株価に象徴されるフィリピン経済の好調は、必ずしも庶民の生活を潤しているようには思えないが、大統領府–マラカニヤン宮殿の前にも巨大なクリスマスツリーが飾られ、ご満悦のアキノ大統領が新聞の一面を飾っていた。 昨年は、なぜか実施されなかったが、国際都市–マカティの中心にある広大な緑地帯、アヤラトライアングルでは、壮大な電飾ショーが毎夜、30分毎に繰り返されている。この日は、この電飾ショーを見物するために、食事の後、KIANを連れて出かけていった。 ショーが始まるまで30分ほど待たされたが、KIANは、広々としたアヤラタワーの広場で、従妹のアレアと走り回っていた。電飾ショーが始まると、KIANは一体何が始まったのかと、きょとんとしていた。  音楽にあわせて電飾がめまぐるしく変化するショーそのものは、ほんの5分ほどだったが、帰り際、知らぬ間に広大な緑地帯は人で埋め尽くされていた。電飾の上にそびえるアヤラ財閥の象徴のアヤラタワーがいかにも大都市の様相を示している。動画が重過ぎて、アップロードできないのが残念だ。 マム・ジェーンが通うジムのあるRCBCプラザのロビーの飾りつけが見事だというので帰りに寄ってみた。そこにも中々ユニークなクリスマスツリーがそびえていた。 もうすぐ、クリスマス、人々は、この日が来るのを指折り数えて待ちわびて、一家の大黒柱を自負するマム達は、家族へのクリスマスギフトの買出しに余念がない。クリスマスが近づくと値が上がると、9月から問屋街のデビソリアで買い物にいそしんでいたマム・ジェーンは、すでにあらかたの買い物を終えてしまったようで、せっせと故郷のビコールに送りつけている。

アヤラ・トライアングルの電飾ショー見物 2012年11月30日


先日のロングステイフェアでは、退職者の希望するロングステイ先としてはマレーシアが6年連続一位で、フィリピンはベスト10に入ってはいるものの、下位に甘んじていた。しかし、永住という観点に立つと、フィリピンの優位性が目立つと感じる。そこで今回、物価の安さ、日本からの距離、日本人退職者の受け入れの積極性などを考慮して、永住先として、実質的に3強と考えられる3つの国、すなわち、マレーシア、タイ、そしてフィリピンの退職者用のビザの比較を行った。添付比較表参照。 1. 比較対照としたビザ フィリピン:特別居住退職者ビザ(SRRV)のスマイルプログラム マレーシア:マイセカンドホーム・プログラム タイ: ノンイミグラントO-A査証 2. 有効期限 フィリピン:無期限、永住(既得権として無期限に継続される) マレーシア:10年、更新可能だがその時点でビザ発行の要件(将来変更の可能性あり)を満たしていること タイ:一年、更新可能だが、その時点でビザ発行の要件(将来変更の可能性あり)を満たしてていること 3. ビザの取得要件と年齢制限 フィリピン:35歳以上 2万ドルの預託金 収入制限は無し マレーシア:50歳以上35万リンギット(約1000万円)の資産、および               15万リンギット(約430万円)の定期預金、                         […]

退職ビザの比較(フィリピン、マレーシア、タイ)2012年11月29日



 最近、NHKで「シングル・マザー」の番組をやっている。毎週、月曜日、沢口靖子が主役で、日本のシングル・マザーの困難な日常を追い、母親一人で、子育てをしていくことの難しさを描いている。往年の美人女優の沢口靖子がいかにも惨めな役をこなしているが、ちょっと見るに忍びがたい。おおかた、日本のシングル・マザーはこんな状況にあるのだろう。  私が、子供のころ、戦争で夫を亡くした母子が暮らす母子寮というのがあって、クラスに数人、そこから通っている生徒がいた。皆、なんとなく不潔で、一種独特な雰囲気をかもし出していた。小学校のまん前には、政府が貧困家庭に安価ないし無料で住宅を提供していた営団(エーダン)住宅あったが、フィリピンのスコーターほどではないにせよ、一種独特な雰囲気をもった街並みだった。戦後の日本経済の復興で、このような施設は姿を消していったが、シングル・マザーという形で復活し、200万人を超える生活保護を受ける人たちとともに、貧困層を再形成している。  日本では、高校生や、未婚の女性が妊娠すると、ほとんど宿った子供をおろしてしまうから、このような状況におかれる女性ははまれだろう。出産後、何らかの事情で、夫あるいはボーイ・フレンドと別れるような状況に陥った女性が、シングル・マザーになり、苦難の道を歩むのだろう。 自分専用の机に食事を持っていって、鳥のから揚げをピストルに見立てて、狙い撃ちをするKIAN  問題は、母親の家族はどうしているのか、ということだ。NHKの番組にしても、そこに母親の家族の姿は描かれていない。子供のおじいさんやおばあさん、あるいは母親の兄弟姉妹はシングル・マザーに手を差し伸べないのだろうか。たとえ父親がいないとしても、次代を担う立派な家族の一員であることには変わりはないはずなのにだ。  一方、堕胎が法律で許されず、宗教上避妊も憚れるフィリピンでは、女性が妊娠したら、出産する以外に方法はない。だから、フィリピンでは高校生など10代でシングル・マザーになるケースは枚挙にいとまがない。この世代の男は、ひたすらやりたいだけで、成人男子としての自覚はないし、扶養能力はない。だから、ガール・フレンドが妊娠したら、さっさと逃げてしまうのが通例だ。中にはパーティなどでよっぱらって寝込んだ女の子を集団でレイプして、誰が父親かもわからない、なんてけしからん話もある。 ヤヤと姉のKIM、従妹のALYAと食事にでかける KIAN。ママがでかけていなくてもヤヤや姉に囲まれて彼は幸せだ   したがって、花街の半数以上の女性はシングル・マザーと言っても過言ではなく、これらの女性は子供を養うために、たとえ、売春婦にまで身を落としたとしても、逞しく子供を養っている。しかし、母親が働いているとしたら、当の子供はどうしているのだろう。フィリピンでは、家族が赤ちゃんを宝物のように大事にするから、全く問題ない。母親が、花街で鼻の下の長いおやじの歓心をかっている間、しっかりと家族に見守られて、育っているのだ。  こんな女性の生きがいは子供だ。「男には、もうこりごりだ、二度とボーイ・フレンドなんかいらいない」、と口をそろえて彼女達は語る。そもそも、セックスそのものが子供を作ることが目的で、ボーイ・フレンドや結婚などは単なる子供をつくるための手段だから、女にとって、子供さえあれば、十分満足なのだろう。金のない亭主や無責任なボーイ・フレンドなどは無用の長物なのだろう。 腹違いの姉のKIMは若干16歳のカレッジ1年生だが、この年でシングルマザーになって花街に身を落とす女性もざらだ。彼女は父親のカーネルに厳しく監視され、携帯ももたせてもらえない、ボーイ・フレンドなんてもってのほかだ。  そもそも動物界では、メスは、さかりがつくとオスを迎え入れ、妊娠したら、オスなどは相手にしないばかりか、当のオスに対してでさえも子供を守るために牙をむく。所詮、オスは種付けだけのために存在しているのであって、カマキリのように、種付けを終わるとメスのえさになってしまうという、あわれなオスも存在するくらいだ。  シングル・マザーであろうがなかろうが、子供さえ無事に育てば、種(シュ)は維持される。カップルで子供を育てるか、母親だけで育てるかなどは、たまたま、その時代の慣習であり、種の保存にとってあまり本質的な問題ではない。フィリピンでは家族で子供を育てるから、シングル・マザーであろうがなかろうが、種は維持される。一方、堕胎や虐待で子供を殺し、生まれてきた子供はカップルでないと育てられない、なんていう日本は、日本民族という種を維持できるのかどうか、極めて疑問だ。

日比シングルマザーの悲哀 2012年11月28日


   2才を過ぎて、KIANの会話能力は目覚しい成長を遂げているが、着目すべきことは、周囲は、彼に英語で会話をさせようとしていることだ。彼は、近所の子供や、大人の会話から、すぐにタガログ語を覚えて来て使う。  たとえば、「後で」は、タガログ語で「ママヤ」と言うが、何か言われて、やりたくないとき、KIANは「ママヤ」と答える。そうすると、ママ・ジェーンは間髪を入れず、「LATER」と、切り返す。そうするとKIANは、とっさに「ママヤ、レイター」と言う。おまけに「ママヤ、レイター、アトデ」と、切り返すこともある。 パソコンのゲームや映画が大好きのKIAN  KIANは、あきらかに、それらの言葉が同義語であることを理解している。周囲は、彼に英語で話しかけることを心がけている。ヤヤ(子守)や姉のキム、従妹のアレア(7才)もしかりだ。ただし、私だけは、日本語と英語とタガログ語のちゃんぽんだ。KIANが2才で話し始めたころはタガログ語だけだったが、保育園に通うようになって、授業が英語であること、周囲の子供が英語を主体に話すことなどから、KIANの英語特訓も始まった。  特訓といっても、日常の会話を努めて英語にしているだけで、特別の勉強をしているわけではない。紙に文字で書いても理解できないから、当然のことではある。しかし、最近は英語主体で「Yaya very bad,  hit Kian 」などと、英語でママジェーンに嘘をつく始末だ。 最近は和食レストランの「サイカ」がお気に入りだ。    ママジェーンの英語での問いかけも十分理解しているようだ。 「Did you […]

KIAN 2歳と8ヶ月の英会話学習 2012年11月26日



フィリピンに入国する際には、長期ビザを持っていない限り、往復の航空券、しかも21日以内の出国便の予約がとれていないと原則、入国できない。仮に帰国予定が1ヵ月後だとすると、入国時に2ヶ月間有効のビザを申請すれば、大丈夫のはず(要確認)だが、いずれにせよ、オープンチケットだけでは具合が悪い。最近は、これを厳密に運用して、空港で、入国を拒否されるケースが頻繁に出ているようだ。  しかしながら、退職ビザなどの長期ビザを持っている場合は、片道チケットでも問題ない。フィリピンに在住している場合、フィリピンで往復チケットを買って、往復するのだから、日本からフィリピンに入る時は、当然のことながら、片道チケットとなる。  片道チケットでフィリピンに向う客に対しては、航空会社は厳密にビザの存在を吟味する。もし、長期ビザを持っていないで片道チケットでフィリピンへ入国する客が、入管で国外退去の命令を下されたら、航空会社の責任(経費)で、日本へ送り返さなければならないからだ。 セブパシフィック(関空)、ジェットスター(関空と成田)などの格安航空(LCC)の登場で、日本ーマニラの往復は選択肢が広がり、格段に便利になった    退職ビザを取得するためにフィリピンを訪問する場合も、例外ではない。たとえ、そのままフィリピンに滞在するつもりでも、往復のチケットで入国しなければならない。半年とか一年有効のチケットは10数万円もして、とても手が出ない。そのため、格安航空券を買って、帰りのチケットを捨てることになる。しかし、これをやると、JALなどの航空会社はブラックリストに載せて、以後、チケットをその客に販売しないなどと言う処置を取るのでややこしい。ビザ取得後一旦帰国する場合は、1ヶ月まで延長できるチケットか、格安航空の往復チケットで来るのが最適だ。  格安航空(LCC)は、日本で買ってもフィリピンで買っても値段は一緒だが、一般の航空券については、フィリピンでは、日本の格安航空券(往復FIX) 並みの値段で、ノーマルチケット(6ヶ月ないし1年間有効)が買える。日本でノーマルチケットを買ったら十数万円するので、2分の一から3分の一程度で買える事になる。また、逆にフィリピンでは日本で普通に売っている格安航空券は購入できない。だから、退職ビザ等の長期ビザを取得したら、フィリピンでノーマルチケットを買って日本との間を往復するのが有利だ。  退職ビザを取る前は往復の格安チケットでフィリピンに入り、今度はフィリピンで往復チケットを買って往復するとなると、格安往復チケットの帰りを捨てるか、あるいは、退職ビザを取ってから片道ノーマルチケット(片道の格安チケットは無い)でフィリピンに入るかという選択になる。通常、格安往復チケットの方が片道ノーマルチケットより安いので格安往復チッケットの帰りを捨てたほうが有利だ。 格安航空(LCC)のサービスはすべて有料で、しかも現金を扱わないので、事前に昼食などを買って入ったほうが良い。ただし、マニラ発では飲料の持込が許されない、一方成田からはOKなので、ちょっと戸惑うところだ   しかし、最近は格安航空会社(LCC)の登場で、日本からの片道チケットでも2万円程度で買えるようになった。したがって、退職ビザを取得したあと、LCCの片道チケットで入国して、その後、フィリピンで往復チケットを買って往復するのが、無駄もなく最適な選択となる。しかし、LCCは今のところ関空と成田しか飛んでいないので、すべての人が実行できるわけではないが。 格安航空(LCC)のチケットは往復で4万円程度で、4~6万円の格安航空券と大差がないようだが、LCCは変更のきくノーマルチケットであるという大いなる相違がある。10数万円のノーマルチケットと比べると3分の一以下で、格安である所以に納得させられる。格安空港が利用できる場合、日本とフィリピン、どちらでチケットを買ったとしても大差がなく、どちらに主に居住しているかに寄るだろう。   以上は一般論なので、最寄の空港、フィリピン滞在予定、日本とフィリピンの往復頻度などを加味してもっとも経済的な方法を個々に検討して欲しい。

航空チケットの賢い買い方ー退職ビザをとったら 2012年11月25日


    11月17日(土)、ロングステイ財団主催の「ロングステイフェア2012」に参加するために半年振りに日本を訪問した。当社、パスコは、財団公認の「マカティサロン」として、フィリピンにロングステイあるいは永住するための相談窓口として3回目の出展だ。今回は、前年を若干上回る、約9500人の来訪者を迎えたそうだ。参考HP 「http://www.dokodekurasu.jp/」 早朝出発するジェットスターは昼ごろ成田に到着する。伊豆半島の向こうには雪をかぶった富士を臨むことができた。   各国のサロンやロングステイアドバイザーの交流会が前日、フェアに先立って開催されたが、各国のサロンの報告を3分間で行うよう求められた。そこで「3Kから3Iへ」と称して下記のスピーチを行った。  従来、フィリピンにはまった一部の男達を除いて、フィリピンは、まさに3K、すなわち「危険」、「汚い」、「困窮」のイメージが一般的だった。フィリピンと聞けば、「ジャパ行き」、「売春」、「誘拐」、「保険金殺人」、「スモーキーマウンテン」位しか思い浮かばず、「フィリピンへ行く」と話すと、皆一様に顔をしかめたものだった。  しかしながら、最近は、フィリピンの退職ビザを取得する女性が増加し、特にお子様連れのママ達の「フィリピン行き」が目立つ。この方達は、日本の「放射能汚染」を危惧し、さらに日本の経済情勢をにらみ、子供達を「国際人」に育てたいと思っている。しかも、日本の社会情勢は、「虐待」、「いじめ」、「引きこもり」、「無差別殺人」など、子供を育てる環境にないと憂える。  ロングステイ財団がアレンジしてくれた、有明ワシントンホテルでは、全世界から駆けつけた、財団公認のサロン代表者が、まるで同窓会のように集まって近況を報告しあった。  そこで、ママ達が海外に目を向けて、冷静に分析すると、フィリピンは、「近い Chkai」、「安いYasui」、「親しいShitashii」の3I=3つのアイ(愛)の国であることに気がつく。 ① 近い:フィリピンは飛行機で4時間で、その気になれば日帰りもできる ② 安い: 米などの生活基本物資は日本の5分の一、さらに人件費は10分の一。退職者の平均的予算は一切を含めて、10万円/月で十分。この予算でお手伝いさんを住み込みで雇っている方もいる ③ 親しい:隣国の中国や韓国のように、日本を敵国とみなすという対日感情はなく、日本人に強い親しみをもつ優しい国民性、それに加えて国策として外国人の移住を奨励している 有明の象徴のビッグサイト。今回のフェアは1万人近くが訪れる大きなイベントだが、会場は、その一部の会議棟1階レセプションホールというから驚きだ  しかも、英米に次ぐ、世界で3番目に多くの人が英語をしゃべる英語圏で、法律、契約、新聞、領収書など、すべての公的文書には英語が使われている、すなわち公用語は英語なのだ。さらに学校の授業も小学校から基本的に英語で行われる。だから、英会話留学やお子さんの国際人としての教育も申し分ない環境がある。インターナショナルスクールの学費にしても年間20万~40万円程度で賄え、公立学校に至っては無料だ。英会話学校にしても3食付の寄宿舎と毎日マンツーマンの授業(4~6時間)を含めて十数万円/月で済む。 入り口に並んだロングステイのポスター。日本人も海外に住むという傾向は、今後ますます発展するだろう。 […]

ロングステイフェア2012開催-3Kから3Iへ 2012年11月24日



   若かりし学生時代、「人は何のために生きるのか」という命題に取り付かれていた。小学校、中学校、そして高校時代は、学業、受験に追われて、そんなことを考えるゆとりもなかった。そして大学に入り、親元を離れて自由になってきたとき、「自分は一体何のために生きているのだろう」という疑問をもち始めた。一生懸命勉強して、良い大学に入り、一流企業に就職することが、一体、何のためなのか。親の期待に答えるためなのか、自分の将来のためと親は言うが、納得できない。 街で見かけたGTR。前から見たら、見かけないスポーツカーだったが、後ろから見たら一目でわかった。幻の名車、ニッサンGTRだったのだ。フィリピンで買ったら雄に1000万円は超えると思うが、こんな車をあえて輸入して乗り回す人がいるのだ、と感心すること仕切りだった。   そしてたどり着いた結論が「人は何かのために生きるのではない、いかに生きるのか、が問題なのだ」というものだ。生は自分の意志で与えられたものではない、自分が今こうしているのは親の意志ではあろうが、誰もこの自分が生まれてくることは知らず、自分がこの世に生まれてきたのは、自然の営みと偶然の産物なのだ。それを、とやかく言っても始まらないから、生まれてきた以上は、いかに生きていくことが問題なのだ、と。 生後6ヶ月、70kgくらいで豚は短い一生を終え、人の胃袋に入るために、とさつ場に送られる。輸送は生きたままで行われるが、これが腐敗を防ぐ最も有効な運搬手段なのだ。 そして、息子が、そんな年になった時、私に質問してきた。「人は何のために生きるのだろう」。そして私は「若いころ、同じことを考えたが、結論は、人は何のために生きるのではなくて、いかに生きるかが問題なのだ」と答えた。それから、息子は二度と質問せず、なにか吹っ切れたような雰囲気だった。  ところが、老境の域に差し掛かった今、考えが変わってきた。「人はいかに生きるのかが問題だ」は、間違っていないとしても、より正確には「人は他人(ヒト)のために生きるのだ」が今の悟りだ。そして、「他人(ヒト)のためになってこそ、人生のいきがいであり、喜びなのだ」と。 保育園でKIANが製作した粘土の絵。自分自身で全部やったとは信じがたいが、KIAN、2歳と7ヶ月の傑作だ。  人は子供時代を終えると、まず興味を覚えるのが他人の女性だ。若いときの思い出は、ほとんど、女性が絡んでくる。ほれた女性に自分の一生をささげてもいい、なんて、しおらしい思いに駆られる。まさに他人のために生きる人生の始まりだ。彼女の気をひいて、彼女の愛を獲得して、我が物にすることに人生を賭ける。   そして、思いを遂げて結婚した後は、当然の成り行きとして、子供ができて、今度は、その子供のために全人生をかけようと、けなげな決心をする。他人のために生きる、第2弾だ。そして、子供が育って結婚し、孫ができると、その孫が生きがいになる。孫は子供よりも可愛いというが、それだけ人間として成長した証だろう。そして孫の成長を見届けて、生を終えるのだ。まさに一人前の大人に育った後は、他人(ヒト)のために生きる人生であり、他人(ヒト)の喜びが自分の喜びであり生きがいなのだ。  朝の9時にSMを覗いてみたら、入り口付近に惣菜が並んでいた。日本のデパートの主役はもはや、惣菜ともいえるぐらい、豊富で美しい、食欲をそそる惣菜が並んでいる。しかし、SMの惣菜は、お世辞にも食欲をそそるものではなかった。  しかし、姑と嫁が断絶してしまった日本の社会では、子供が結婚して独立してしまうと、生きがいを失い「私は何のために生きているのだろう、死ぬにはまだ早いし、これがどうやって生きていこうか」、と悩み始める。そんなとき、私は「人は他人(ヒト)ために生きるのだ」という話をする。そんな話を日本から来た女性と話をしているときに、マム・ジェーンに対して「人は何のために生きるのか」という問いを投げかけた。もちろん彼女は、それまで私達がどんな話をしていたか知らない。そして彼女の答えはいみじくも「People alive for other […]

人は何のために生きる 2012年11月11日


   先日、「日本を捨てた男たち」の著者でマニラ新聞の記者の水谷さんが取材協力を求めて事務所を訪問された。私がお世話した退職者でいろいろユニークな方々を紹介してほしい、というのだ。私の周りには水谷さんの著書に出てくるような困窮日本人はいないということを前置きして、最近の退職ビザを申請する方々の特徴を話した。 ①    申請者の半数近くは50歳未満の比較的若い方である。もちろん現役組だ ②    私とコンタクトをとり主体的に動いているのは奥さん(ご夫婦で申請の場合)あるいは独身ないし単身の女性。すなわち女性が半数に近く、しかも子育て真最中の方も多い ③    申請者の半数近くは、大学教授、医者、先生、大手上場会社勤務など社会的にステータスのある、あるいはあった人である ④    申請者の半数近くは退職ビザ取得のために初めてフィリピンを訪れた方々である。ビザの取得手続きをするために初めてフィリピンを訪問する方も多い  フィリピンで永住ビザを取る人は、「日本を捨てた男たち」に登場するようなジャパ行きさんの尻を追いかけてやってきた中年ないし熟年男性、あるいは老後を物価の安いフィリピンでゆったりと過ごすご夫婦、と大方の人は思っているに違いないが、少なくとも2万ドルの預託金を積んで退職ビザを取得する方々においては、これら中・熟年男性あるいはご夫婦は少数派になってしまった。 この話に水谷さんは大いに興味を持ち、是非これらの方々を紹介してほしいということになった。記事にするかどうかは別として話を聞いてみたいというのだ。さっそく、インタビューに応じてくれそうな方々にコンタクトをとってみたが、ほとんどの方が快く依頼に応じてくれた。 何か悩みでもあるのだろうか。オー・マイ・ゴッドのポーズをとるKIAN 水谷さんとは困窮日本人の話が続いたが、日本大使館は、これらの日本人が困窮に陥ったのは、自己責任を原則とし、必要以上の手を差し伸べない、せいぜい、日本にいる家族にコンタクトを取って、帰国費用の支援を求めるだけだ。しかし、あんな息子、あんな親、あるいは、あんな兄弟には、愛想をつかしているから、勝手にしてほしい、というのがほとんどの家族の回答だそうだ。また、彼らは、例え日本に帰ったとしても生活の目処は立たず、このまま、フィリピン人の世話になるしか手は無いという。 そして、大使館の邦人保護の担当官は、女の尻を追いかけてフィリピンにやってきて、持ち金を使い果たして困窮に陥るのは、自己責任の世界で、何のゆかりもないフィリピンの人々に迷惑をかけて申し訳ないとコメントする。この「迷惑をかける」という言葉に、私は、「かちっと」来た。困り果てている人に対して、支援することが、「迷惑をかける」という感覚だ。一方、日本の家族は、例え家族だとしても、この迷惑な依頼に拒否反応を示す。そして縁もゆかりもない人々に迷惑をかけていることを意に介しない。 我々日本人は子供のころから「人に迷惑をかけてはいけない」、「他人様、世間様に迷惑をかけないで生きていくことが美徳なのだ」と教えられてきた。だから、自殺する人の遺書には「迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」とつづるのが定石だ。世間や家族への恨みやつらみよりも、世間にかける迷惑を詫びるのが先決なのだ。E-メールでも英語では「JUNK MAIL、ごみメール」が日本語では「迷惑メール」となってしまう。 お気に入りのトラックの写真を撮るKIAN。最近はカメラを構えるとすぐに自分で写真を撮ろうとする。 しかし、フィリピンの人は困った人を助けるのは決して迷惑とは思っていない。困った人を助けるのは、人間としての義務であり喜びだと思っている。それが家族だとしたら、快く、自分の三度の食事も削って喜んで支援する。家族の範囲は親や子どもはもちろん、兄弟、兄弟の配偶者、配偶者の兄弟にまで及び、その数は数十人に達することもあった、としてもだ。  […]

「他人(ヒト)に迷惑をかけない」のは果たして美徳なのか 2012年11月5日



    11月1日(木)は万世節(All Saint Days)ですべての死者が聖人となり、現世によみがえり家族と再会できる日だ。今年は翌日の2日(金)も休みとなり、土日を含めて大型4連休を利用して里帰りをする人で飛行場はあふれた。普段と違って赤子連れが多く、機内は赤ん坊の泣き声が絶えなかった。  レガスピ空港からタバコへ向かうタクシー窓からは、すでに墓場へ向かう人の列を見ることができた。そのため主要道路が閉鎖され迂回路を回らなければならなかったが、タクシーの運転手は地元ではないので、道に迷うことしばしばだった。   今回は私だけの訪問だったので、その夜、あえて喧騒の街へ出ることはやめて農場でおとなしく過ごした。ファームハウスの入り口にはろうそくが灯され、辛うじて万世節の雰囲気を味わった。ろうそくは死んだ家族の本数たてられるというが、8本のろうそくが誰を指しているのかあえて聞かなかった。ここではマムジェーンの兄の子供、ヤナ(8歳)を預かっているが、母親は数年前に癌で他界しているので、このうちの一本は彼女のものだろう。 さて、農場にしばらく滞在している息子が黒豚の放牧飼育をするのだと、準備を始めていた。黒豚は食肉用の白い豚と違い原種に近いので、イモやその葉っぱなどを主食とし、飼料を買う必要がない。ちなみに白い豚はイモなどをやると下痢を起こしてしまうという、なんともやわだ。さらに、普通の豚は雨に当たると死んでしまうそうだが、黒豚は表で飼うこともでき、肉も脂肪が薄くヘルシーだそうだ。「ビバリーファームの健康豚肉」なんてブランド売りに出したら当たるかもしれない。  一匹の子豚が5000ペソというのを2頭で6000ペソに値切って買い求めた。普通の豚ならせいぜい、1頭1500~2000ペソだから、だいぶ割高だ。この2頭を種豚と母豚に育てて、その後、子豚をネズミ算式に増やそうという算段だ。しかし、その分、イモ畑を増やさなければならないが、今のところ土地はいくらでもある。 黒豚の放牧に選んだのが入り口付近の2000平米ほどのピリナッツの林だ。5年ほど前に植えたピリナッツの苗が5mほどに育って、そろそろ動物を入れても葉を食べられたり、倒されそうにない。 ピリナッツとはビコール地方の特産品で、やわらかめのナッツで、ビコールにはピリという市もあるくらいだ。木の実がそろそろなり始めて、楽しみにしているが、このピリの木の下の木陰を黒豚が走り回るという算段だ。  かつてここにはオーストリッチとウサギを飼っていたが、その時フェンスに使った数本の丸太が根付いてしまい、今では15mくらいの巨木に育ってしまった。これが景観を邪魔して、さらにピリなどの木の日当たりを悪くしているので、切り倒すことにした。  そこで、マムジェーンから横やりが入った。大きな木を切り倒すには、例外なくDENR(Department of Environment and […]

黒豚の放牧飼育に挑戦 2012年11月5日