昨年の11月以来、来月から、来月からとアナウンスされ続けてきたPRAの新ルールが、いよいよ5月5日(木)から適用された。なお、すでにビザをお持ちの方、あるいは、5月4日以前に定期預金開設に必要なドルを送金した方で旧ルールを選択した方は、今回のルール改正の影響は受けない。
新ルールは先に報告したものとは大分内容が変更されており、主に3つのプログラムが用意され選択できるようになっている。
1.SRRVクラッシック(既存のプログラムの改訂版)
2.SRRVスマイル(新規プログラム)
3.SRRVヒューマン・タッチ(治療あるいは療養のためのプログラム)
1.SRRVクラシック 35歳以上、50歳未満は5万ドルの定期預金をPRA指定の銀行に預けること、50歳以上は2万ドル、年金申請は1万ドルは従来と同様、ただし、年間360ドルの会費を前払いでPRAに支払う(3人以上の同伴者には一人100ドル追加)。ドル定期預金はコンドミニアムの購入や戸建住宅の長期リースのに転用することはできるが、それらの物件は入居可能な状態であること(プレセールのコンドミニアムや住宅の建設には使えない)。また、投資総額は5万ドル以上であること。この場合、あらたにビジトリアルフィーは発生しない。なお、ビザ申請に必要な書類は従来と同様。
2.SRRVスマイル 35歳以上一律、2万ドル。この2万ドルは投資に転用することはできず、将来必要となるであろう医療費や埋葬費用などに使用することを前提とする。年会費等については(1)と同様。
3.SRRVヒューマン・タッチ 35歳以上、一律1万ドル。その他の条件は(2)と同様。ただし、年金は月々1500ドル以上必要で、年金証書ならびにフィリピンで年金を受け取っている証拠、健康保険証書さらに療養あるいは介護が必要であるという診断書等を提出すること。同伴者は配偶者等1名のみ。
4.既存の退職ビザ保有者 既存の退職ビザ保有者は(2)のSRRVスマイルに乗り換えることができる。その場合、50歳未満で5万ドルあるいは7万5千ドルでビザを取った人は360ドルの年会費を支払うことにより、差額3万ドルあるいは5万5千ドルを引き出すことができる。さらに50 歳以上で5万ドルでビザを取得し、現在の2万ドルとの差額3万ドルを引き出した退職者(ハーモニゼーション)は、従来450ドルを支払っていたものが、 360ドルに減額される。あるいは、5万ドルをすべて投資に転用している人は2万ドルを再預金することにより、500ドルのビジトリアル・フィーが360 ドルに減額される。もちろん現状維持を選択することも可能だ。
(5月4日新ルール適用の前日に行われた新ルールの説明会の様子と自ら説明するGM)
ルールの細則
①SRRVクラッシックとSRRVスマイルは申請時に選択しなければならず、中途で乗り換えることはできない。
②3年IDは従来どおり継続されるが、その場合は3年分の会費(360ドルx3=1080ドル)を支払わなければならない)。
③同伴した子供が35歳に到達したら、新規にPrincipal(申請者本人)としてSRRVを取得しなければならない。
④5月4日以前に送金を実施したものは旧ルールを選択することができる。その場合、新規ルールからは適用を除外される。
⑤ 新ルールで申請した場合、すべての定期預金はDevelopment Bnak of the Philippines(DBP)に移動されなければならない。現状では従来の認定銀行で定期預金を開設することができるが、PRAに定期預金を移動する同意書(Authrization Letter)を発行すること。
⑥PRAとDBPの合意ができたら、すべての送金と定期預金の開設はDBPでおこなわれなければならない(時期未定)。
解説
今回の改訂の重要点は、基本的に定期預金は投資に転用できず、ビザをキャンセルしない限り引き出す事はできない。そして、年会費の360ドルの支払いだ。年会費は年金暮らしをする退職者には少々負担になる。また、定期預金はィリピンで暮らす限り、死ぬまでおろせないといういうことで、このお金は入院治療費や埋葬費などの原資になるということは納得に行く話しだ。この程度のお金を残しておいてもらわないと、残された周囲の者が迷惑する。
現状においては退職者の死後、これを引き出すためには相続のための気が遠くなるような手続きが必要となり、そのための費用で2万ドルの半分くらいは吹っ飛んでしまう。その点を今回この改定ルールの原案を作成したPRAの幹部に話をしたところ、現在法改定の手続きを開始しており、退職者の相続税の免除や手続きの簡素化(たとえばPRAの許可証だけで相続人が銀行から定期預金を引き出せるなど)を目指しているとのことだった。
360ドルの会費を支払わなければならないものの、 (1)のSRRV クラシックが残ったのは歓迎できる。投資額が最低5万ドルであることは新たな制限事項ではあるが、実質的に大きな影響は無いだろう。年会費を支払うことにより、ビジトリアル・フィーが無くなった事は少し有利になっている。したがって、投資を考えている人は(1)のSRRVクラシックで申請しなければならない。
(2)のSRRVスマイルは50歳未満の人には朗報だ。5万ドルとなるとかなりハードルが高いが、2万ドルなら何とかなるという人は多いだろう。
(3)のSRRVヒューマン・タッチについては、ご両親を退職者の同伴者として同伴できる、あるいは定期預金が1500ドルになる、などとの情報が流されていただけに、かなり後退したルールとなっていることは否めない。おまけに、月々1500ドルの年金や健康保険証が必要であるなど、条件が厳しく、単なる(1)の年金スキームで申請したほうが有利で簡単だ。ちなみに(2)の年金スキームに必要な年金額は単身で800ドル、夫婦で1000ドルだ。ただし、はじめから治療や療養が必要な状況で、 (1)の年金スキームが選択することが許されるのかどうかが鍵だ。
既存の退職ビザ保有者で、コンドミニアム、長期リースあるいは会社等に投資しているが、その維持が困難になっている人に対しての救済策でもあるが、PRAに提出が義務付けられている各種の書類をそろえることができない退職者は、新たに2万ドルの再預金をPRAに要求される恐れがあるので覚悟しておいたほうがよい。