四つ巴の大統領選の火蓋が切っておろされた(その2)2016年2月13日


2月9日、選挙まで3ヶ月を残し、いよいよ大統領選挙を含む統一選の選挙運動が解禁された。統一選挙の詳細は、ブログ「四つ巴の大統領選の火蓋が切って落とされた2015年10月18日」参照

2月9日、早速、主だった大統領候補が一声をあげたが、国民の直接選挙で選ばれる大統領選挙の行方は、数で圧倒する貧困層をいかに取り込むかにかかっており、いわば人気投票の様相を呈す。したがって、各候補はスコーターエリア(スラム)のあるキアポ、トンド、マンダルヨンなどの広場あるいは大通りを遮断して特設ステージを設置し、人気タレント等によるショーまがいのパーフォーマンスを繰り広げた。

有力候補は、ポー上院議員、ビナイ副大統領、ロハス前内務自治長官、ドテルテ・ダバオ市長、サンチャゴ上院議員だが、支持率上位のポー、ビナイ、ロハス、ドテルテの四つ巴の混戦といえる。ちなみにドテルテ候補はダバオ市長への立候補を表明していたが、その後、代理出馬の名目で大統領選に加わった。

支持率一位のグレース・ポー上院議員は2004年の大統領選でアロヨ元大統領と一騎打ちを演じた国民的人気俳優だった故フェルナンド・ポー・ジュニアの娘。前回の上院選でトップ当選、3年の任期を残して大統領選に出馬した。政治家暦は4年だが、清廉なイメージと亡父の人気で、高い支持率を誇る。教会前に捨てられていた孤児であり、大統領としての資格=生まれながらのフィリピン国民、という条件を確認できないということで、現在、最高裁で立候補資格を審議中だ。追記;3月8日、最高裁が立候補資格を認める判決を下し、大統領候補の筆頭に躍り出た。

ポー候補は庶民の信仰を集めるキアポ教会の前で7千人の支持者を集め、副大統領候補のエスクデロ上院議員、12人の上院議員候補らと演説を行い、支持を訴えた。

下の写真は前回の選挙(2010年)のもので、今回の選挙戦のものではありません。CIMG0189s-2

大通りを仕切って作った特設ステージには数千人の聴衆が集まっている。その目的は有名タレントによるショーだ

CIMG0169s-2前回の調査で支持率1位だったジェジョマール・ビナイ副大統領は、元マカティ市長、1989年以来、マカティ市の発展に寄与したという実績で、6年前、副大統領の地位を獲得した。しかし、マカティ市長時代は、あるいは息子の現マカティ市長らの汚職疑惑で現政権に攻撃され、きわどい状況にある。

ビナイ候補はマンダルヨンの大通りを遮断して特設ステージを設置し、18,000人の聴衆に支持を訴えた。もちろん音楽ライブで聴衆を楽しませることは欠かせず、ボクシング界の国民的英雄パッキャオ下院議員(今回は上院議員に挑戦)も応援に駈けつけた。

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ダンスやタレントによる歌とトークショーに聴衆は盛り上がる。ちなみに下のタレントはいまやフィリピンNO1の人気タレント、オカマのバイス・ガンダだ    CIMG0207as-2

ロドリゴ・ドテルテ・ダバオ市長は20年以上、市長としてダバオ市を支配、もっとも治安の良い都会との定評を築き上げた。その方法と言えば、本人が「自分が大統領になったらマニラ湾が死体で埋まるだろう」と明言するよう、犯罪者を抹殺してしまうことだった。

その豪腕ぶりに、支持者も多く、東洋一のスラムと呼ばれるトンドで行われた演説に3000人の聴衆が聞きほれた。私がヒアリングをした限り、周囲のフィリピン人はドテルテ候補を支持すると明言している。はっきりした政治目標を表明・達成できない現政権に対して、犯罪撲滅という明快な主張は、実にわかりやすい。危険、汚い、金欠の3Kのフィリピンのイメージも向上するに違いない。

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(クリックして動画を見てください)

4番目の候補、マヌエル・ロハス前内務自治長官はロハス元大統領の孫。前回の大統領選ではアキノ大統領候補と組んで副大統領に立候補したがビナイ候補に敗れた。そして今回アキノ大統領の後継者として立候補、毛並みは抜群だがインパクトが今一だ。

ロハス候補は支持地盤のビサヤ地方で、アキノ大統領をはじめとする政府要人が駆けつけて支持を訴えた。

5人目の候補者、ミリアム・サンチャゴ上院議員は1992年の大統領選でラモス元大統領と争ったが、今回はマルコス上院議員とペアを組んで大統領に再挑戦している。ちなみにマルコス上院議員は、かのマルコス大統領の実子で、毒舌で有名なサンチャゴ候補と独裁者の息子という組み合わせは違和感がある。

 

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