ドテルテ新大統領の信任率が91%と歴代大統領で最高となっている(7月21日)。一方、信任しないは0.2%で実質100%の信任率に近い。その原因は、公約の麻薬撲滅が大統領就任以来、確実に成果を挙げているためと思われる。 大統領就任後、7月5日、空軍の創立記念に参加するためにクラーク空軍基地を訪問した 6月30日の大統領就任前後より、連日のように麻薬密売人の国家警察による殺害のニュースが報じられている。さらに、「違法薬物抜き打ち検査で現職警官9人に陽性反応」(7月5日)、「国家警察幹部5人を違法薬物密売組織に関与していると名指し」(7月6日)、「麻薬王3人(いずれも中国人)の名前公表」(7月8日)、「ニュービリビッド刑務所に警察特殊部隊320人を配置 麻薬取引の取り締まり強化(モンテンルパにある刑務所は22000人の受刑者を収容、麻薬犯罪の温床といわれている)」(7月21日)、「署長、分署長の6割解任 薬物取締りの成績不振で」(7月22日)、と矢継ぎ早に手を打っている。また、ドテルテ大統領は麻薬王の一人と面談し、「証拠を見つけたら殺してやる」と恐喝したそうだ。一方、麻薬王達はドテルテ大統領の首に多額の懸賞金をかけているとも報じられている。 軍と警察を掌握することは大統領としては必須だ たしかに麻薬と犯罪は表裏一体で麻薬撲滅=犯罪の一掃につながるだろう。恋の恨みなどの突発的犯罪は致し方ないが、巷の犯罪は激減するのではないか。そして、近い将来、フィリピン全土の治安が格段に向上するときがくるだろう。そんな夢を実現してくれるだろうと、ドテルテ大統領にほとんど100%の人が期待しているのだ。 ドテルテ大統領は6ヶ月以内に麻薬犯罪を一掃すると宣言している 先日、ルソン島中部、ヌエバエシアにお住まいの退職者の方から、妻の誕生日のケーキを買うために市内に出かけたら、こんな田舎道で大渋滞に出会ったとの話があった。原因は、麻薬密売人が路上で射殺され、その現場に遭遇してしまったのだ。しかも帰りの道も大渋滞で、一日に2回も射殺現場に遭遇したとのこと。さらに近所のバランガイでも同様な事件があり、一体世の中どうなっているのかとびっくりしたが、フィリピン人の妻は、普通のことと平然としていたとのこと。 ドテルテ大統領とトークショーでやりあった人気コメディアンのバイスガンダ。バイスガンダとは副・美という意味だが、巷の副大統領といっても良い存在だ。このトークショーではドテルテ大統領のセンスが光っていたそうだ 「麻薬事件の容疑者殺害 一週間で新たに31人 大統領選以降は計103人に」(7月8日)、「大統領就任以降 首都圏で69人殺害 違法薬物密売容疑で」(7月19日)と、全国的に麻薬密売人の殺害が広がっており、一方「他に552人が逮捕され、約18000人が出頭した」(7月19日)、と報じられている。ドテルテ大統領は6ヶ月以内に違法薬物を撲滅すると宣言しているが、十分達成しそうな勢いだ。 ロブレド副大統領と面会した大統領。前大統領・アキノの回し者のロブレドはドテルテの政敵といっても過言ではない ドテルテ大統領はダバオ市長時代、処刑団を率いてダバオの治安を劇的に改善した、といわれているが、同じ手法をフィリピン全土に展開しているようだ。従来、警察はいったい、庶民の味方なのか敵なのか、警察官自体が犯罪を主導することもあったが、今回は、警察は犯罪者の敵であることを明確に示そうとしており、そのためには、現役警察官であろうとも容赦はしないというものだ。 パパ・カーネル(KIANのお父さん)は善良、正義派の警察幹部だが、かつてぼやいていたことがある。「警官が容疑者を射殺すると、その射殺が正当だったかどうか、一転して警官そのものが殺人の容疑者になってしまう。そのため、事前に発砲を予告したり、何のかやと射殺を正当化するための準備が必要だ。そんな悠長なことをやっていると、犯人が逃走するか、あるいは自分がやられてしまう。瞬時の判断と対応が警察官自身の命を守るためにも必要なのだ」と。 ドテルテ大統領、そして、ドテルテ大統領に指名されたデラ・ロサ国家警察長官が「抵抗したら躊躇なく射殺せよ」と、こんな警察官のジレンマを払拭したに違いない。しかし、ロブレド副大統領は、こんな状況に、「超法規殺人を強く非難」(7月21日)している。 ドテルテ大統領の超法規的殺人を批判するロブレド副大統領 そんなわけで、全国の警察官は、のびのびと麻薬撲滅にまい進しているに違いない。こうなったら、たまらないのは、麻薬の密売人だ。殺されない内にと、18000人が自首したというニュースに、フィリピンではそれほどまでに麻薬がはびこっていたのかと返って感慨深い。確かにシャブという言葉はよく耳にする。最近ではイケメン男優のジェリコが「若いときシャブをやっていた」と告白したそうだ。ジェリコは魚の行商をやっていたのを発掘されたというが、その手の若者がシャブをやっている確立はかなりのものと推定される。国民みんなが、自分が殺されないうちに麻薬から手を洗おうとしているようだ。 […]