首都圏渋滞で一兆ペソの経済損失 2015年9月20日 1


マニラ新聞によると、マニラ首都圏の渋滞で、毎日、30億ペソ、年間、一兆ペソの経済損失が生じていると、国家経済開発庁(NEDA)が発表したそうだ。この損失は、国内総生産(GDP)13兆ペソの8%を占めるに至っており、かつ国家予算の半分に相当する。

確かに朝夕のラッシュ時は、自宅からPRA(フィリピン退職庁)まで15分でいけるところを一時間は優にかかることもある。マカティの中心地を横断するのに一時間、約束の時間に間に合わせるために、途中から歩いていくこともしばしばだ。歩いたら、車の半分の時間でで行けるし、正確に時間が読めるから安心だ。しかし、この雨季の真っ只中、雨でも降り出したらおしまいだ。

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サウススーパーハイウエイはマニラ南部からマニラ港に向かう唯一の幹線道路であるため、終日トラックが列をなし、一般車両も巻き込んでで首都圏渋滞のメッカだ(左)。最近急増した個人用のモーターバイクが渋滞の中をジグザグに走りぬけ、ドライバーの頭痛の種になっている(右)

この渋滞は、首都圏周辺、北のケソン・シティ、ブラカン、リザール州あるいはや南のカビテ、ラグナ、バタンガス州方面から流入する幹線道路においては地獄のようだ。特に下の地図の青い線(MRT)で示されるEDSA通りは、北からマカティに向かう唯一の幹線道路で、普通は2~30分でいけるところが、数時間かかることがざらにある。最近では、朝夕のラッシュ時間帯ばかりではなく、終日、渋滞している。

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そのため、政府は、国家警察高速道路警備隊(HPG)の隊員、約100人を監視の任につけた(首都圏の交通行政は本来、首都圏開発局(MMDA)の役割)。しかし、その後の新聞は、根本的解決無しには、一時しのぎの策は何の効果もないとこきおろした。

EDSA以外でも、南からマニラ市にある港に向かうサウス・スーパーハイウエイはコンテナ・トラックの列で、終日、いっぱいでほとんど動いていない。しかも、首都圏の鉄道は、LRT1とMRTの環状線(青と緑の線)、マニラを横断するLRT2(紫の線)、そしてPNR(国鉄、茶色の線)しかなく、しかも、ラッシュ時は超満員で人々は車で移動するしか方法がない。

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LRT1、2、MRT(左の写真)それにPNR(国鉄、右の写真)があるものの輸送力が小さくて焼け石に水だ

ちなみに、マニラの通勤の主役は、長距離移動のためのバスあるいはUV(小型の乗り合いバン)、中距離移動のジープニー、タクシー、そして、短距離用のトライシクル(三輪バイク)あるいはパジャック(三輪自転車)などの公共交通手段で、それに無数の自家用車がひしめき合っている。

そのため、庶民は、ターミナルでいつ乗れるかも知れないバスなどを待って、毎日、数時間を費やし、ラグナ、カビテ、ブラカンなどのベッドタウンからの通勤にエネルギーを使い果たしている。

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郊外へ移動手段はバスが主体で、中、長距離バスが幹線道路にひしめく(料金は固定性)

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中距離移動はジープニーが主役、頼もしい庶民の味方だ(ちなみに初乗り8ペソと格安だ)

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UV(Utility Vehicle、左)は、比較的長距離を点と点で結ぶために乗り換え無しに通勤できて便利だが、その分だけ高めだ(料金は固定性)。一方、タクシーはメーター制なのだが、運転手によっては、料金はネゴ次第となって、外国人には頭が痛い。

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近距離移動は、トライシクル(左)とパジャック(右)が主役だ。地方ではこのトライシクルとパジャックが渋滞を引き起こす主役でもある。

したがって、この渋滞が緩和されるには下記の根本的な解決策が実行されなければならない。しかし、これらが実現するのは、5年あるいは10年の歳月が必要だろう。

① 鉄道網の充実;LRT1の南北への延長、LRT2の延長、LRT4号線(ケソン方面)の新設が計画されている。渋滞の緩和の切り札の鉄道だが、膨大な建設費用が必要なので、着工の兆しが見えない。現状の鉄道は、朝夕のラッシュ時は駅に入ることさえままならず、すでに機能麻痺に陥っている。

② 南北高速道路の接続;現在工事中の首都圏縦断のスカイウエイ(首都圏の北の高速道路(NLEX、North Luzon Express Way)と南の高速道路(SLEX、South Luzon Express Way) を高架道で接続する工事)は着々と進めれ、2~3年後には開通される見通しだ。マニラ首都圏の外では高速道路の建設が着々と進んでいるが、それらが首都圏に接続する部分がネックとなってなっており、この道路が完成すると直接首都圏各地にに流入できいるので、交通事情が格段に改善されることが期待される。

③ マニラ港の移設;南のバタンガスあるいは北のスービックなどの郊外に港湾機能を移設するべく、広大な港湾施設が建設されている。いずれマニラ港を利用している流通機能が移転され、コンテナ・トラックの首都圏流入が激減することが期待される。

経済損失が一日30億ペソとは大げさな気がしないでもないが、ガソリン代、運転手や車の費用、乗客の時間的損失、物流関係の車両と時間の損失、環境への影響、などなどを考えると、そんな経済損失に達するのだろう。そうであれば、大型インフラ投資の意味が大いにあるというものだ。

ちなみに、最近、EDSA沿いのオルティガスとケソンに行く用事があった。往復、それぞれ、2時間、そして3時間を見込んでいたが、意外と早くついてしまった。特に帰りは、それぞれ15分、そして30分で帰ってこれて、渋滞はどこへ失せてしまったかと不思議に思った。どうも、件の国家警察高速道路警備隊(HPG)の取締りが報道とはうらはらに功を奏しているようだ。

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終日、渋滞が続いていたEDSA通りも、昼間は、さほどの渋滞でもない。取締りの効果がでているようだ。


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One thought on “首都圏渋滞で一兆ペソの経済損失 2015年9月20日

  • kujirasendai

    そうなんです。最近ロハス通りの交通量も少なく感じます。取り締まりのお影なんでしょうか・・
    バタンガス港に機能移転する話がありますが、かなり困難なようです。
    推進側の意欲・努力は認めるものの、実態がついていかないようで本当に機能移転すると設備等の充実なしにはもっと混乱すると言われています。
    動くクレーンも限られ、トラックのキャパも不足することは目に見えているようです。
    なんとかしなければいけないのでしょうが・・