Daily Archives: January 24, 2025


キアンが通うドンボスコスクールがあるチノロセス(通称パソンタモ)通りのマカティスクエア近傍は、私が1989年に初めてフィリピンに訪問して事務所を構えたところだ。その後、この10年はキアンの送り迎えに毎日うろついている馴染みの街で、リトル東京レストラン街もあって我々日本人にとっては、極めて居心地が良い日本人街とも言えなくもない。 マカティスクエア内にはキアンが通っている音楽教室もあるのだが、さらに今、キアンが夢中になっているプラスティックモデルを売っているホビーショップがある。さらに日本食材の買い出し、セルフォンショップ、近所のウオルターマートの日本城やMr. DIなどの日用品雑貨、スーパーマーケットなどなど生活に必要なものはなんでもそろう。 パンデミックが明けて、ドンボスコスクールも対面授業を開始して、外出が自由になった今、レゴの後釜としてキアンが目を付けたのがプラスティックモデルだ。私の息子たちが子供のころブームで夢中になっていたものが、再びブームを迎えようとしているらしい。パンデミックの初めは、キアンと私は争ってレゴの組み立てに挑戦した。しかし、レゴは高いので、パンデミックの後半は我が家では下火になっていたが、にわかにプラモデルが脚光を浴びた。 初めは小さなもので試したが、キアンはその難しさに逆に興味を示して、次から次へと要求がエスカレートとしていった。左右両手使いのキアンは、ピアノのレッスンも相まって手先が器用だ。細かな仕事を、時間も忘れて根気強く続けている。男の子のココは、やはり興味深々でタンクを組み立てて欲しいと注文したらしい。女の子のクッキーは全くの無関心だ。 この手の趣味は生涯の趣味になるし、また、子供の脳の発達に大いに役立つ、さらに、私自身の認知症予防にもうってつけではないかと思う。しかし、こんな細かい作業をいまさらやる気にはなれないので、せいぜい、キアンを金銭面で応援するのがやっとだ。一つ、1000~2000ペソ、するので、かなりの負担でもあるが、さらにペイントや接着剤、等々の消耗品の費用がバカにならない。消耗品で儲けるのは古今東西、どこの業界では定石なのだ。 あまりにキアンが夢中になっているので、いつもの通り、ママ・ジェーンから、禁止令が出た。①すでに組み立てて、クッキーやココがバラバラにしたレゴを再度組み立てなければ、新規プラモデルの組み立ては許さない、②組み立ては土日の休みに限定する、③室内ではペイントや接着剤を使用してはならない、等々。何かにつけてイチャモンをつけて後ろ向きの決定をするのが彼女の流儀だ。クッキーと同じで、プラモデルなどの男の趣味は全く理解できず、金と時間の無駄遣いにうつるのだろう。 私が説得しても火に油なので、パパ・ジェネラルに話すようにアドバイスした。彼は、キアンのプラモデルの組み立てにいたく興味を示しており、その楽しさや効能を理解している。彼がどうやってママ・ジェーンを説得したかわからないが、しばらく後、②と③の条件付きで許可が下りた。 土日に限定され、しかも土日はママ・ジェーンとパパ・ジェネラルのモールのショッピングにつきあわされたり、外出が多くて、プラモをやる時間が無いとキアンは嘆いている。両親がキアンを連れて外出したがる理由は、クッキーとココの子守と買い物の運搬係に重宝であるからで、休みにはプラモに没頭したいキアンにとってはとんでもない迷惑なのだ。 キアンは組み立てが終わった飛行機やタンクを学校に持って行って自慢しているようだ。そうすると学友は是非、完成品を売って欲しいという申し出があるそうだ。正直で欲のないキアンは、材料代だけで売ってもいいと言っているらしいが、自分としてはプラモの組み立てそのものが楽しみで、それで十分というわけだ。私としては手間賃を入れて、材料代の倍くらいの値段で売って、売り上げの半分を新しいプラモの材料代に充てて欲しいところなのだが。 この春、キアン一家が日本を訪問した折、キアンの希望はプラモデルの雄、TAMIYAがある本場、日本で、プラモデルの材料を調達することだった。新品は高いので、中古品を探すべくリサーチしたところ、Hobby Offという店がチェーン展開していることがわかった。そこで以前、預けた一万円札でプラモを買うのがキアンの旅の目的となった。上野・御徒町のアメヤ横丁で念願のHobby Offを発見したとき、キアンの興奮は頂点に達した。 上野、御徒町そしてアメヤ横丁と聞けば、私は必ずしも良い印象は持っていないが、キアンにとっては、街は清潔で、ホテルに直結したコンビニでは必要なものはなんでもあるし、将来は是非、日本に住みたいとまで言い始めた。商品は何でも質が良いし、食べ物はおいしいし、日本製の車は故障もしないし、プラモのせいか、すっかり日本びいきになってしまったようだ。日本で働きたいとしたら、日本語が話せることが必須で、キアンは何度か試みたものの未だ、片言も話せない。私という日本語ネイティブスピーカーが傍にいるのだから、練習には事欠かないし、プラモの後は日本語に挑戦するよう強く促している。 一方、キアンは、中国をいたく嫌っている。オンラインで買っても製品は質が悪く、説明書も中国語で、車だってすぐに故障する。ドテルテ大統領の中国寄りの政策のせいか、パンデミック前はオンラインカジノなどで大量の中国人が流入して、やりたい方だいで礼儀知らずで、いたくフィリピン人のひんしゅくを買っていた。そこで私が、そもそもキアンはハーフ・チャイニーズで、名前もYANG(楊)だろうと横やりを入れた。フィリピンは人口の一割の中国系であり、そのまた一割は中国語を話して、中国の文化を維持しているという。キアンは中国系であろうが、心は100%、フィリピン人なのだ。

キアンはプラスティックモデルに夢中 2025年1月24日