2015年5月の改定で、外国人に許されていなかった、エンジニアリング、医療、会計、建築家、教育、農業などの分野がネガティブリストからはずされた。したがって、一般的職業としては弁護士のみが、外国人の参入が許されない職業となる。ただし、これらの緩和策は、該当する外国人の本国においてもフィリピン人に対して同等の職業に従事することが許容されている場合に限る。なお、レストランなどの小売業は相変わらず外国人を締め出している。また、土地の所有についても現状維持で、外国人の個人は所有できないが、外国人が40%の株式を保有する株式会社は土地の保有が認めれている。
EO 184 &10th reg foreign negative list
このことにより、今後、多くの外国人の専門家がフィリピンで活躍することになると思う。今まで、フィリピンの豊富で安価な労働力を求めて多くの企業が輸出向け生産基地として進出するというのがパターンだった。これからはフィリピンを市場としてエンジニアリング、医療、会計、教育分野等に進出する機会が多くなる土壌が整った。ただし、これらはサービス業は国内向け企業(Domestic Market Enterprises)に分類され、資本金が20万ドル以下の場合は、外国資本は40%に限定され、20万ドルを超える場合は、100%外国資本が許される。このため、日本で会計事務所、税理事務所、あるいは弁護士事務所を運営しているかたがたから、フィリピン進出を計画する会社の進出支援をしたいという問い合わせが多くなっている。
フィリピンでは、外国人/外国法人による会社株式保有の比率の上限を定め(Executive Order No. 584)、外国人のビジネス参入あるいは就労を制限している。これに違反した会社はSEC(Security Exchange Commission) により設立を認可されず、個人に対してはDOLE (Department of Labor and Employment)によるAEP(Alien Employment Permit)が発行されない。これらの制限は、ビジネスあるいは就労においてフィリピン人を優先保護するものとして当然の措置であろうが、経済発展の妨げにもなっている。さらに、フィリピンでのビジネスあるいは就労をややこしいものとし、ダミーの使用によるトラブルの発生の元ともなっている
いわゆるネガティブリストを詳しく見てみよう。 Negative List 20150924_0001(旧)
リスト A 憲法により外国人の保有が制限されている職種
No Foreign Equity(外国株式無し)
2. 専門家
a. エンジニアリング b. 医療 c. 会計 d. 建築家 . . . . . m. 法律 . . . . . t. 教育
要は国家資格を必要とするエンジニアー、医者、看護婦、テラピスト、会計士、弁護士、先生などの職業に外国人は就くことができない。そのため、病院などでは医療通訳などの名目で従事していることが多い。マカティに歯科医院を開業している小林誠先生は、そのためにフィリピンに帰化している。
3. 払込資本金が250万ドル(3億円)以下の小売業
資本金3億円を超えるような大手デパートなどを除く、小売業への参入は許されていない。すなわち、レストラン、小売店など小さなビジネスは、フィリピン人に限定され、会社組織にしたとしても100%フィリピン人に保有され、役員として経営に参加することもできない。通常、これらのスモールビジネスは、フィリピン人による個人経営で、SECの代わりにDTI(Department of Trade and Industries)に届けるだけで営業されている。そのため、日本レストランやカラオケは、ほとんどの場合、フィリピン人妻の名義で運営されている。だから、フィリピン人の名義を借りて運営していて、軌道に乗ったら、経営権を取られてしまったなどという話が絶えない。
Up to 25% Foreign Equity(外国株式25%)
13. 人材派遣会社
これから、日本への人材派遣が本格化するに違いないが、外国資本、25%まで参画することができる。しかし、海外への人材派遣にはPOEA(Philippine Oversea Employment Administration)のライセンスが必要で、これが容易には取得できない。
Up to 40% Foreign Equity(外国株式40%)
18. 土地の保有
外国人は土地を所有することはできないが、外国株式の保有比率が40%以下の会社であれば、土地が買える。そのため、住宅を建てるための土地を保有するための(60;40)の会社を設立することが行われたが、大手の会社であるならばいざ知らず、個人でやる場合は、その会社の維持に多大な手間と費用がかかり、本末転倒といえる。
20. 教育機関
今ブームとなっている英会話学校などには40%まで参画できる。ただし、TESDA(Technical Education and Skills Development Authority)のライセンスおよび入管からのSSP(Special Study Permit) 発行のライセンスなどが必要で、その取得がなかなか容易ではない。
26. コンドミニアムの保有
コンドミニアムは全体のユニット数の40%まで、外国人個人が保有することができ、(60;40)の制限を満足しているものとみなされる。
リスト B 健康とモラルの維持、および中小規模の事業を保護するための制限
Up to 40% Foreign Equity(外国株式40%)
4. サウナ、マッサージ
5. ギャンブル
ただし、ギャンブルは国営のPAGCOR(Philippine Amusement and Gaming Corporation)が取り仕切っているので、その運営には別途のライセンスが必要となる。
6. 払込資本金20万ドル(2400万円)以下の国内マーケット向け事業
国内向け事業という括りなので、小売業など外資規制のないほとんどのビジネスが含まれることになる、いわゆる(60:40)の黄金比率だ。このネガティブリストで規制されていない事業については外資規制がない、すなわち、払込資本金を20万ドル以上にすれば、100%外資とすること、さらに輸出向けの事業も100%の外資とすることが可能ということになる。
7. 払込資本金10万ドル(1200万円)以下の国内マーケット向け事業で50人以上を雇用し、先進技術を使用する事業
プログラム開発などの事業は、先進技術ということで、外国人が100%の株式を保有するための資本金の額が10万ドルとハードルが低くなっている。