OPC(One Person Corporation)は不法就労の救いの神になるか(AEP取得)2019年7月21日、2019年9月20日追記


2019年9月20日追記:                          とある退職者でAEP(外国人就労許可証)取得希望の方からメールが届いた。PRAの見解によると「コンサルタントとして個人的に活動してかつフィリピンに雇用者がいない場合、AEPは不要」だというのだ。そしてその根拠の書類(DOLEー労働雇用局発行 Frequently Asked Questions on the Revised Rules for the Issuance of Alien Employment Permits(DO 146-15) を送ってきてくれた。

AEP取得が、自分も含めて大きな課題となっていた私にとって、この書類はまさに 宝物ともいえる代物だった。私が抱えているAEP取得依頼ないし相談に関して明快な指針を与えてくれた。さらに下記に示す事例をDOLEに相談してみるとすべてOKとの確認をもらった。ただし、表題の方の場合は、顧客がフィリピンということでNOだった。

 その1.日本の会社から請け負ったIT開発の仕事をしているが、報償は日本から支払われ、フィリピンでは雇用関係はない。要は日本でも外国でもインターネットさえあればどこでもできる仕事だ。                  これにたいして件のFAQの2ページ目には「4. Who are excluded from securing an AEP? 4.C.Those providing consultancy services who do not have employers in the Philippines.」と明快にAEPは不要と答えている。これを聞いたYさんは、積年の悩みが解決したと大喜びをしていた。

 その2. 100%外資の会社の社長として活動しているが、果たして私はAEPを取得する必要があるのだろうか。                     これに対してFAQは同じく第4章に「b. Corporate officers as provided under the Corporation Code of the Philippines, Articles of Incorporation, and By-Laws of the Corporation such as President, Secretary and Treasurer.」とあり、社長はAEPが不要と答えている(ただしDOLEから不要である旨の証明書を取得する必要がある)。ただし、ほとんどの会社は60:40外資比率で、社長はフィリピン人に限定されるので、日本人が社長になれるのは100%外資の会社に限られるという縛りはある。しかし、昨今のAEPを取り巻く環境からこれが朗報であることは間違いない。

 その3.個人的に日本から仕事を請けてフィリピン人を外注として使ってIT関連の開発をしたい。その場合の会社設立とAEPの取得は必要であろうか。  自分自身が自宅でいそしんで仕事しているのであれば、疑問視されないだろうが、外注を雇うとなると立派なビジネスであり、不法商行為とみなされる。まさに本ブログのメインテーマであるOPC(One Person Corporation)を設立して、社長に納まればAEPも免除されて一石二鳥だ。

番外として、私自身の問題だが、長年きちんとAEPを取得して業務を遂行してきたのだが、今年の延長においてDOLEの対応が著しく厳しい。なんとか一年だけ延長してもらったものの、3ヶ月以内にDOJ(法務省)のOKをもらってこいという条件付だ。DOLE曰く、資本金20万ドル以下の会社の外国人社員は、まずDOJの許可が必要だというのだ。DOJの条件を見ると二人のトレーニーを雇って2~3年以内に技術移転を終えて出国することとあり、私にとっては無理難題だ。参考資料 DOJ Checklist

そこで思いついたのがPASCOを外資100%にするか、外資100%のOPC新会社を立ち上げて自分が社長に納まることだ。こうすればAEPが免除され、未来永劫に思い悩むこともない。まさにOPCは不法就労の救いの神なのだ。因みに頭に13と名がつく婚姻ビザ(13a)やクオータビザはAEPが免除されているが、このFAQにそのことが明快に記載されており、婚姻ビザをもっている息子がほっとしていた。

 このDOJの要求は既存のAEP発行の条件を厳密に適用するというものとうかがえる。そもそもフィリピン人の雇用を促進して外国人労働者の流入を防ごうとする法律でで、いわば、日本食の板前、日本語教師、柔道の先生などの特殊技能を有する外国人労働者を対象に作成したものと思われる。昨今の外国投資の誘致、SRRVなどによる外国人の招聘などの動きとは別次元の代物なのだろう。

 最近めでたくAEPを取得した方が、彼の名前がAEP申請者として新聞に公告された。そのリストを見て90%以上が中国人だと感心していた。私のAEP申請に苦戦していた相棒にその話をすると、中国人は金があるから、実弾さえ使えばDOJの許可なんて一発、と豪語していた。昨今のAEPの締め付けはそもそも中国人の不法就労が発端であるはずなのに、善良な我々外国人が排除されて、相変わらず中国人が闊歩するなんて、ドテルテ大統領の思惑とは全く逆の現象が起きているのではないだろうか。

2019年7月21日記載:                           最近、とみにマニラ新聞の一面をにぎわせているのが、AEP(Alien Employment Permit、就労許可証)の話題だ。7月12日 新たに「無異議証明」の取得義務付け 「データベースで一元管理も」、7月14日「入国前の取得の選択も促す」規則明確化で「言い訳なし」に、とますますAEP取得の義務付けを厳格化する方向だ。

これは、大量の中国人が観光ビザで入国して、AEPを取得しないで、そのままオンライ・カジノや建設現場など 不法就労をしていて、逮捕・収監・本国送還という事態が頻発しているためだ。

そんな折、あおりを食らっているのが、退職ビザを取得して、働いている、ないし働こうかとしている日本人だ(私もその一人だが)。AEPを取り巻く環境が激変して、一体どんなプロセスを経てAEPが発行されるのか右往左往させられ、まるで暗中模索の状態だ。

さらに、 個人的に自宅で日本から仕事を請けて働いている日本人だ。従来はAEPを取らなくても、フィリピンで給与をもらっているわけでもないから、大丈夫だろうと考えて、多くの方が、自宅で密かに業務にいそしんでいる。

しかし、昨今の新聞紙上をにぎわせている逮捕・収監・本国送還・AEP取得の厳格化・言い訳なし、などという言葉を見ると 「果たして自分は不法就労なのだろうか」と、不安になる。かといって会社勤めをしていないのでAEPも申請できない、しかし、現に仕事をして収入を得ているのだから立派に就労しており、納税義務もある。なんとも悩ましい状況だ。

参照ブログフィリピンで就労する時は、就労許可証(AEP)が不可欠 2018年7月12日

そんなわけで、DOLE(Department of Labor and Employment、労働雇用局)に直接問い合わせてみると、「まず、AEPを申請してみろ、その上で必要かどうか判断する」とつれない返事。フィリピンで務めている会社が無いからAEPを申請することができないので聞いているのに、まず申請してみろでは、何のアドバイスにもならない。

かと言って会社を興して、それを根拠にAEPを申請するにしても 5人の役員をそろえて、SEC登録、BIR税務登録、ビジネスパーミットなどハードルが高すぎる。従業員は自分ひとりだけの個人事業なのに、だ。

そんな折、そんな宙ぶらりんの状況を解決するためか、会社法が大幅に改訂され、外国人が一人で起業することが可能となった。 OPC(One Person Corporation, 一人会社)の場合、100%外資となるため、おのずと外資規制のない業種に限定され、フィリピン人に限定される業種ではないことが条件、IT関係、輸出専用、などがそれにあたる。下記は従来の会社とOPC(一人会社)の比較表だが、 まさに個人企業にうってつけの制度だ。

2019年5月1日施行

因みにOPCを設立してAEP取得までの流れとしては下記となる。

1.OPCの設立:通常の会社の設立のようにSEC(証券取引委員会)に登録する。株主、発起人は本人一人。なお、一般の会社と同様、毎年、GIS(General Information Sheet)の提出が義務付けられている。

2.BIR(税務署)への届出:月ごと、4半期ごと、年度末に納税の義務があり、毎年、年度末に会計監査報告書( FS、Financial Statement、会計監査報告書) の提出が義務付けられている。

3.ビジネスパーミットの取得:市役所で取得するが、毎年更新が必要。

4.AEPの取得:OPCの役員という資格でAEP免除の証明者をDOLEから取得する(2019年9月20日改定)

なお、会社のオフィサーとして財務役(Treasurer)と秘書役(Secretary)の任命が必要で、会計士などをパートタイムで任命して上記のSEC、BIR、市役所の諸手続きを担当させることが賢明かつ必須であろう。

なお、執務場所と会社の登記、報告は必ずしも同じでなくてもかまわない。例えばセブで執務して、会社はマニラにあるなどということも可能だ。会社登録上の事務所はバーチャルオフィスを格安でレンタルすることも可能。そうなると、会社設立、運営はマニラ在住の当方が担当して、執務はフィリピンのどこでも好きなところでという芸当が可能だ。


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