昨年、2024年3月に念願のPNP(フィリピン国家警察)のジェネラルに昇進して、マラカニヤン宮殿でマルコス大統領から直々に祝福を受けたものが、アバロス内務大臣の事務所を経て、首都圏南警察(SPD, Southern Police District) の長官に就任したのが9月、そして3か月後の12月23日にはサイバー犯罪を取り締まるACG(Anti-Cybercrime Group)のトップと目まぐるしく地位を変遷している。それに伴って、一つ星ジェネラル、二つ星ジェネラルと昇進して、残すは星三つのPNP 副長官、そして四つ星のPNP長官のみとなった。この11月15日には56歳の誕生日、停年を迎える彼にとっては、いわば、役員になって、常務、専務と出世して、後は副社長と社長の座を残すのみとなったのだ。 目まぐるしいほどの昇進と地位の変遷は、停年という時間制限があるためなのだろう。カーネルからジェネラル、さらに星の数により定年後の天下り先での待遇に大きな差があると思う。できるだけ多くの人に高い地位で停年を迎えさせてやりたいという大統領の親心だ。ドテルテ大統領の時代にPNP長官だったデラロサは麻薬取り締まりでその名を世間に知らしめ、今や上院議員で、国家の方向性を定める重要な地位にある。私が勤めていたころのPRAの長官、アグリパイはやはりPNP長官だった。 14歳のキアンを筆頭に8歳のクッキー、5歳のココと、幼子を抱えるパパ・ジェネラルにはまだまだ働いてもらわなければならない。3人の子供を私立に通わせている彼にとって、3人が大学を卒業するまでの後、16年、これからが金がかかる本番だ。退職時点での地位は、後々の収入を左右する重要な要素なのだ。 このことは、本人よりも妻(ママ・ジェーン)の重大関心事に違いない。したがって、彼女は、ジェネラルの妻の会のような組織に所属して、フィリピン各地で開催される福祉行事に参加するために週、3日位は家を空けて、ジェネラルのサポートに邁進している。したがって3人を面倒見るのはもっぱら、ヤヤと私だ。 パパ・ジェネラルは、平日は夜遅く帰宅して、土日を休むこともあまりないので、ほとんど出かけることもない私が、まさにジージとして、子供たちを相手にしている。特にキアンは、相変わらず私にべったりで、私にとっても唯一の友達でもある。ヤンチャなココも最近は頭角をあらわせてきている。 国家警察幹部の天下り先はどこなのだろう。私の知っている限りは、セキュリティー・エージェントの経営、PRAの長官、インターナショナル・スクールの警備責任者、カジノ・リゾート・ホテルの警備責任者などだ。なかでも頻繁に招待されて宿泊しているいるカジノ・リゾート・ホテルあたりが有望なのではないか。そういうところであれば、かなりの報酬が期待できそうだ。 ひょっとして、最高位のPNP長官にでもなったとしたら、国家を代表する要人の一人となり、大統領を支える重要な地位だ。子供たちにとっても生涯の名誉にもなるだろう。特に妻であるママ・ジェーンは舞い上がってしまって何処かへ飛んで行ってしまうのではなかろうか。私にとってみれば、20年ほど前に会ったときと同じ、やさしいおっさんのままであり、ただ、就任式等に参加するたびに白バイに先導された車で、赤信号もお構いなして突っ走るのがいかにも心地よいだけだ。