久しぶりにモール・オブ・エイシアを訪問した。世界で3番目、中国を除くと世界一の規模を誇るというSMデパートチェーンの旗艦モールはクリスマスを控え人で溢れかえっていた。ただし、モールの外は暑さのせいか人影もまばらだった。
この巨大なモールは駐車場ビルを除きすべて2階建てで、天井の一部がガラス張りとなっており、自然光が取り入れられているというモダンなつくりとなっている。この設計がビルの内部に閉じ込められているという感覚から人々を開放しているのだろう。
モール中央の広場には巨大なクリスマスツリーが飾られ、いやが上にもクリスマス気分を盛り上げている。時間になるとその脇でゲストシンガーによるショーが開催される。
モールの内部は冷房の利いた街そのもので、買い物客というよりも街を散策する人々で一杯だ。デパート、スーパーマーケット、無数の店舗とレストラン、映画館そしてスケートリンクまでがモールの中に納まって人々を呼び込んでいる。
モールは3つに別れており、その間には中庭があり、スナックを売る店が並んでいる。それがまた気分転換ともなり、一日中いても退屈しないようになっている。
中庭の通路には観覧車が買い物客を乗せてゆっくりと走っている。またモールの内部にもゴルフ・カートが走っているほど、ゆったりとした空間になっている。買い物袋を提げた人は案外と少なく、買い物というより冷房の利いた街を楽しんでいるといった風情だ。
デパートのおもちゃ売り場も人で一杯だが、売り子が客よりも多いような気もする。クリスマスが近づくときっとプレゼントを買い求める人で身動きができなくなるのだろう。それでもスーパーのレジは大量の買い物をする人であふれている。この巨大なスーパーは大量の物資とそれを買い求める人であふれ、世界不況どこ吹く風だ。フィリピンにこれほどの購買力があるのかと感心させられる。これはきっと世界で活躍するOFW(Overseas Filipino Workers、海外出稼ぎ労働者)の送金(フィリピンの国家予算を凌駕し年間1兆円をはるかに超えるという)により、フィリピン経済の実態に比べて現金が大量に存在するためだろう。
確かに日本に比べて物価が5分の1というから、海外で稼いでフィリピンで使えば、購買力は5倍となり、5兆円相当という大変な金額だ。日本における昨今の経済状況に対する悲壮感に比べて、フィリピンでは人々はおおらかに金を使えるわけだ。 しかし世界不況が続くと解雇されたOFWのUターンラッシュが始まり、フィリピンも大打撃を受けることは間違いない。そうなるとモール・オブ・エイシアも閑古鳥が鳴くことになるのではないかと危惧される。
それでも米の値段が1kg40ペソ程度になっているのは貧しい人々にとっては打撃だ。従来米の値段は日本の10分の1程度で、物価全体の5分の1のさらにその半分だった。給与水準は10分の1程度だから基本的な生活はつりあっていた。しかし、米の値段が倍になってしまうとなるとそのバランスがくずれ、 OFWなどに頼れない人々の生活はそれだけきびしくなるのだ。
食品売り場にはこれでもかというくらい南国の果物、さらに中国などから輸入したリンゴなどの果物が所狭しとばかりに並んでいる。しかし、乾季と雨季の2シーズンのせいか、ほとんど1年中同じ果物が並んでいるような気もする。
圧巻は果物の王様といわれるドリアンだ。フィリピンではミンダナオ地方で栽培されるが、この強烈なにおいのせいか、フィリピン人は他の東南アジアの人々に比べて意外とドリアンを好まない。
豚肉などの値段は70ペソ/500gと表示され、一見従来と値段はあまり変わらないようだが、これはトリックで、従来は70ペソ/kgだったのだ。数年前に比べて、肉類も倍近くになっている。一方、キッコーマン醤油は調味料の定番の地位を確立している。値段はローカルの醤油に比べて5倍近いが、しっかりと陳列棚に並べられているということは、かなり売れるのだろう。私には手が出ないが、プレミアムとか減塩と称して普通のキッコーマン醤油の倍くらいの値段がするものも売っている。
惣菜の中でも色々な豆腐が売っているのもうれしい。わざわざ日本食材店に行って高い食材を買わなくても大概の日本料理の材料をスーパーでそろえることができる。パン類もとても種類が豊富だ。