豆辞典 フィリピン人配偶者との離婚は可能か


フィリピン人女性と結婚している日本人男性の数は一口に10万人とも言われている。年の差を気にしないというフィリピン人女性の考え方、海外出稼ぎ労働者(OFW)で代表される海外へのあこがれ、そして貧困というバックグランドがフィリピン人女性を日本人との結婚に駆り立てるのだろう。フィリピン女性が日本へ嫁いだ場合、比較的うまくいっているとの話を耳にする。一方日本人がフィリピンに来た場合、10年もうまくやってきた仲なのに、一年足らずで破綻してしまった言う話を聞いたことがある。

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世界でもまれな離婚制度の無いフィリピンでは教会でおごそかに式が執り行われ、牧師と立会人が婚姻を承認する

私 なりに原因を分析すると、日本で結婚生活をした場合は、フィリピン人奥さんが必死に日本の習慣になじもうと努力し、日本語も覚え、旦那は、今までどおりに 日本流を押しとうすことができる。奥さんは月々わずかの家族への仕送りを条件に「おしん」になるのだ。しかし、日本人の旦那がフィリピンにやってきた 場合は、英語もタガログ語もできない、フィリピンのことはなにもわからず、奥さん頼り。おまけに稼ぎも無い、いかにも頼りない旦那なのに怒ることだけは一 人前、家族の前でも平気で奥さんを馬鹿にして怒鳴る、時には暴力を振るう。これでは奥さんはたまらない。フィリピン人にとって人前で怒鳴られたり、はったおされたりすること は死ぬほど恥ずかしいことで、許すことはできないのだ。

そうなるともはや離婚しかなく、奥さん側は買ったばかりの家や車は、慰謝料として当然我が物にしようとするだろう。旦那の婚姻ビザ(13aビザ)を キャンセルして、フィリピン国外に追放しようとしたりもするだろう。一方、旦那は何がいけないのかわけわからずおろおろするばかりだ。さて、不幸にも 離婚となったとき、フィリピンでの離婚に関する法律はどうなっているのだろうか。フィリピンには離婚という制度はない。だから、フィリ ピン人はいったん結婚すると離婚することができないのだ。

し かし、旦那は日本人だから、離婚できるはずだ。正確に表現すると、日本人とフィリピン人のカップルが、日本に居住している限りは、日本の法律に従い、 離婚でき、フィリピンに居住している場合は、フィリピンの法律により、離婚できないのだ。だから、離婚するなら、日本へ行って離婚すればいいのだ。し かし、離婚話が持ち上がってから、二人で日本に行って、離婚手続きをするなどということは実際的ではない。ではどうすればいいのだろう。

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式のあとの披露宴では食事と写真撮影が主でスポーチはない

離婚(Divorce) ではないが、アナルメントという離婚に近い制度がフィリピンにはあある。これは裁判所がこの結婚ははじめから成立していなかったという判定を下し たら、婚姻の記録は抹消され、晴れて独り身となれるのだ。どちらか一方あるいは両方により申請されるのだが、決定は裁判所が行い、本人たちの意思によら ないところが味噌だ。その場合、婚姻後に得た家屋などの財産は裁判所の指示に従って分配される。フィリピンでは婚姻後に得た財産はConjugal Propertyといって、夫婦、50/50の共有財産となる。したがって、これらは半分ずつになるのが妥当なところだろう。アナルメントが成立する要件は、18歳未満で婚姻資格がない、精神病である、姦通をした、性不能者である、婚姻前に他の男の子を宿していた、等々だが、金がものをいう世界でもあるようだ。またこれも一応裁判だから、結審には年単位の時間と百万ペソを越える裁判費用がかかり、庶民にはかなわぬ高嶺の花のようだ。だから、フィリピンには法的な配偶者とは別に家族を持つ事実婚の夫婦が実に多い。

日 本の法律に基づいて離婚した場合、必要な書類をフィリピンの所轄官庁に提出すればフィリピン側でも晴れて離婚が成立する。日本の戸籍から奥さんが除籍さ れたとしてもそのままではフィリピンでは離婚したことにならない。奥さんはもはや存在していない婚姻により、再婚ができないという羽目になるのだ(フィリピンでは婚姻の条件として国家統計局(NSO)から婚姻していないという証明書(CINOMA 独身証明書)が必要だが、それを入手することができない)。

そ の手順は、まず日本で離婚したことを示す戸籍謄本を入手、在比日本大使館で離婚証明を発行してもらう。次にそれをNSO(フィリピン国家統計局)に届け出 る。次にNSOにて発行された書類を持って、結婚の届出をした市役所に届けて、離婚証明を発行してもらうということになる。なお、最近ではNSOで受理してもらう前に、裁判所の決裁が必要となり、それに20万ペソ程度の費用と半年~1年の時間を必要とし、アナルメントに近い面倒がかかっている(さらに近い将来、この裁判手続きが簡素化される法案も審議されている)。

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離婚制度のないフィリピンでは原則、夫婦が生涯をともにすることが義務付けられて、まさに墓場でもある

奥さんがフィリピンにいて旦那は日本にいる場合、離婚できるのだろうか。奥さんと話し合って、合意の上、離婚届にサインをもらい、それを日本の市役所に届け出て受理されれば、OKだ。あるとき大使館に相談したら、だめもとでやってみては、とアドバイスされたが、法的にあいまいな部分があるようだ。

以 上から、離婚という話になったら、奥さんと話つけ、日本へ帰って日本の市役所に離婚届をする(だめもとで)、というのが現実的なのかと思える。しかし奥 さんの合意の条件が問題だ。離婚に至った経緯によるが、最低、一緒に住んでいた家+α、といったところだろうか。もちろんお子さんがいるとなる と、養育費など話は複雑化するだろう。

余計なことかもしれないが、フィリピン人と結婚するときは、離婚に至った時のシュミュレーションも同時にやっておいたほうがよいと思う。日本とは大分勝手が違うようだ。

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