PRAの正念場そして退職者の試練 2021年3月6日


2月末、マニラ首都圏は現状の封鎖措置(GCQ)が3月末まで延長されることが発令された。誠に残念ではあるもののワクチン接種も開始されていない状況ではやむなしとの声が多数だ。これで、めでたく(?)封鎖措置も一周年となり、高齢者と子供達にとっての外出禁止措置による自宅軟禁状態が2年目を迎えることになった。

ママ・ジェーンの弟ボボイがサウジに出稼ぎに出発するので、久しぶりにNAIAターミナル1へ見送りpに出かけて行った。空港ターミナルの外には普段とあまり変らない人であふれていた。

一方、2月4日に発令され政府通達(IATF No. 98)による「外国人の入国緩和措置」については、いつもながらとは言え不明瞭な記述で大いなる混乱を呼び起こし、その後、PRAは、その対応に追われることになる。以下、通達の原文そのままを掲載する。

B. 1. Beginning February 16, 2021, the following shall be included/added to the list of foreign nationals allowed to enter the Philippines: a. Those with visas issued as of March 20, 2020, and still valid and existing at the time of entry, and who were not permitted to enter the country under previous IATF resolutions: and b. Holders of valid and existing Special Resident and Retirees Visa (SRRV) and Section 9(A) visas, provided they present an entry exemption document to the Bureau of Immigration upon arrival.

This image has an empty alt attribute; its file name is DSCN2553.jpg
PRA Face Bookに掲載されているEED(Entry Exemption Document)取得の案内。いかにも申請さえすれば発行してもらえるような感じだが、果たしてどうなのだろうか。

ここで肝心なことは、前書きが、下記の外国人を「含むないし追加」となっていて、如何にも今まで除外されていたSRRVが追加されたという言い回しになっていることだ。a. では、すべて有効なビザとなっているものの、b. では、SRRV と 9(A)ビザ(観光ビザ)については、条件としてentry exemption document(EED、入国免除書類)の提示しなければならないと唄われているが、これが何のことであるか、どこから入手できるのか何も書かれていない。そのため、せっかちなメディアは、この条件を無視/軽視して、「SRRVでも入国可能」とぶち上げ、多くの退職者を喜ばせた。

その後、入管から発効された2月12日付けの通達の C. 1. においては、” entry exemption document(DFA Endorsement)と明示され、DFA(外務省)から入手となっているのだが、どうやって入手したらよいかまでは書いていない。そして2月15日、PRA通達(No. 01-02-2021)で、SRRV保有者はPRAに申し込んで、それをDOT(観光省)経由でDFA(外務省)に提出することにより取得できると明示された。

This image has an empty alt attribute; its file name is DSCN2552-1.jpg
EEDに引き続き、従来、出入国については、何の制約もなかったSRRVにも出国/再入国許可相当の書類の取得が義務付けられた。

ここまで来て、政府通達(IATF No. 98)のSRRVに関する通達の真意がわかった。要は、SRRVの取り扱いについては、なんら緩和措置の対象になっておらず、従来の措置の延長に過ぎないということだ。因みに、2020年10月時点でSRRV保有者がやむをえない事情がある場合、2020年9月24日発行のPRA通達により、PRA/DOT(観光省)経由でDFAから入国許可証が取得できることになっていた。

すなわち、政府通達(IATF No. 98)による「外国人の入国緩和措置」と称して、SRRVを取り上げたのは、実際には従来の措置を踏襲しただけであり、言葉を操って如何にも緩和されたように見せかけただけに過ぎないとも解釈できるのだ。

しかし、PRA/DOT/DFAの動き次第では実質的には緩和措置にも繋がることも可能なので、運用に期待したいところだ。今まで、クオータビザや配偶者ビザ(13a)などの移民ビザ、SIRV、9d、9g、Pezaビザなどのビジネス関係のビザが規制対象からはずされてきたにも関わらず、最後まで規制緩和の恩恵を預かることができず、不名誉にも観光ビザ9(A)と同等の扱いを受けてきたSRRVなのだが、その元締めのPRAとしては、汚名挽回、起死回生のチャンスでもあるのだ。

中央がサウジに出稼ぎに出発するボボイ、帰国は2年後でその間の休暇はないそうだ。私は、高齢者の外出禁止措置の関係で車内に潜んでいた。

昨年の10月、SRRV保有の日本人退職者の依頼で、DFAからの入国許可証を取得するお手伝いをした。入国理由としては、婚約者が出産してその面倒をみるという、フィリピン人の子供の親ということで、公的に認められたいる理由だったのだが、未だにDFAの許可がおりていない。そのため、今回も、申請しても果たして許可が出るのか、私としては甚だ懐疑的で、多数の方から、DFA許可の取得手続きを代行してほしいとの依頼があるのだが、取得できるかどうかわからないものを引き受けることは出来ないとお断りしている。実際問題私の出来ることは単にレター、一枚をPRAに発行するだけで、あとは神に祈るだけなので、退職者自身がやったところでなんらかわらないのだ。PRAが発行するのであれば、手の打ちようもあるが、DOT経由でDFAともなると、遠すぎていくら私がわめいても声が届かない。

昨年10月にEEDを申請された数名の方から、その後、PRAから何も音沙汰がないので調べてもらえないかという依頼があったが、これもE-メールをPRAに送るだけで、特別なことはできない。ご自身でやってみるようアドバイスすると、PRAからは「依頼が殺到しており、対処不能につき、待って欲しい」というお決まりの返事しかないとのこと。確かに申し込みが殺到しているだろうから、当面、 無理もない気がしないでもないが。

2年の赴任となれば、別れの儀式も大変だが、ボボイの家族は、ビコールの田舎で時節柄、駆けつけることもできない。

そしてEEDの運用開始から2週間たった昨日、入管からPress Releaseが発行された。「17名の中国人が9(A)ビザで入国を試みて、DFA発行のEEDを提示したものの、口頭での入国理由とEEDの内容とが符合せず、入国は許可されなかった。ビザとEEDの保有は絶対的な入国許可ではなく、入管の審査が別途あるということは2月12日付けの通達にも明記されている。」といった内容だ。なんともEED制度の結果が出るのが早く、この2週間のうちにそこまで事態が進展していることに驚いた。

ちなみに中国人は一般的に英語が堪能とはいえず、EEDの内容を熟知していないばかりか、入国理由もEEDの申請を行ったエージェントが適当にでっち上げたものなのだろう。しかし、SRRVを保有している善良な退職者のEEDがなしのつぶてなのに、入国理由さえ、全うに答えられない中国人のEEDがいとも簡単に発行されることなんてありうるのだろうか。金男君の呟き「お金のにおいがぷんぷんするぞ、金男スコープで覗いてみよう」なんて声が聞こえて来そうだ。DFAも中国人のEEDの発行で忙しくて、PRAからの申請に目をやる時間がないのだろう。これではPRAも退職者に全うな回答をすることなど出来ないはずだ。

後席にぎゅうぎゅう詰めに乗り込んだ3K兄弟たちも3週間ぶりの外出で興奮気味だ。

そういえば、ここのところ、上記とは直接関係のないPRA通達が矢継ぎ早に発行されている。1月26日、3年有効IDの発行停止、2月17日、SRRV発行中断の延長(2020年10月23日以来停止されていた)、2月27日、通達No.02-02-2021、出国に当たってのTravel Pass(出国許可)の取得義務など、SRRVのメリットが次々とそぎ落とされているようだ。

これらの措置は、今回のEEDの不正入手と根っこを同じくするもので、数多くの中国人がSRRVを隠れ蓑にしてオンラインカジノなどに不法に就労しているためで、それらを厳しく管理しようとしているのだろう。SRRV発行中断ならびに規則の見直しもそのためで、世界でもまれに見るすぐれものの退職ビザと称されて来たSRRVに陰を落とすものではないかと危惧される。チャイナパワーが本来のSRRVのターゲットである世界各国の退職者に多大なる迷惑をかけており、PRAとしても、中国人対応がSRRVの命運を決する、まさに正念場を迎えていると云えるだろう。一昨年のAEP(外国人就労許可証)の発行締め付けといい、これは、コロナ禍ではなくて、まさにチャイニーズ・シンドロームとも呼ぶべきもので、PRAとともに20年近く生きてきた私にとってもまさに正念場なのだ。

Leave a comment

Your email address will not be published. Required fields are marked *