パスコの相棒のジェーンが卒業した国立タバコ・ハイスクールは、フィリピンでトップ3を競う屈指の名門ハイスクールだ。他には、フィリピン国立大学 (UP、University of the Philippines)付属ハイスクール、国立リザール・ハイスクールなどがあげられる。ご承知のとおり、フィリピンの学校制度は6-4-4ないし 6-4-5制で、日本の中学と高校をあわせたのがハイスクールで4年制と日本に比べて2年短い。また、大学は文系が4年、理科系が5年で、トータルの教育期間は日本より1~2年短い。その代わり、法学部や医学部は9年と、返って日本より長い。
タバコ・ハイスクールにはタバコ市やアルバイ県に限らずビコール地方全体から生徒が集まってくる。卒業すると多くはマニラのUPやレガスピのBU(ビコール大学)に進むそうで、地元に残っている人は少ない。卒業生には牧師、弁護士、医師、エンジニアー、その他多様な道に進んでいるが、未だに職に就けない人も少なからずいるそうだ。また、海外で働く人たち(OFW、Oversea Filipino Worker)もたくさんいる。
ちなみにタバコ・ハイスクールの全生徒数は8000 人に達し、フィリピン有数のマンモス・ハイスクールだ。ちなみに先生の数は300人程度と、小さな私立ハイスクールの生徒数にも匹敵する。なお、1学年は 38クラスあり、成績の良い順から第1クラス、第2クラスと順に振り分けられ、第1クラスともなると秀才の集団だ。ちなみにジェーンは第4クラスだったそうだ(当時は1学年は24クラス)。写真はタバコ・ハイスクールの校舎とユニフォームを着たジェーンの姪のバネサ。外からはわかりにくいが、学校のキャンパスは大学並みに広大だ。
今年は卒業から15年目で、10年、15年、25年そして50年の節目に行われる学年全体の同窓会の年だ。ジェーンはこの農場を会場として提供することを提案し、約50名の卒業生が集合した。100人以上来るのではないかと予測されたが、意外と低調だった。そのため前日から用意した100人分の料理が半分ぐらい残ってしまうのではないかと心配された。
料理の準備は前日の朝から、夜中まで、ジェーンの家族全員、メイドとその家族、パスコのマッサージ嬢のタンとデバインなどなど、総勢15人くらいでとりかかった。農場で飼っている2頭の子豚を犠牲にして、料理の主要な材料とした。アドボン・バブイ、上海ルンピア、クリスピー・パタそしてレチョンなどの豚肉料理、唯一の野菜料理のチョップソイ、それに定番のスパゲッティやサンドイッチ、さらにゼリーやブコ・パンダン、グラマンなどのデザートと、8人掛けのテーブルに乗り切れないほどの料理の量だった。飲み物はコーラやスプライト、1.5 リッター入りが40本も用意された。お皿は竹で編んだざるにバナナの葉を敷いた伝統的なものを100枚ほど用意した。
半分くらい残りそうな料理を1週間くらいかけて食べ続けなければならないのかと心配したが、終わって見たらほとんど残っていなかった。手伝いに来た人たちが余った料理を持って行ってしまったのだ。彼らに聞かれて、ジェーンが「どうぞ持っていってください」といったら、瞬く間になくなってしまったそうだ。しかし今夜は、彼らの家族が年に一度か2度のの豪華な料理にありつけたわけだから、良いことをして満足した気分になった。
クリスマス直後なので、クリスマス・ツリーは欠かせないパーティの飾り付けだ。農場では、12月に入ると、年明けまでクリスマス・ツリーを飾るのが恒例だが、この日はツリーの下に同窓会の参加者へのお土産の果物のパッケージが並べられた。
料理以外の準備として、庭の前の私道に設けたテントやテーブルのほかに、同窓会には邪魔になるジェーンの姪や甥、それから犬の存在が問題だった。親たちが料理の手伝いをしている間、子供たちに嬌声を上げながらその辺を走り回られたら、同窓会が台無しになってしまう。そのため、ゲストルームの一室に閉じ込めて、そこから出ることを禁止した。部屋にはパソコンやDVDがおいてあるので退屈はしないはずだ。
一方、4匹の犬だが、人懐っこくてやさしいといえ、大きな犬だから、参加者の中には怖がる人もいるだろう。そのため、入り口のガード・ハウスに閉じ込めておくことにした。すると、気配を感じたのか、オスと違って警戒心の強いメスは家の周りを離れようとしない。そのため、200mほどの距離を私が犬を抱きかかえて運ぶ羽目になってしまった。 10kgは優にあるだろうが、一匹目で懲りたので、2匹目はとライシクルで運んだ。普段放し飼いにされているのに、この日は、一日中狭いところに閉じ込められて少々可愛そうだった。駐車場については、全部で10台以上の車が止まれるスペースがあるので全く問題ない。
15年目の同窓会にしてちょっとお年を召した方々いた。当時の担任の先生方と聞いて、納得。また、ジェーンの彼氏は国家警察大学院に行く前に、タバコ・ハイスクールで2年ほど教鞭をとっていたことがある。そのため、今日はタバコ・ハイスクールの元教師ということで参加したとのことだ。彼はそのとき、まだハイスクールの生徒だったジェーンを見初めたそうだ。それから10年以上たって再会し、現在の仲になったという訳だが、まさに赤い糸で結ばれていたというやつだ。(左から2番目の黒い服がジェーン)
記念すべき同窓会のはじめに、やはり同窓生の牧師が、まずミサを執り行った。これが意外に長くて、昼近くで腹が減っていた私にはこたえた。しかし、皆がまじめな顔をして長々と続く牧師の話に耳を傾けていたのには、いたく感心した。
食事になるとやはり活気と笑い声が家中に充満する。素人の手料理とは思えない出来に皆、満足の様子。しかし、フィリピン料理の典型であるアドボン・バブイ (豚の醤油煮)にはほとんど誰も手を出さない。脂肪部分が70%位で、おまけに皮付きで健康志向の人には手が出ないのだろう。フィリピン人はこれが大好物と聞いていたが、フィリピンの田舎でも健康志向が普及してきているようだ(あるいは太目の人が多かったせいかもしれない)。しかし、後でお手伝いの人たちがほとんどの料理をお土産に持って行ったのだが、このアドボン・バブイだけが残されていたのにはどうにも解せない。
食事は家中の椅子が使われて、あえて外に用意したテーブルを使う人はいなかったが、家の中やテラスには50人近い人が座れるほどの椅子やテーブルがあったことになる。この日は残念ながら曇り空で、噴火間近いマヨン火山の噴煙を眺めながらの食事というわけには行かなかったが、逆に暑くなくて1日中心地よくすごすことができた。
食事の後は先生のスピーチ。倫理科目の主任教師だそうで、スピーチはお手の物だ。その後は、くじ引きで参加者にお土産が配られ、もらった人はそれぞれショート・スピーチをやらされていた。私はこの後、昼に飲んだサンミゲル・ビール2本のおかげで、部屋でぐっすりと昼寝としゃれ込んだ。
昼寝から覚めてみると、外のテーブルで20人ほどの有志が残って酒盛りを始めていた。なんとこれが暗くなるまで続いたのだ。しかし、せっかく用意したカラオケをやる人は意外とおらず、談笑に花が咲いていた。久しぶりに会ったので、きっと話すことが山ほどあったのだろう。次に会うのは、またさらに10年後のことだから話は尽きない。ちなみにPASCOの法律顧問のマリソールも同窓生だ。となりは相思相愛のハズバンド。
カラオケは、同窓会が終わって開放された子供たちの遊びの道具となり、お茶目なタンとデバインはそれにあわせてダンスを披露してくれた。明日はいよいよおおみそかだが、朝から皆で教会に行くとのこと。年末はどこの国でも忙しいようだ。