Yearly Archives: 2012


先日のロングステイフェアでは、退職者の希望するロングステイ先としてはマレーシアが6年連続一位で、フィリピンはベスト10に入ってはいるものの、下位に甘んじていた。しかし、永住という観点に立つと、フィリピンの優位性が目立つと感じる。そこで今回、物価の安さ、日本からの距離、日本人退職者の受け入れの積極性などを考慮して、永住先として、実質的に3強と考えられる3つの国、すなわち、マレーシア、タイ、そしてフィリピンの退職者用のビザの比較を行った。添付比較表参照。 1. 比較対照としたビザ フィリピン:特別居住退職者ビザ(SRRV)のスマイルプログラム マレーシア:マイセカンドホーム・プログラム タイ: ノンイミグラントO-A査証 2. 有効期限 フィリピン:無期限、永住(既得権として無期限に継続される) マレーシア:10年、更新可能だがその時点でビザ発行の要件(将来変更の可能性あり)を満たしていること タイ:一年、更新可能だが、その時点でビザ発行の要件(将来変更の可能性あり)を満たしてていること 3. ビザの取得要件と年齢制限 フィリピン:35歳以上 2万ドルの預託金 収入制限は無し マレーシア:50歳以上35万リンギット(約1000万円)の資産、および               15万リンギット(約430万円)の定期預金、                         […]

退職ビザの比較(フィリピン、マレーシア、タイ)2012年11月29日


 最近、NHKで「シングル・マザー」の番組をやっている。毎週、月曜日、沢口靖子が主役で、日本のシングル・マザーの困難な日常を追い、母親一人で、子育てをしていくことの難しさを描いている。往年の美人女優の沢口靖子がいかにも惨めな役をこなしているが、ちょっと見るに忍びがたい。おおかた、日本のシングル・マザーはこんな状況にあるのだろう。  私が、子供のころ、戦争で夫を亡くした母子が暮らす母子寮というのがあって、クラスに数人、そこから通っている生徒がいた。皆、なんとなく不潔で、一種独特な雰囲気をかもし出していた。小学校のまん前には、政府が貧困家庭に安価ないし無料で住宅を提供していた営団(エーダン)住宅あったが、フィリピンのスコーターほどではないにせよ、一種独特な雰囲気をもった街並みだった。戦後の日本経済の復興で、このような施設は姿を消していったが、シングル・マザーという形で復活し、200万人を超える生活保護を受ける人たちとともに、貧困層を再形成している。  日本では、高校生や、未婚の女性が妊娠すると、ほとんど宿った子供をおろしてしまうから、このような状況におかれる女性ははまれだろう。出産後、何らかの事情で、夫あるいはボーイ・フレンドと別れるような状況に陥った女性が、シングル・マザーになり、苦難の道を歩むのだろう。 自分専用の机に食事を持っていって、鳥のから揚げをピストルに見立てて、狙い撃ちをするKIAN  問題は、母親の家族はどうしているのか、ということだ。NHKの番組にしても、そこに母親の家族の姿は描かれていない。子供のおじいさんやおばあさん、あるいは母親の兄弟姉妹はシングル・マザーに手を差し伸べないのだろうか。たとえ父親がいないとしても、次代を担う立派な家族の一員であることには変わりはないはずなのにだ。  一方、堕胎が法律で許されず、宗教上避妊も憚れるフィリピンでは、女性が妊娠したら、出産する以外に方法はない。だから、フィリピンでは高校生など10代でシングル・マザーになるケースは枚挙にいとまがない。この世代の男は、ひたすらやりたいだけで、成人男子としての自覚はないし、扶養能力はない。だから、ガール・フレンドが妊娠したら、さっさと逃げてしまうのが通例だ。中にはパーティなどでよっぱらって寝込んだ女の子を集団でレイプして、誰が父親かもわからない、なんてけしからん話もある。 ヤヤと姉のKIM、従妹のALYAと食事にでかける KIAN。ママがでかけていなくてもヤヤや姉に囲まれて彼は幸せだ   したがって、花街の半数以上の女性はシングル・マザーと言っても過言ではなく、これらの女性は子供を養うために、たとえ、売春婦にまで身を落としたとしても、逞しく子供を養っている。しかし、母親が働いているとしたら、当の子供はどうしているのだろう。フィリピンでは、家族が赤ちゃんを宝物のように大事にするから、全く問題ない。母親が、花街で鼻の下の長いおやじの歓心をかっている間、しっかりと家族に見守られて、育っているのだ。  こんな女性の生きがいは子供だ。「男には、もうこりごりだ、二度とボーイ・フレンドなんかいらいない」、と口をそろえて彼女達は語る。そもそも、セックスそのものが子供を作ることが目的で、ボーイ・フレンドや結婚などは単なる子供をつくるための手段だから、女にとって、子供さえあれば、十分満足なのだろう。金のない亭主や無責任なボーイ・フレンドなどは無用の長物なのだろう。 腹違いの姉のKIMは若干16歳のカレッジ1年生だが、この年でシングルマザーになって花街に身を落とす女性もざらだ。彼女は父親のカーネルに厳しく監視され、携帯ももたせてもらえない、ボーイ・フレンドなんてもってのほかだ。  そもそも動物界では、メスは、さかりがつくとオスを迎え入れ、妊娠したら、オスなどは相手にしないばかりか、当のオスに対してでさえも子供を守るために牙をむく。所詮、オスは種付けだけのために存在しているのであって、カマキリのように、種付けを終わるとメスのえさになってしまうという、あわれなオスも存在するくらいだ。  シングル・マザーであろうがなかろうが、子供さえ無事に育てば、種(シュ)は維持される。カップルで子供を育てるか、母親だけで育てるかなどは、たまたま、その時代の慣習であり、種の保存にとってあまり本質的な問題ではない。フィリピンでは家族で子供を育てるから、シングル・マザーであろうがなかろうが、種は維持される。一方、堕胎や虐待で子供を殺し、生まれてきた子供はカップルでないと育てられない、なんていう日本は、日本民族という種を維持できるのかどうか、極めて疑問だ。

日比シングルマザーの悲哀 2012年11月28日



   2才を過ぎて、KIANの会話能力は目覚しい成長を遂げているが、着目すべきことは、周囲は、彼に英語で会話をさせようとしていることだ。彼は、近所の子供や、大人の会話から、すぐにタガログ語を覚えて来て使う。  たとえば、「後で」は、タガログ語で「ママヤ」と言うが、何か言われて、やりたくないとき、KIANは「ママヤ」と答える。そうすると、ママ・ジェーンは間髪を入れず、「LATER」と、切り返す。そうするとKIANは、とっさに「ママヤ、レイター」と言う。おまけに「ママヤ、レイター、アトデ」と、切り返すこともある。 パソコンのゲームや映画が大好きのKIAN  KIANは、あきらかに、それらの言葉が同義語であることを理解している。周囲は、彼に英語で話しかけることを心がけている。ヤヤ(子守)や姉のキム、従妹のアレア(7才)もしかりだ。ただし、私だけは、日本語と英語とタガログ語のちゃんぽんだ。KIANが2才で話し始めたころはタガログ語だけだったが、保育園に通うようになって、授業が英語であること、周囲の子供が英語を主体に話すことなどから、KIANの英語特訓も始まった。  特訓といっても、日常の会話を努めて英語にしているだけで、特別の勉強をしているわけではない。紙に文字で書いても理解できないから、当然のことではある。しかし、最近は英語主体で「Yaya very bad,  hit Kian 」などと、英語でママジェーンに嘘をつく始末だ。 最近は和食レストランの「サイカ」がお気に入りだ。    ママジェーンの英語での問いかけも十分理解しているようだ。 「Did you […]

KIAN 2歳と8ヶ月の英会話学習 2012年11月26日


フィリピンに入国する際には、長期ビザを持っていない限り、往復の航空券、しかも21日以内の出国便の予約がとれていないと原則、入国できない。仮に帰国予定が1ヵ月後だとすると、入国時に2ヶ月間有効のビザを申請すれば、大丈夫のはず(要確認)だが、いずれにせよ、オープンチケットだけでは具合が悪い。最近は、これを厳密に運用して、空港で、入国を拒否されるケースが頻繁に出ているようだ。  しかしながら、退職ビザなどの長期ビザを持っている場合は、片道チケットでも問題ない。フィリピンに在住している場合、フィリピンで往復チケットを買って、往復するのだから、日本からフィリピンに入る時は、当然のことながら、片道チケットとなる。  片道チケットでフィリピンに向う客に対しては、航空会社は厳密にビザの存在を吟味する。もし、長期ビザを持っていないで片道チケットでフィリピンへ入国する客が、入管で国外退去の命令を下されたら、航空会社の責任(経費)で、日本へ送り返さなければならないからだ。 セブパシフィック(関空)、ジェットスター(関空と成田)などの格安航空(LCC)の登場で、日本ーマニラの往復は選択肢が広がり、格段に便利になった    退職ビザを取得するためにフィリピンを訪問する場合も、例外ではない。たとえ、そのままフィリピンに滞在するつもりでも、往復のチケットで入国しなければならない。半年とか一年有効のチケットは10数万円もして、とても手が出ない。そのため、格安航空券を買って、帰りのチケットを捨てることになる。しかし、これをやると、JALなどの航空会社はブラックリストに載せて、以後、チケットをその客に販売しないなどと言う処置を取るのでややこしい。ビザ取得後一旦帰国する場合は、1ヶ月まで延長できるチケットか、格安航空の往復チケットで来るのが最適だ。  格安航空(LCC)は、日本で買ってもフィリピンで買っても値段は一緒だが、一般の航空券については、フィリピンでは、日本の格安航空券(往復FIX) 並みの値段で、ノーマルチケット(6ヶ月ないし1年間有効)が買える。日本でノーマルチケットを買ったら十数万円するので、2分の一から3分の一程度で買える事になる。また、逆にフィリピンでは日本で普通に売っている格安航空券は購入できない。だから、退職ビザ等の長期ビザを取得したら、フィリピンでノーマルチケットを買って日本との間を往復するのが有利だ。  退職ビザを取る前は往復の格安チケットでフィリピンに入り、今度はフィリピンで往復チケットを買って往復するとなると、格安往復チケットの帰りを捨てるか、あるいは、退職ビザを取ってから片道ノーマルチケット(片道の格安チケットは無い)でフィリピンに入るかという選択になる。通常、格安往復チケットの方が片道ノーマルチケットより安いので格安往復チッケットの帰りを捨てたほうが有利だ。 格安航空(LCC)のサービスはすべて有料で、しかも現金を扱わないので、事前に昼食などを買って入ったほうが良い。ただし、マニラ発では飲料の持込が許されない、一方成田からはOKなので、ちょっと戸惑うところだ   しかし、最近は格安航空会社(LCC)の登場で、日本からの片道チケットでも2万円程度で買えるようになった。したがって、退職ビザを取得したあと、LCCの片道チケットで入国して、その後、フィリピンで往復チケットを買って往復するのが、無駄もなく最適な選択となる。しかし、LCCは今のところ関空と成田しか飛んでいないので、すべての人が実行できるわけではないが。 格安航空(LCC)のチケットは往復で4万円程度で、4~6万円の格安航空券と大差がないようだが、LCCは変更のきくノーマルチケットであるという大いなる相違がある。10数万円のノーマルチケットと比べると3分の一以下で、格安である所以に納得させられる。格安空港が利用できる場合、日本とフィリピン、どちらでチケットを買ったとしても大差がなく、どちらに主に居住しているかに寄るだろう。   以上は一般論なので、最寄の空港、フィリピン滞在予定、日本とフィリピンの往復頻度などを加味してもっとも経済的な方法を個々に検討して欲しい。

航空チケットの賢い買い方ー退職ビザをとったら 2012年11月25日



    11月17日(土)、ロングステイ財団主催の「ロングステイフェア2012」に参加するために半年振りに日本を訪問した。当社、パスコは、財団公認の「マカティサロン」として、フィリピンにロングステイあるいは永住するための相談窓口として3回目の出展だ。今回は、前年を若干上回る、約9500人の来訪者を迎えたそうだ。参考HP 「http://www.dokodekurasu.jp/」 早朝出発するジェットスターは昼ごろ成田に到着する。伊豆半島の向こうには雪をかぶった富士を臨むことができた。   各国のサロンやロングステイアドバイザーの交流会が前日、フェアに先立って開催されたが、各国のサロンの報告を3分間で行うよう求められた。そこで「3Kから3Iへ」と称して下記のスピーチを行った。  従来、フィリピンにはまった一部の男達を除いて、フィリピンは、まさに3K、すなわち「危険」、「汚い」、「困窮」のイメージが一般的だった。フィリピンと聞けば、「ジャパ行き」、「売春」、「誘拐」、「保険金殺人」、「スモーキーマウンテン」位しか思い浮かばず、「フィリピンへ行く」と話すと、皆一様に顔をしかめたものだった。  しかしながら、最近は、フィリピンの退職ビザを取得する女性が増加し、特にお子様連れのママ達の「フィリピン行き」が目立つ。この方達は、日本の「放射能汚染」を危惧し、さらに日本の経済情勢をにらみ、子供達を「国際人」に育てたいと思っている。しかも、日本の社会情勢は、「虐待」、「いじめ」、「引きこもり」、「無差別殺人」など、子供を育てる環境にないと憂える。  ロングステイ財団がアレンジしてくれた、有明ワシントンホテルでは、全世界から駆けつけた、財団公認のサロン代表者が、まるで同窓会のように集まって近況を報告しあった。  そこで、ママ達が海外に目を向けて、冷静に分析すると、フィリピンは、「近い Chkai」、「安いYasui」、「親しいShitashii」の3I=3つのアイ(愛)の国であることに気がつく。 ① 近い:フィリピンは飛行機で4時間で、その気になれば日帰りもできる ② 安い: 米などの生活基本物資は日本の5分の一、さらに人件費は10分の一。退職者の平均的予算は一切を含めて、10万円/月で十分。この予算でお手伝いさんを住み込みで雇っている方もいる ③ 親しい:隣国の中国や韓国のように、日本を敵国とみなすという対日感情はなく、日本人に強い親しみをもつ優しい国民性、それに加えて国策として外国人の移住を奨励している 有明の象徴のビッグサイト。今回のフェアは1万人近くが訪れる大きなイベントだが、会場は、その一部の会議棟1階レセプションホールというから驚きだ  しかも、英米に次ぐ、世界で3番目に多くの人が英語をしゃべる英語圏で、法律、契約、新聞、領収書など、すべての公的文書には英語が使われている、すなわち公用語は英語なのだ。さらに学校の授業も小学校から基本的に英語で行われる。だから、英会話留学やお子さんの国際人としての教育も申し分ない環境がある。インターナショナルスクールの学費にしても年間20万~40万円程度で賄え、公立学校に至っては無料だ。英会話学校にしても3食付の寄宿舎と毎日マンツーマンの授業(4~6時間)を含めて十数万円/月で済む。 入り口に並んだロングステイのポスター。日本人も海外に住むという傾向は、今後ますます発展するだろう。 […]

ロングステイフェア2012開催-3Kから3Iへ 2012年11月24日


   若かりし学生時代、「人は何のために生きるのか」という命題に取り付かれていた。小学校、中学校、そして高校時代は、学業、受験に追われて、そんなことを考えるゆとりもなかった。そして大学に入り、親元を離れて自由になってきたとき、「自分は一体何のために生きているのだろう」という疑問をもち始めた。一生懸命勉強して、良い大学に入り、一流企業に就職することが、一体、何のためなのか。親の期待に答えるためなのか、自分の将来のためと親は言うが、納得できない。 街で見かけたGTR。前から見たら、見かけないスポーツカーだったが、後ろから見たら一目でわかった。幻の名車、ニッサンGTRだったのだ。フィリピンで買ったら雄に1000万円は超えると思うが、こんな車をあえて輸入して乗り回す人がいるのだ、と感心すること仕切りだった。   そしてたどり着いた結論が「人は何かのために生きるのではない、いかに生きるのか、が問題なのだ」というものだ。生は自分の意志で与えられたものではない、自分が今こうしているのは親の意志ではあろうが、誰もこの自分が生まれてくることは知らず、自分がこの世に生まれてきたのは、自然の営みと偶然の産物なのだ。それを、とやかく言っても始まらないから、生まれてきた以上は、いかに生きていくことが問題なのだ、と。 生後6ヶ月、70kgくらいで豚は短い一生を終え、人の胃袋に入るために、とさつ場に送られる。輸送は生きたままで行われるが、これが腐敗を防ぐ最も有効な運搬手段なのだ。 そして、息子が、そんな年になった時、私に質問してきた。「人は何のために生きるのだろう」。そして私は「若いころ、同じことを考えたが、結論は、人は何のために生きるのではなくて、いかに生きるかが問題なのだ」と答えた。それから、息子は二度と質問せず、なにか吹っ切れたような雰囲気だった。  ところが、老境の域に差し掛かった今、考えが変わってきた。「人はいかに生きるのかが問題だ」は、間違っていないとしても、より正確には「人は他人(ヒト)のために生きるのだ」が今の悟りだ。そして、「他人(ヒト)のためになってこそ、人生のいきがいであり、喜びなのだ」と。 保育園でKIANが製作した粘土の絵。自分自身で全部やったとは信じがたいが、KIAN、2歳と7ヶ月の傑作だ。  人は子供時代を終えると、まず興味を覚えるのが他人の女性だ。若いときの思い出は、ほとんど、女性が絡んでくる。ほれた女性に自分の一生をささげてもいい、なんて、しおらしい思いに駆られる。まさに他人のために生きる人生の始まりだ。彼女の気をひいて、彼女の愛を獲得して、我が物にすることに人生を賭ける。   そして、思いを遂げて結婚した後は、当然の成り行きとして、子供ができて、今度は、その子供のために全人生をかけようと、けなげな決心をする。他人のために生きる、第2弾だ。そして、子供が育って結婚し、孫ができると、その孫が生きがいになる。孫は子供よりも可愛いというが、それだけ人間として成長した証だろう。そして孫の成長を見届けて、生を終えるのだ。まさに一人前の大人に育った後は、他人(ヒト)のために生きる人生であり、他人(ヒト)の喜びが自分の喜びであり生きがいなのだ。  朝の9時にSMを覗いてみたら、入り口付近に惣菜が並んでいた。日本のデパートの主役はもはや、惣菜ともいえるぐらい、豊富で美しい、食欲をそそる惣菜が並んでいる。しかし、SMの惣菜は、お世辞にも食欲をそそるものではなかった。  しかし、姑と嫁が断絶してしまった日本の社会では、子供が結婚して独立してしまうと、生きがいを失い「私は何のために生きているのだろう、死ぬにはまだ早いし、これがどうやって生きていこうか」、と悩み始める。そんなとき、私は「人は他人(ヒト)ために生きるのだ」という話をする。そんな話を日本から来た女性と話をしているときに、マム・ジェーンに対して「人は何のために生きるのか」という問いを投げかけた。もちろん彼女は、それまで私達がどんな話をしていたか知らない。そして彼女の答えはいみじくも「People alive for other […]

人は何のために生きる 2012年11月11日



   先日、「日本を捨てた男たち」の著者でマニラ新聞の記者の水谷さんが取材協力を求めて事務所を訪問された。私がお世話した退職者でいろいろユニークな方々を紹介してほしい、というのだ。私の周りには水谷さんの著書に出てくるような困窮日本人はいないということを前置きして、最近の退職ビザを申請する方々の特徴を話した。 ①    申請者の半数近くは50歳未満の比較的若い方である。もちろん現役組だ ②    私とコンタクトをとり主体的に動いているのは奥さん(ご夫婦で申請の場合)あるいは独身ないし単身の女性。すなわち女性が半数に近く、しかも子育て真最中の方も多い ③    申請者の半数近くは、大学教授、医者、先生、大手上場会社勤務など社会的にステータスのある、あるいはあった人である ④    申請者の半数近くは退職ビザ取得のために初めてフィリピンを訪れた方々である。ビザの取得手続きをするために初めてフィリピンを訪問する方も多い  フィリピンで永住ビザを取る人は、「日本を捨てた男たち」に登場するようなジャパ行きさんの尻を追いかけてやってきた中年ないし熟年男性、あるいは老後を物価の安いフィリピンでゆったりと過ごすご夫婦、と大方の人は思っているに違いないが、少なくとも2万ドルの預託金を積んで退職ビザを取得する方々においては、これら中・熟年男性あるいはご夫婦は少数派になってしまった。 この話に水谷さんは大いに興味を持ち、是非これらの方々を紹介してほしいということになった。記事にするかどうかは別として話を聞いてみたいというのだ。さっそく、インタビューに応じてくれそうな方々にコンタクトをとってみたが、ほとんどの方が快く依頼に応じてくれた。 何か悩みでもあるのだろうか。オー・マイ・ゴッドのポーズをとるKIAN 水谷さんとは困窮日本人の話が続いたが、日本大使館は、これらの日本人が困窮に陥ったのは、自己責任を原則とし、必要以上の手を差し伸べない、せいぜい、日本にいる家族にコンタクトを取って、帰国費用の支援を求めるだけだ。しかし、あんな息子、あんな親、あるいは、あんな兄弟には、愛想をつかしているから、勝手にしてほしい、というのがほとんどの家族の回答だそうだ。また、彼らは、例え日本に帰ったとしても生活の目処は立たず、このまま、フィリピン人の世話になるしか手は無いという。 そして、大使館の邦人保護の担当官は、女の尻を追いかけてフィリピンにやってきて、持ち金を使い果たして困窮に陥るのは、自己責任の世界で、何のゆかりもないフィリピンの人々に迷惑をかけて申し訳ないとコメントする。この「迷惑をかける」という言葉に、私は、「かちっと」来た。困り果てている人に対して、支援することが、「迷惑をかける」という感覚だ。一方、日本の家族は、例え家族だとしても、この迷惑な依頼に拒否反応を示す。そして縁もゆかりもない人々に迷惑をかけていることを意に介しない。 我々日本人は子供のころから「人に迷惑をかけてはいけない」、「他人様、世間様に迷惑をかけないで生きていくことが美徳なのだ」と教えられてきた。だから、自殺する人の遺書には「迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」とつづるのが定石だ。世間や家族への恨みやつらみよりも、世間にかける迷惑を詫びるのが先決なのだ。E-メールでも英語では「JUNK MAIL、ごみメール」が日本語では「迷惑メール」となってしまう。 お気に入りのトラックの写真を撮るKIAN。最近はカメラを構えるとすぐに自分で写真を撮ろうとする。 しかし、フィリピンの人は困った人を助けるのは決して迷惑とは思っていない。困った人を助けるのは、人間としての義務であり喜びだと思っている。それが家族だとしたら、快く、自分の三度の食事も削って喜んで支援する。家族の範囲は親や子どもはもちろん、兄弟、兄弟の配偶者、配偶者の兄弟にまで及び、その数は数十人に達することもあった、としてもだ。  […]

「他人(ヒト)に迷惑をかけない」のは果たして美徳なのか 2012年11月5日


    11月1日(木)は万世節(All Saint Days)ですべての死者が聖人となり、現世によみがえり家族と再会できる日だ。今年は翌日の2日(金)も休みとなり、土日を含めて大型4連休を利用して里帰りをする人で飛行場はあふれた。普段と違って赤子連れが多く、機内は赤ん坊の泣き声が絶えなかった。  レガスピ空港からタバコへ向かうタクシー窓からは、すでに墓場へ向かう人の列を見ることができた。そのため主要道路が閉鎖され迂回路を回らなければならなかったが、タクシーの運転手は地元ではないので、道に迷うことしばしばだった。   今回は私だけの訪問だったので、その夜、あえて喧騒の街へ出ることはやめて農場でおとなしく過ごした。ファームハウスの入り口にはろうそくが灯され、辛うじて万世節の雰囲気を味わった。ろうそくは死んだ家族の本数たてられるというが、8本のろうそくが誰を指しているのかあえて聞かなかった。ここではマムジェーンの兄の子供、ヤナ(8歳)を預かっているが、母親は数年前に癌で他界しているので、このうちの一本は彼女のものだろう。 さて、農場にしばらく滞在している息子が黒豚の放牧飼育をするのだと、準備を始めていた。黒豚は食肉用の白い豚と違い原種に近いので、イモやその葉っぱなどを主食とし、飼料を買う必要がない。ちなみに白い豚はイモなどをやると下痢を起こしてしまうという、なんともやわだ。さらに、普通の豚は雨に当たると死んでしまうそうだが、黒豚は表で飼うこともでき、肉も脂肪が薄くヘルシーだそうだ。「ビバリーファームの健康豚肉」なんてブランド売りに出したら当たるかもしれない。  一匹の子豚が5000ペソというのを2頭で6000ペソに値切って買い求めた。普通の豚ならせいぜい、1頭1500~2000ペソだから、だいぶ割高だ。この2頭を種豚と母豚に育てて、その後、子豚をネズミ算式に増やそうという算段だ。しかし、その分、イモ畑を増やさなければならないが、今のところ土地はいくらでもある。 黒豚の放牧に選んだのが入り口付近の2000平米ほどのピリナッツの林だ。5年ほど前に植えたピリナッツの苗が5mほどに育って、そろそろ動物を入れても葉を食べられたり、倒されそうにない。 ピリナッツとはビコール地方の特産品で、やわらかめのナッツで、ビコールにはピリという市もあるくらいだ。木の実がそろそろなり始めて、楽しみにしているが、このピリの木の下の木陰を黒豚が走り回るという算段だ。  かつてここにはオーストリッチとウサギを飼っていたが、その時フェンスに使った数本の丸太が根付いてしまい、今では15mくらいの巨木に育ってしまった。これが景観を邪魔して、さらにピリなどの木の日当たりを悪くしているので、切り倒すことにした。  そこで、マムジェーンから横やりが入った。大きな木を切り倒すには、例外なくDENR(Department of Environment and […]

黒豚の放牧飼育に挑戦 2012年11月5日



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 最近、日本経済のグローバル化、放射能汚染の恐怖、そして学校でのいじめの蔓延などで、日本での教育に見切りをつけて、お子さんを海外で学ばせようとするお母さんが増えている。そうすれば、英語を堪能に話す国際人に育つ一方、放射能やいじめから疎開できるという一石2鳥と考えるのだ。  しかし、留学といえばアメリカやヨーロッパが定番だが、こんなところでで長年暮らすとなると、おいそれと決断するわけにはいかない。よほどのお金持ちだけができる特権だ。そこで2000年代、韓国のお母さん方が、お子さんの留学先として目をつけたのがフィリピンだ。ご承知の通り、韓国ママ達の教育熱心は尋常ではなく、大手企業への就職も真っ当な努力ではままならない。ちなみに超優良企業のサムソンはTOEIC900点以上でないと、玄関払いになるそうだ。一時、フィリピンには語学専門学校も含め、8万人の留学生がいたといわれるが、2005年当時、退職庁にも小さなお子さん連れの韓国ママ達が退職ビザの申請に列を成していた。   2歳半のKIANが通う保育園には、2歳~4歳の幼稚園前の子が通うが、ここでもなんとすべて英語なのだ。KIANにとっては英語でもタガログ語でもまだまだ片言しか話さないから、関係ないのだが。彼の第一言語は英語、そして2番がタガログ語、3番がビコラノ(家族の出身地の方言)、そして4番目が日本語だ。  意外と思うかも知れないが、フィリピンでは小学校から授業は国語と社会をのぞいて、全部英語で行われる。英語の授業ははもちろん英語だが(日本では英語の授業もほとんどの部分は日本語でやっている)、数学や理科も全部英語だ。だから、フィリピン人は、ハイスクール(日本の中学校相当だが、現状4年間)を終えるころには皆、英語に堪能なバイリンガルに育つ。  韓国ママ達は、小さい子はインターナショナル・スクールに通わせ、大きい子は英会話学校に通わせて英語の特訓を受けさせる。フィリピンには英語の先生なんて、はいて捨てるほどいるから、時間数百円という只みたいな金でいくらでも雇える。生活費も本国で暮らすより返って安いくらいだ。だから、小さい子は母親連れで留学し、旦那は本国で稼いでせっせと仕送りする生活だ。  こうやって国際人を養成してきた韓国に、日本は水をあけられようとしている。日本で虐待やいじめにおののきながら、内向きに暮らしてきた若者では太刀打ちができなくなってきている。企業も多くの外国人を雇い始めているが、日本人の就職戦線はますます厳しいものになってきている。ここでもしあなたの子供が、日本語と英語をネイティブとして流暢に使いこなすことができて、かつ色々な国籍の友人を持っているとしたら、どうだろう。企業からは引く手あまたに違いない。 マニラの大学の付属のインターナショナル・スクール、大学よりも金になると、海外の留学生用のスクールを併設する大学が増えている  フィリピンでは、最近、学校制度が変更され、今年ハイスクールに入学する生徒から、従来4年で卒業していたものが、4年+2年で大学に進学することになり、日本と同じになる。従来、フィリピンのハイスクールを卒業しても、日本の大学進学の資格はなかった。しかし、今から4年後には、すべて国際基準と同等になって、フィリピンのハイスクールを卒業すれば、日本の大学の進学する道が開かれる、一方、ターナショナルスクールは、はなから外国の大学に進学することを前提としているから、現状で、ハイスクールを卒業すれば、日本やそのほかの国の大学に進学する資格が得られる。  フィリピンにおける学校の種類は、公立(学費無料)、私立(学費は有料で年間2万ペソから10万ペソ程度、1ペソ=約2円)、それにインターナショナル・スクール(学費は年間10万ペソ~20万ペソ、中には80万ペソというところもある)がある。もちろん大多数のフィリピン人は公立の学校に通うが、お金持ちは私立へ通う。有名私立の子供達は皆、有名大学へ進み、社会に出てからも学校時代に培ったコネで、社会の上層部を形成するのだ。フィリピンの大学の雄、フィリピン大学(UP)は公立だが、ほとんどの学生が私立ハイスクールの出身で、エリート教育を受けてきた子弟だ。貧乏人が小中高と公立で学び、東大に入学して、高級官僚や企業の幹部になるという構図はフィリピンにはない。金=教育=出世=金、の循環なのだ。  インターナショナル・スクールは基本的に外国人の子弟を対象にしているのだが、お金持ちのフィリピン人も通っている。特にお母さんがフィリピン人でお父さんが日本人あるいはその他の外国人の場合、ここに通わせることが多いようだ。もちろん、インターナショナル・スクールは私立校の上を行くエリート校だ。 インターナショナル・スクールには幼稚園や保育園が併設されている、まさに幼小中高一貫で、学費が高いだけに質の高い教育環境を用意している。  さて、日本人の子弟が、留学してフィリピンの学校に通うということを想定したらどうなるだろう。小学校入学前、あるいはその前後だったら、万能細胞の子供はすぐにアジャストして問題ないだろうが、フィリピンの授業はほとんどが英語で行われるので、小学校も高学年になると、英語がかなり達者でないと授業についていけない。さらに、ハイスクールともなれば、ほとんどアメリカ人と同等の英語力を有しているので、そのままでキャッチアップすることはまず不可能だ。  インターナショナルスクールの場合は、授業はもちろん英語だが、新規にフィリピンにやってきた生徒は必ずしも英語は達者ではないので、補習授業をマンツーマンで十分な語学力がつくまでやってくれる。子供は学習能力が優れているので、数ヶ月で通常のクラスに編入できる子も多いそうだ。  フィリピンには大小のインターナショナル・スクールが数多くあり、学費が一般の私立校に比べて高いだけに良好な教育環境を提供してくれる。新規にやってきたお子さんは、そんな事情からインターナショナル・スクールに入学させるのが良い。入学手続きについて、日本の学校から成績表をもらってくること、フィリピンに滞在する資格(フィリピン国籍か就学ビザなど)を取得すること、後は簡単な面接と入学申込書に記入して提出するだけだ。 […]

フィリピンで子育ての勧め 2012年10月24日


 昨夜、NHKスペシャルでiPS細胞(万能細胞)を発見した功績でノーベル賞を受賞した山中伸弥教授の特集をやっていた。従来の万能細胞(ES細胞)は受精卵をこわして作る、すなわち、自然の命から取り出すものに対して、これは皮膚の細胞を初期化して、万能細胞を作りだすものだ。したがって、患者の皮膚から作った万能細胞で、臓器や神経細胞などを作って患者の体に戻せば拒否反応もなく、倫理的問題にもならない、まさに理想の再生治療=夢の技術が実現しようとしているのだ。  さらに種々の病気のメカニズムの解明や薬のテストなども実験室で行うことができて、パーキンソン氏病やアルツハイマーなどの難病に画期的な新薬ができることが期待される。すなわち、医学会に革命をもたらす画期的な発見なのだそうだ。  一方、山中教授は倫理的な規制の議論が必要と付け加えるが、この技術を使えば、様々な臓器を作って体に組み込んだり、さらには一個の生命そのものも人工的作ることができてしまう、ということを暗に示唆しているに違いない。 赤ちゃんはまさになんにでもなれる可能性をしめた万能細胞そのものだ。  昔、手塚治虫などの漫画で見た、人工の臓器などを人体に組み込んだ、まさにサイボーグ=鉄腕アトムの世界であり、さらに、生殖というプロセスを経ないで自分の分身、クローンを作ることができるという、FS映画の世界だ。ゴルゴ13でも「毛沢東の細胞を使って毛沢東の分身を数百人作り、彼らを訓練して、理想の国家指導者を作り上げるプロジェクト」の話があった。こんな漫画やFS映画の世界が技術的に可能となったのだ。   さらに、植物の世界で、すでに実用化されている遺伝子組み換え技術と組み合わせると、超人ハルクのような生命体もできるかもしれない。また、ハリーポッターに出てくる人と動物を組み合わせた半人半獣が出現しても不思議でない。 たったの2歳半で読書をするKIAN。本当の所は何も理解しているわけではないのだが。  山中教授は、その辺の倫理規制が必要で、どこまでこの技術の利用を可能とするか、国際的な取り決めが必要だという。しかし、原子爆弾がそうであるように、独裁国家などが取り組んだら、その動きを簡単押さえ込むことはできない。独裁者は自らのクローンを作って永遠の命を保とうとするだろうし、自らのクローンで軍隊でさえ作れるだろう。「地球外でクローンを増産し、軍隊を仕立てて販売するというビジネス」の映画があったが、そこでは、彼らは生命体ではなく使い捨ての機械という設定だった。  さらに、人工的に作った臓器や神経は命として認識されず、売買され、実験や治療に使われることが是とされている。しかし、その延長線上にある一個の独立した生命体はどうなるのだろう。近未来に、生殖という過程を経て誕生した人間と、人工的に作られた人間(クローン)という2種類の人間ができて、後者は機能的には全く同じでも、人権をもたない道具あるいは機械として売買されるという状況が出現するかもしれない。現代の技術をもってすれば、これらクローンに自分が機械であるという認識を植え込み、人間に逆らうことはできないようにプログラムすることは容易であろう。(以前たしか、こんな設定の映画を見たことがある)。 最近はCARという自動車のアニメに凝っていて一日中繰り返して見ている。まさに自分がCARになった気分でテレビの中に入り込んで車を運転している。  そうなってくると、このiPS細胞を夢の技術と呼んで、ノーベル賞を与えて浮かれていていいのだろうか。この夢の技術で、本来人間に与えられた生命の限界を、果てしなく克服して、寿命を延ばしていくことが、人類全体にとって益ととなるのだろうか。動物そして人類は世代を交代することによって進化を遂げてきた。言い換えると、動物は個々の生命が次の世代を生み、自らは死んでいくことによって多様化し、環境に適応したものが生き延びて、生命の宿る地球を維持してきた。  今、人間が、自分自身の細胞で悪い部分を取り替えて永遠の命を獲得したとしたとしたら、人類は進化することを止めて、まさに破滅の道を歩みはじめることになるだろう。さらに遺伝子組み換えにより、自然に存在し得ない生命体を作り出すなど、人間あるいは動物の生命というメカニズムを人間が操れる時代が来たとすると、このiPS細胞の技術はまさにパンドラの箱を開ける悪魔の技術となってしまうのではないだろうか。

iPS細胞は夢の技術かそれとも悪魔の技術か 2012年10月22日